古文書を読むために
判読練習問題-4
判読練習問題-4誤読例と雑感

御清安
「清」字は版にて潰れているため一見して「佳」と見えます。版では判定できないため、保留とします。

御座候哉
翻刻にはこのように記されていますが、明らかに「御座」ではありません。私は「被成居候哉」と見ました。しかし、「被成」は兎も角、そこに「居」と続く点に確信を持てません。

賤尊
これもまた、「賤」ではなく「殘」だと思います。則ち預けていた「殘樽」のことです。自分の所有する酒だからといって、「賤」字を使って卑下するとは考えられません。そして、何より字形が「殘」です。

急に
「に」と「〃」とは、非常に紛らわしいものです。紛らわしいというより、屡々同一の字形を為すものを見ます。私はこれを「急〃」と判定します。次に挙げるものも同様にて、さらに次に挙げる「京坂に色々」は、山陽書翰に見られる「に」と「〃」との例です。文脈を見て判断するほかありません。

急に

京坂に色々

軟脚醅
果して山陽書翰以外でこの字を目にすることがあるだろうか、と思う珍しい言葉です。

渇遅之至
この「遅」字は頭を悩ませます。仮に「渇遅」とすれば、それは一体どういう意味なのかと聞かれゝば、解らずと応えるほかありません。よって私は「渇達」としました。

ピントシタル
「ヒント」、これは脱帽です。この版物という条件のもと、この字を読める人は高手と言って良いでしょう。

風顫
「顫」字、なるほど言われてみるとそうです。これは漢詩に馴れているか、もしくは実物でなければ、判定の難しい文字だと思います。

半時程
「程」字、迂闊にも虚画と実画とを見誤りました。

傍萬檣
「傍」字、初見はそう判定しましたが、見直したとき文義に合わぬかもしれないと「働」字に更えてしまい失敗。「働」字にこの形はありません。

満店煮
こゝは大いに悩まされたところです。はじめに「満ゝ居者」と見てしまい、どうも文字数がおかしい、おかしいけれども何が違うのか分らないと、右往左往しました。「煮」字をこう書くとは意外です。

茶馨
先の「満店煮」に次いで「茶馨」ときました。これを翻刻に見たとき、私は深く溜息をついたものです。

相雜行
「雜」字は当然読み筋なのですが、私は明後日の方向へ向い「携」字として、失着。

惡し
「惡」字にこの字形があったとは知らず、「密」でもない「戀」なのかと見当違いも甚しいことを考えておりました。

奉竢候
こゝは等閑にして「竢」字に気付かず、粗忽なことです。漢文では頻出する字ですが、俗文にこの「竢」字は滅多に用いられません。
