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杉浦派一刀流の註釈書 文化編

筆者は常陸笠間藩の一刀流師役九代目 杉浦景高。嘉永4年3月、弟子の田口重良が本目録決心の段階に至り写すことを免されました。

奥書に拠れば、本書は鈴木根睢の病中、枕元にて杉浦景高18歳のとき数日聞き書きし認め残したとされます。杉浦家の家譜が明らかではないため確かではありませんが、景高18歳のときは文化10年(1813)に当ると思われ、本書を仮に「文化編」と題しました。
掲載史料及び参考資料
『杉浦景高技法註釈書 文化編』個人蔵
八風
キョウ
 強釼
高く構え向うより出す上を面にツケ行く
口傳は突く処を前に引く
ジャク
 弱釼
六つを扱う、我刀を捨る故に片手放る
口傳は、押すところを柄にて目に当り、向うの柄にかけ、首にかけ右の膝を着き引く
シン
進剣
打つところ居り敷いて中を取る
口傳は面を突くそれより竹刀を打って入る
タイ
退剣
打つところ一足退り柄中止める
口傳は打つところ爪先よりかける
口傳に我太刀を後に捨る頭と両の手にてアバラに当る
左剣−右剣 左右止め行く
口傳は構わずツケ行く
天剣−地剣 天地同
投げつけるようにウチ居り敷いて左右へ飛ぶ
口傳は打落してじりじり行手を切る
口傳覺
左右に人居時刀抜様之事 両手のひらにて顔へ当て飛び退いて抜く也
刀右之手に持抜様之事 左の手にて柄頭をとり右の手にて鞘を後ろへ捨つる
ヲトシサシ
落差之時刀抜様之事
後ろへ捨つる
長袴等にて仕合并紐結様之事  
乱心者心得之事  
右五ヶ條之口傳御傳授申候也  
カマヘ覺
  高く構えるを陰(イン)と云う
  真中に構える高青眼(タカセイガン)と云う
  下に構えるを下段(ゲダン)と云う
  後ろへ構えるを車(シャ)と云う
必勝之事
タマスダレフクコウノカチ
玉簾伏仰之勝
真剣寸は手の内へかける
竹刀にては、一つ打たれて柄を逆手(さかて)にとりて当てる、色々事あり
口傳にては、後ろへ跳ねしとき、下へ組みて来るときは、柄にて背中の五のツへ当てることなり
ヤエカキセンシン
八重垣浅深之勝
真剣にては、敵の拳を目がけ打つ竹刀にては、高く構え居り、向うより投げ付けてくるところ、顔へ手にて当たる
サンドウハツサウ
山動發相之勝
真剣にては、片手にていくつも巻き釣り上げて居り敷く、拳の下をとる
竹刀にては、頭をかけて打つ
イナツマヒョウリ
稲妻表裏之勝
真剣にては、突込む所をかわって切る
竹刀にては、突込む所を仕返す
チョウウンジリイツコウ
鳥雲二理一向之勝
打とうとも打つまいとも、敵の肘を釣り上げて足に当たる切先を突く
竹刀で足に当たるもあり
真剣にては、拳を切って後ろへ廻ることなり
チョウジャシュビ
長蛇首尾之勝
真剣にては、柄中を巻いてとる
竹刀にては、柄を二つ打ち、下より出す、押し付けるところ、ひっくり返す、色々事あり
ゲダンツメテキソク
下段詰敵足之勝
足を踏み、又敵に押し付けられたるとき、手にて顎に当たる、色々事あり
又、真剣なれば、足を踏み押し付け、掻いて切る
竹刀にては、押し付けるばかり
ハヒキデンジュ コト
刃引傳授之事
早遣11本と同じ
附仕組之事
スンノノリ
三寸之乗之事
傳に肘を取るも首にかえる事秘傳
真剣にては肘を切る
竹刀にては肘を切り上げる、打つところを乗って顎にかけるる、色々事有り

ヌケル・シホル・乗三通り分けて見する也
ムトウトリ
無刀取之事
型にては手を足すなり
傳には本心の動かざることを示す
ヲモテ
表五段之仕組 組合モノ
テンカウ
電光
電光の基い、天地震動して光る、人生れてエナを持ちたる形で
合わせ柄中切る
メイシヤ
明車
どちらへでも自由に廻る、明らかなる事
真剣の時、車に構え
車にて行き出す、打ち落とす、又切るところかわって首をかけて大きく切り下げる
エンリウ
圓流
圓(まる)く流るる
下段にて、頭を打つところ、留めながら大きく手を切り下げる
キリトメ
切留
切り留めしなり突く込む、中どりして切り留めて、裏を返して打たば、手にて押さえきる、青眼
ヒチョウ
飛鳥
刃を返して、手の内へ打ち込み、常の通りにしてかわって首を切り下げる 
是までは打太刀よりかける
ウラ
裏五天之位 天ノ妙 五天位
ミョウ
妙剣
車より青眼になる
車よりつけるする、{向}手打つ真中に抜け、手を切る
青眼は本心よりつける
セツ
絶妙剣
三つ続く
打ちて投げるもとめるも、左右も絶妙なり
車から青眼に付ける間を妙剣
シン
真剣
青眼の付つらぬきて行き、勢いを指して真剣と云う、五位の位に至る
心臓(そう)は青く眼(にらみ)心臓を司る
コンジ ヲゝ
金翅鳥王剣
二つ続く
陰にて大きく巻く出す、打ち落として首を切り下げる

