武術史料拾遺

筆蹟畫像

靈和殿前之柳.令人生愛.孔明廟前之柏.令人起敬.<『書概』劉熙載>

「靈和殿の前の柳は人をして愛を生ぜしめ、孔明廟の前の柏は人をして敬を起さしむ」
運籌眞人 平山潛書 怒鼃

Hánfēizi ( 韓非子 ) words. By 平山潛 (1759 - 1829). Edo period, dated 18th - 19th century. Hanging scroll. Ink on paper. Private collection.

杏村 吉留涉書 嵇中散五難

Jī zhōng sàn ( 嵇中散 ) words. By 吉留涉 (1772 - 1834). Edo period, dated 文化 6 (1809). Hanging scroll. Ink on silk. Private collection.

翠樹 靑木重威書 一鶚

Hàn shū ( 漢書 ) words. By 靑木重威 (1786 - 1859). Edo period, dated 文化 12 (1815). Hanging scroll. Ink on paper. Private collection.

靜脩山人 桃井直正書 一心

Essay on Calligraphy. By 桃井直正 (1825 - 1885). Meiji Period, dated 明治 14 (1881). Hand scroll. Ink on paper. Private collection.

宮北定由書柬 答小川嶢智

Letter from 宮北定由 to 小川嶢智. dated the 3th day of the 10th month of 18th - 19th century. Buy 宮北定由. Edo period, 18th - 19th century. Folio. Ink on paper. Private collection.

道嶋調心書柬 與建部貞右衞門

Letter from 道嶋調心 to 建部貞右衞門. dated the 18th day of the 10th month of 19th century. Buy 道嶋調心 (1701 - 1782). Edo period, 19th century. Folio. Ink on paper. Private collection.

坦庵 江川英龍書柬 與齋藤善道

Letter from 齋藤善道 to 黑川左右次郞. dated the 22th day of the 5th month of 19th century Buy 齋藤善道 (1798 - 1871). Edo period, 1853. Hanging scroll. Ink on paper. Private collection.

篤信斎 齋藤善道手柬 答黑川左右次郞

Letter from 齋藤善道 to 黑川左右次郞. dated the 8th day of the 9th month of 嘉永 6 (1853). Buy 齋藤善道 (1798 - 1871). Edo period, 1853. Framed folio. Ink on paper. Private collection.

東湖 藤田彪書柬 與齋藤兩先生

Letter from 藤田彪 to 齋藤善道・龍善. dated the 2th day of the 9th month of 19th century. Buy 藤田彪 (1806 - 1855). Edo period, 19th century. Hand scroll. Ink on paper. Private collection.

中島不結翁像 山口春祺題

Portrait of 中島不結. By 石井. Edo period, 天保 11 (1840). Hanging scroll. Ink on paper. Private collection.

關口柔心先生眞像

Portrait of 關口柔心. Edo period, circa 18th - 19th century. Hanging scroll. Ink on paper. Private collection.

筧康堅像 筧政典贊

Portrait of 筧康堅. Edo period, 天保 8 (1837). Hanging scroll. Ink on silk. Private collection.

筧康篤像 戶塚茗溪畫・宮內文明書

Portrait of 筧康堅. By 戶塚茗溪. Edo period, 慶應 2 (1865). Hanging scroll. Ink on silk. Private collection.

運籌眞人 平山潛書 怒鼃

怒鼃.運籌眞人書す.

杏村 吉留涉書 嵇中散五難

嵇中散の五難.
養生に五難有り.名利去らさるをは一難と爲す.喜怒除かさるをは二難と爲す.聲色去らさるをは三難と爲す.滋味簿からさるをは四難と爲す.神蕩して精散するをは五難と爲す.五難心を去らすんは.壽を希ひ至言を口誦して.英華を咀嚼して.太陽に呼吸すると雖も.其の夭きを挽[とゝ]むること能はすして.且に病まんとす.五難能く絕ては.則ち信順日濟して.道德日祈生して神有り.壽を求めすして年を長らへたり.文化己巳六月の望書す.杏村吉留涉.

