功(メリット):市場の活性化と情報公開
1. 情報の公開と普及
埋もれていた史料の発見
旧家や個人宅などに長らく眠っていた古文書が、ヤフオクに出品されることで初めて世に出てくる機会が増えました。これにより、これまで知られていなかった流派の存在や、特定の人物の事績が判明することがあります。
損失の回避
専門的知識を持たない一般人でも容易にアクセスできるヤフオクの環境は、古文書に経済的な価値があるという認知を広めました。その結果、貴重な史料が安易に処分されるリスクを大幅に減らすことに貢献しています。
研究者へのアクセス
一部の研究機関や大学にしか知られていなかった情報が、広く歴史研究家や武術愛好家の目に触れるようになり、研究の裾野が広がります。
2. 適正価格の形成と利便性
適正価格の形成
オークションは競争入札を通じて、価格を決定するプロセスです。これにより、販売業者が提示する価格とは異なり、市場における需要と供給に基づいた、より公正な価値に収束する傾向があります。
利便性の向上
地理的な制約なく、全国どこからでも容易に古文書を売買できるため、取引のハードルが大幅に下がりました。
高値の夢
希少性の高い古文書は、特定の古書店や専門業者へ買取に持ち込むよりも、高値で落札される可能性があります。これは出品者にとって大きなメリットです。
罪(デメリット):史料の散逸と真贋のリスク
1. 史料の散逸と研究の困難化
まとまりの破壊
流派の伝書類一式、あるいは特定の武術家が残した一連の史料が、ヤフオクでバラバラに出品・落札され、個々のコレクターの元に散逸してしまうことがあります。
これにより、古文書が持つ全体像や文脈が失われ、後世の研究者が体系的に研究することが非常に困難になります。
公的機関による保存の困難
ヤフオクでは、公立の博物館や大学などの機関が迅速な入札競争に参加しづらい場合や、予算の制約から高騰した価格に対応できない場合があり、公共財としての保存が難しくなることがあります。
2. 真贋(しんがん)と倫理の問題
偽物(贋作)の流通
ヤフオクでは、出品者が必ずしも専門家とは限らず、真贋の判断は基本的に落札者に委ねられます。そのため、知識の浅い初心者が、後世の写しや意図的な贋作を、真作と誤認して高額で購入してしまうリスクは常に存在します。
高騰化による弊害
希少性や話題性から価格が高騰し、本来、研究・保存を目的とする研究者や機関の手の届かない価格帯になってしまうことがあります。
ヤフオクは、古文書に「経済的な価値」と「情報の流通」をもたらした点で大きな功績がありますが、同時に、「歴史史料としての完全性(体系性)の維持」や「公共性」という観点からは、大きな負の側面も持っています。
その最たる懸念は、体系的な一連の史料が散逸してしまうことです。出品者には、史料の価値を正しく理解し、安易に個別に分割せず、歴史的資料としての保全を意識した行動が望まれます。