天地に輪をかけて居るを云う、金翅鳥 佛語ただすべし
ドク
獨妙剣
敵の事(ワサ)應ずるを指して云う
三行之位 三ツノ行イ 事(ワサ)ノ根元ナリ {正景系}{剣法巻}{杉浦景高 文化編}
風車 陰之位
風車 陽之位
明車に事の付を云う 車にて行き打つところ、左右片手切り、左より打ち込んで来る、右より切る、二本
ハツテキ
發的 進之位
發的 退之位
片手切り、陰にて手の内を前に、刃を向け切る
陰にて行き、肘を抜け、すぐに切る手
流玉 左之身
流玉 右之身
當流、多勢合、小野では八人詰と云う
下段行き、打つところ、居り敷く、なやしながらかわって足を切る、地を摺りながら左
右同じ敵の左より先に切る、一本づつ分け使う
小太刀
シヤ
捨身刀
捨身刀左右一如の位
ヒョウリ
表裏刀
二本
型は体を低く留めて、柄中をとりて、静かに引き付けて首を切る
○口傳は、直に柄中をとり、直に手を切る
ブラリと下がり切るもあり
シュコウ
守攻刀
打つところ抜け、飛んで切る
攻守刀 付け行き、合わせる手の内を切る
ギャク
逆思刀
右哥に首元キノ位
頭の上にかざし行き、腹を突くところ打ち落とし、飛んで切る
二刀 元理 強弱一位
ムシヤ
無邪刀
[小]を前に出し、[大]を車に持つ、{向}より打つ、直ぐに打つ
是は敵より二刀にて来るを、扱う[大]を気を付けること
キヨウジヤク
強弱刀
ハシメノガヲソクノチノガ、早く打つ