靜脩山人 桃井直正書 一心

一心.
惟るに心の德は至虛至靈.其の本體を原[たつ]ぬれは廣大高明.內衆理を具へ.外萬變に應す.之れを六合に放つ.之れを方寸に斂む.善く養ひて害無くんは天地と似たり.之れを伊何[いか]に養ふか.日々敬ふのみ.之れを伊何に敬ふか.惟[たゝ]誠の一字のみ.萬變是れ鑒するに.一以て之れを貫く.
明治十四年暮冬中浣書す.河南隱士靜脩山人桃直正.

翠樹 靑木重威書 一鶚

一鶚.翠樹書す.

道嶋調心書柬 與建部貞右衞門

建部貞右衞門樣.御報に及はす.道嶋調心.
手紙を以て啟上致し候.彌御替り成されす候半と珍重に存し奉り候.一昨日立ち寄り申し候處に.御目に懸れす殘念に御座候.明日松貞坊へ朦氣見廻ひに咄しに參るへき哉と存し候.一樽とうふ持參申すへしと.其段御噂申すへく立ち寄り申し候.程の次第明日御誘ひ申すへく候.
さて又松橋は私御遠方ゆへ見合せ申すへく候.一昨日は高橋迄にてさへ散々足痛み申し候.七左衞門よりも今朝紙面參り候へ共.私はやめ申し候.貴樣方は天氣能く候はゝ.御打ち立て成さるへく候.七左衞門方へも其趣申し遣し候.今日は竹部方へ招かれ罷り越し申し候.以上.
七月廿五日.

宮北定由書柬 答小川嶢智

[前缺]
心得等の御工夫と存し候事.さ樣御こゝろへ成さるへく候.他流も見及ひ申し候へ共.深ましき事も相見へ申さす候.恐るゝ流儀は之れ無く候.
ぬけ口はもたれ申さす候樣にかろく.刀の寸尺よりも長き刀を拔く心持專要に御坐候.
此儀は拙者工夫の一色にて.誰れへも咄し申さす候へとも申し進め候.御弟子中へも此段は御極密に成され.
御子息樣へ御傳受成さるへく候.御當地へ若し御出て成され候ても.御面談の義は少々遠慮にも御座候間.御用捨下さるへく候.
此外に貴意を得る品も頂くこと之れ無く候間.さ樣に思し召さるへく候.
先日遣はされ候一册.返進致し候.御受け取り成さるへく候.手前據無き義共之れ在り.貴報延引に及ひ候.恐惶謹言.
十月三日 宮北十郞左衞門定由(在判).
 廿八日着 十月廿九日返事遣[別筆].
小川金左衞門樣御報.
[後缺]

坦庵 江川英龍書柬 與齋藤善道

 猶々赤井へよろしく.且庄吉出府いたし候はゝ.藤藏傳言いたし候旨.申し成さるへく候.以上.

向暑の砌.彌御障り無く.珍重に存し候.然は平八郞一件に付.川路・羽倉へ申し述へられ候趣.委細に書き取り申し越され承知いたし候.
自分存意の趣.能々先方へ相達し大悅いたし候.右一條事濟み候間.川路文通幷に健三郞書取は早々當方へ差し越さるへく候.
一.吿志篇其外の書取は.今便相達し落手いたし候.扨好物の品惠せられ忝く存し候.早速賞味いたし候.
一.長刀かき[鈎]出來候間.差し進め申し候.
一.自分の評判宜しからさる儀は.早々申し越され候樣いたし度く候.
一.海防の儀.話し合ひ候人物は之れ無き哉.兼て御心付の人物御見當り候はゝ.早々御申し越し成さるへく候.早々以上.
五月廿二日.
(在割印)  (在割印)
彌九郞殿.太郞左衞門.

