今日に現存する数々の古文書は、地震、洪水、火事、戦火、あるいは人為的な廃棄といった、幾百年にもわたるさまざまな災難を潜り抜けてきた貴重な史料です。
そのすべてが歴史的・文化的に極めて貴重というわけではありませんが、その真の価値を判断することは専門家でなければ容易ではありません。軽率な判断で価値ある史料を失うという愚行を犯さないよう、強く願います。
特に保存状態(コンディション)の良くない古文書は、「こんなものに価値はないだろう」という素人判断で処分されがちです。しかし、古文書の基本的な価値は、記された文字情報にあります。たとえ千切れた紙片であったとしても、そこから何かしらの情報を読み取れる限り、その価値は失われません。
この点で、古文書は美術品などとは価値基準が異なります。染みだらけ、虫食いだらけであったとしても、コンディションの悪さがその史料的価値に全く影響しないケースも多々あります。
もしお手元に、ボロボロに朽ちかけた古文書があったとしても、軽々しく処分するのではなく、一旦保存しておくのが賢明な選択です。また、そこまで朽ちていなくとも、破れや虫食いが見られる場合も悲観する必要はありません。それ以上傷まないよう丁寧に扱い、適切な方法で保存されることを強くお勧めします。
因陽隠士記す
2025.12.5