左上刀
爪先よりかけることなり
組んで肘に付ける
カンシュ
間取刀
組んで抜けて行く
右続けて使うことなり
シュリ
手離刀
投げつけ切る、二つ
仕組 五本
小シナイ 車にて行き、打つ、抜ける、切る、飛ぶ、また切る、留める、切る
小シナイ 打つ、抜ける、腹突く、打ち落とす、左右へ飛ぶ
小シナイ 顔へ付ける、打つ、まるく大きく抜ける、また中とりして付ける
小シナイ 前に持ち行き、大きく巻く、中とりして、肘へ付ける、行きながら巻く
小シナイ 前に持ち行き、敵より振るを、抜け入り込み、頭にかぶって
セン入 前に持ち行き、打つ、居り敷く、逆手に持ち留める、また打つ、抜ける、また打つ留める、押すところ右へ流す、二度左へ流して首を切るなり
ヨウ
九曜
ホンウ
本有刀
混々沌々一氣動きて居る
遣い様は竹刀を額に、両手合わせて持つ行く
インヨウ
陰陽刀
同、額両手を分け行き、下ろす上に下ろす
シンメイ
神明刀
山は山、川は川と居る所の、定ること人生陰陽合
高く持ち合わせる
ジキシン
直心刀
小兒の心
向青眼にてつけ行く
フウハ
風波刀
向青眼にて行き、どちらへでもかわる
シュウイ
重位刀
移りの際、上水月の心
向青眼にて行き、向うで上げるその上に上げる位
シシフンジン
獅子奮迅
寄ること
足拍子は蹴る心持ちなり
青眼にて、左を打つ、また右を打つ、また打つところにて、居敷く拳を切る
コランニウ
虎亂入
是も寄ること
下段にて、敵の顔へ当たる、打つところ、左へかわって手を切る、居敷く
ムテキ
無的刀
午時の天へ上るゆえに、的とすれば押し、向かうところふくす
敵なくして、ただ構え行く
中極意電光之本意
片手にて拂う、傳に居合の大意あり、敵より抜きかける時、飛びしさって抜き、それより電光になる
敵の前に立ちて行き、切りかけるところを、一足先へ出す、留めながら片手にて静かに抜く、切る
又敵より抜きかける時、一足引き抜き、敵の拳を片手で柄中を薙ぐる、刃を返し陰に致すこと一体居合の本意
附目
ゼイ スミ タンレン
平常中角ヨリ鍛煉スル事
打つところ柄にて留める
型には、柄を中角にする傳にわかりても中角と心得べし
ツカクダキ
柄砕中位迄ヲ傳可申事
差して行き、柄を捉え、押しても引いても鍔に人差指をかけ、大きく巻く離れる、手にて顔へ当たる、足握る、背中に肘をかけ、静かに抜きながら切る
サエテ之事 切り結び居るところに行き、手を持ち添え、肘をかけ、足を入れ、後に引きながら分ける
闇夜之事 闇の時、外のわざ
居り敷いて太刀をかぶる、一つ打つ、地を摺りながら足を切る、飛び退いて、また元の通りにして居る
      クミヤイヨウ
太刀打合左右江組合様度々稽古腰〆リ大事之事
切先を敵の顔へ打ち込み捨て、組み合い、ただフラリと下がり居るがよし
構え陰
表五段之仕組 是ハ事ノ最上
電光 は、エナを持ったる形、打つところを留める、とるところは手を切る
明車 は、抜き放したる形に、フラリと下げて切り出すところで打ち落とし、左を張りて、腕からかけて切る
圓流 は、抜きても圓(まど)かに流れ込むを云う譬え、打たれてもそのままで流れ込む
切留 は、拳をかけて打つによく、低く切り留める、それより中とり、押して摺り込む
飛鳥 は、打つと鳥の消えたる如く居り敷きて低くなる、それより両手をかけて飛ぶ、是に飛鳥剣と云うあり
裏五天之位 是ハ理ノ最上也
妙剣
絶妙剣
真剣
は、付けるところを妙と云い、付けて行くを真と云う、事に應ずるを絶と云い、一本で三本ひとくるみなり
金翅鳥王剣
獨妙剣
は、巻いて居る、出すものを心の象へ打ち込むを獨妙と云う、是は人々の獨妙なり
三行之位
  一刀流片手切と云う
風車 陰之位
は、打ちにより、右の足を上げて、右の手にて切る、左右の足を横に蹴込む
   陽之位 は、打たずに居るところを、青眼に付ける、下に落として右の手ばかりにて廻って切る
  一刀流片刃切と云う
発的 進之位
は、切りかかるを、右に飛びかわりて首を切る、尤も体を低く
   退之位 は、打つ途端に手を切る
流玉 左身 は、打つところを、足を一所に寄せて、かわりて留める、それより後ろに廻りて、足を薙ぐる、多勢の時の事に用い、四方より囲まれたる時も同じ
流玉 右身 は、右同じ
五位先後一事之位
     ズイイ
    随位刀
向青眼にて付け行く
     ミヨウサツ
中央 土
 妙殺刀
車にて、頭かけて打ち込み、下段にて巻く、居り敷く
     シンカツ
    心活刀
車より付ける、陰にて足を上げ、妙殺と同じ
     レンジウ
    連重刀
相陰、陰にて巻く、それよりサエテ打ち込む
     ムチウ
    無中刀
下段にて表に仕掛ける、裏に突く込む手をかけ居り敷く
中極意電光之本意
ホシヤ
発拂刀
星合刀
陰  片手車にて、打とうとも打つまいとも、構わず右の肩切る、左の肩切る
陽  同車にて、敵の腋の下、左より切る、直ぐに右の腋の下切る
一 上中下身之程ヲ知事  
一 後ロヨリ取ラレタル時之事 後ろより取られたる時は、体を付け、肩を抜き切る、又敵の指を曲げる
一 左右より二三人ニテ引立連行時之事 強き方へ行き、金をあて引き付けし敵を、膝にてもがく手にて顎へ当たる
一 二刀相之事 小太刀より打ち、長き方の腕を切ると心得べし、上を見込んでは長き方を叩(はた)く
  ケツ
事理決心巻
一 戸入戸出之事 窺わずズッと出入りすること
 コタツ
一 火燵之大事之事
 ウチ
足を外し居ること
一 夜討之事  
     カチ
一 馬上ニ而歩立江太刀打之事
 
一 馬上ニ而歩立江鎗合之事 當流にては馬より下りて勝負することなり、乗りて居るはあしゝとなり
一 入身之事  
一 具足相之事  
一 組討之事  
一 當身之事  
     カコマ
一 四方ヨリ囲レタル時之事
是は表の型のうちにこれあり流玉なり、一刀をもって二人に対する
     ツメ
一 大力ニ手詰ラレタル時之事
 
  リ
一 手離剣之秘事
何成とも有りよう物、手離剣なり
 トラ
一 寅之一天之事
是は朝に寝て居るとき、敵馬乗りになり、両手押さえられたるとき、どっちの足でも曲げ、とんと打ちながら蹴る、是極秘傳なり、押さえられたるとき、すぐに枕を外すことなり
  イヘン カゴ
一 異變之時馬駕籠下リ様之事
 
    フテン
極意一理不轉之位
 ゴウ
金剛剣
傳に何も持たざると心得べし
下段に構え太刀の先へ車輪を付けたる心持ち構えたる時、日中に三足の有心にて三足にて氣をもって立ち居ることなり
小太刀
 三光
小太刀にて巻いて行き、星の光りの日の巻く如く、低く替わる事なり
右の秘書は鈴木根睢先生病中に枕元にて杉浦景高十八歳の時数日聞書き認め残し置くもの也

右兵法剣術の口傳書は去る嘉永四辛亥暦三月上旬、武州江戸北八丁堀 杉浦高景先生宅に於いて恩借仕り田口重良これを冩し置くもの也
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