篤信斎 齋藤善道書柬 答黑川左右次郞

[前缺]
一.來春はアメリカ軍艦數艘渡來の趣.專ら風聞いたし.ロシヤ・イキリス各追々渡來の風聞にて.有志の輩一同心配罷り在り.此末如何相成るへく候哉.何れにも士氣作興の時節.兵士は釼・炮の二道精練いたし□□.隨て鎗・馬・水軍是又專務の入用に御座候處.兎角一寸逃け退り候て.尓今張込之れ無き輩も澤山にて.難敷き事と存し奉り候.
御地は近頃殊の外御盛んの趣.松本氏より承知仕り至極の御儀と存し奉り候.全く御世話御行き屆き罷り在り候段感拜奉り候.猶此□□御引き立て等御骨折りの處祈り奉り候.
當今の士風都下の樣子等.右四人の者共より御承知下さるへく候.時に御案否も相伺ふへき處.六月初異舩渡來より此方大取り込み.品川沖淺深測量分間いたし.去月中より本鄕新櫻馬場に大筒鑄造相掛り.日々奔走いたし.寸暇を得す意外の御無音.偏に御海恕成し下さるへく候.悴義も越前公より御賴みにて罷り越し留守にて.是又御無沙汰申し上け候.右四人の義は何分宜敷く希ひ奉り候.此段貴意を得へく此くの如く御座候.猶後便萬々申し上くへく候.艸々頓首
九月八日 齋藤彌九郞
黑川左右次郞樣
尙々.折角好時御厭ひ然すへく存し奉り候.憚り乍ら其御社中樣方へ.宜敷く希ひ奉り候.當方相應の御用等御座無く□□□□□.

東湖 藤田彪書柬 與齋藤兩先生

快晴御同慶に存し奉り候.先夜は失敬御恕し下さるへく候.扨は今二日年寄始め役人一同武藝見分之れ有り.御流義は過日殘り今日に相成り申し候.仍ては小先生今日より御出張にいたし度く年寄へ內談に及ひ候處同意に付.後刻迄に運阿みか勝太郞より御通達申し候半.然る處通達之れ有り候後にては間に合ひ申さす候間.御大儀乍ら御父子-御三方四方等もよろしく御座候-幷に達者の御內弟子一兩人も御召し連れ.只今よりがけ下稽古場へ御越しにいたし度く候.今日は野生事.外用ありて右見分へは參らす殘念に候へ共.御越しにさへ相成り候へはよろしく候.試合割等はきまり居り候半と存しられ候へは.相濟み候上にて年寄より好み別段に御藝術相見せ候半と存しられ候.いそぎ草々以上. 九月二日. 今日は諸生五つ時揃.役人共は五半揃に候間.彼是四つ時には始り申すへく候.御弁當御持參の方然るへく候.火急の事ゆへ御手當は間に合ひ申さす候.以上. 齋藤兩先生.彪.

關口柔心先生眞像

紀藩柔咄集によると、紀州關口流柔術の祖は關口彌六左衞門入道柔心とあり、柔心は專ら刀、槍の術に達してゐたが、なほ諸國修行して肥前國長崎に至つた處、支那の拳法に習ひ、捕手といふ術をする老人を見つけ出し、これに從つて學んだ。この捕手から柔のとり方を工夫して一流を開いた。諸侯爭つて柔心を招かうとしたが、遂に紀州南龍公に聘せられた。南龍公は自ら柔心に就いて日々稽古するのみならず、若殿にもすゝめて學ばせた。紀州家では吉宗公に至るまで此の柔術を學び、近侍小姓の面々にまでも稽古させたといふ。<『類聚傳記大日本史』>

中島不結翁像 山口春祺題

天保十三年六月山口春祺題.
誰知.其說衆人不造至理.或一道藝.雖異翁曰不決顏曰末由.

[畫像由來]
此肖像は先生.嘗て畫師茂安なる者をして.己か眞像を畫しめん爲.形をなして茂安に立向はれたり.
其の時茂安六度まて意匠を用ゐ.初て其の眞を畫き冩せりとかや.
予先生の高風を思慕し.其像を畫工石井某に寫させ.之れを尊信す.云爾.時に天保壬寅夏.櫻田直明再拜.

筧康堅像 筧政典贊

是れ筧康堅の眞影たり.康堅は吾か家の支族なり.俗稱谷之助.劍を善くするを以て國に仕ふ.人と爲り溫雅風流.殆と劍客の風に非す.其性酒飮を嗜むも必すしも多くせす.唯醉を以て期と爲すのみ.又笛を吹きて喜ひ.醉ふ每に輒ち吹く.以て喜ひ興を遣り頗る雅致有り.門下弟子數十百人.日々出入りして其業を受く.康堅常に酒を以て待接す.聊か以て自娛す.甞て東都に移居して北川氏を娶る.子無し.居ること三十年.命を奉して歸國す.北川氏性柔順.亦俱に從ひて歸す.善く康堅に事へ良偶たり.天保六年八月十九日康堅逝く.余因て之れに題し.以て其養子勇助に贈る.
天保八年仲秋.筧政典謹て記す.

筧康篤像 戶塚茗溪畫・宮內文明書

是れ我か 藩の士筧勇助君の肖像たり.君諱は康篤.本と中條氏を姓とす.勝次郞諱は澄友の弟なり.而して其の假子と爲るや出て筧氏を嗣く.義祖は衞守.諱は正冬.義父は谷之助.諱は康賢.世に直心影流劒術を以て名家なり.藩に仕へ敎師と爲り.上りて 公室に傳へ.下りて諸士に授く.君天保乙未十月を以て襲を承け.其の職小寄合に班[列]し.四口糧を給ふ.翌年春東武に游ひて宗師長沼萬鄕の門に入ること數年間.悉く其の祕奧を究む.每に其の師に代りて往きて列侯及ひ麾下の士に敎ゆ.前後賞賚算無し.庚子三月加へて俸金八圓を賜ふ.五月命有りて邸に留る.故簡世子今 松山侯の公子と爲るに及ひて皆君に命す.劒法を傳へて數[しはゝゝ]衣袴の 賜を拜す.而して 藩士に邸中に敎ゆ.初め君親しく兄澄友に從ひて無相流新拳法を受く.是に於て特に兼業を命せられ之れ就と爲す.金杉里邸に一敎場を別設せられ.往來演習して殆と寸暇無し.門人成りて立つ者は少なからす.諸藩士人亦多く從學す.其れ傳授の文書に於て頗る意を致す.壬寅九月進みて中寄合に班す.弘化丙午八月十四日病みて邸舍に歿す.享年三十有四.而して東武に在ること凡そ十有二年.本鄕丸山本妙寺中に葬る.感應院釋氏諡して寶珠院日義と曰ふ.妻子無し.臨終に親しき兄の季子康行を以て嗣と爲さんことを請ふ.蓋し其れ宿志ならん.君病むや.公子藥價及ひ諸物を賜ふも旣に歿したり.多く麾下之れ其の看病及ひ葬祭に賭して致すや.皆諸門人各其の力を竭す.而して佐伯淸孝之れを幹す.君人となり外順にして內健.事に莅[のそ]みて剛.果して疑懼する所無し.善く後進を誘[いさな]ひ.尤も童穉を愛つ.身を奉して儉しく.嗜欲を薄寡にす.獨り禽鳥を好み.多く反毛鷄を畜すのみ.平素の交道頗る廣く.其の最も厚き所の者は同門奧殿藩士田代正容義兄弟の如し.正容居合術と君の拳法とを善くす.相ひに師資たりと云ふ.嗣子康行余に屬し其の行事を述して.且つ之れに贊を爲して曰く.凜凜たる干莫.師の道の存する所.一人の敵非す.貔貅門に滿つと. 慶應丙寅の夏.同藩片山達謹て述す.宮內文明書す.