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杉浦派一刀流の傳書

八風切紙
1794. 寛政六甲寅年二月廿八日
杉浦素水景健−大貝八兵衛

理盡得心巻 別傳初学之巻
1804. 文化元申子年四月二日
杉浦三郎右衛門景禮−九鬼式部少輔隆郷

剣法巻
1790. 寛延二庚戌年八月十五日
杉浦與三兵衛景同−田口祐治

家傳巻
1796. 寛政八辰年二月廿八日
杉浦素水景健−田口祐治

事理決心巻
1852. 嘉永四辛亥年三月吉日
杉浦與三兵衛景高−田口勇馬

本目録
1852. 嘉永四辛亥年五月吉日
杉浦與三兵衛景高−田口勇馬
杉浦與三兵衛景健(素水) 1733−1797
旧名三木金蔵、周防徳山毛利家の家臣 三木善兵衛の子なり。
明和7年(1770)12月38才のとき、3代杉浦正健の跡を継ぎ杉浦三郎右衛門と改め、笠間藩士となり跡式10人扶持を給され、一刀流剣術師役を勤める。
安永3年(1774)使番格、安永4年(1776)物頭格、安永10年(1781)1月5人扶持加増、15人扶持となる。
天明5年(1785)3月53才のとき隠居。
寛政9年(1797)9月21日歿(65才)。「景健院通道一貫素水居士」
通称は三郎右衛門、與三兵衛(与三兵衛)、晩年は素水と号す。
徳山藩時代に学んだ加治系の越後流軍学「要門」を笠間藩士に教授し後々まで承け継がれた。

杉浦與三兵衛景同
3代杉浦正健の実子、4代杉浦與三兵衛の跡を継ぎ與三兵衛と改め、同藩に於いて一刀流剣術師役を勤める
寛政4年(1792)11月4日歿(48才)。

掲載史料及び参考資料
『八風切紙』個人蔵
『理盡得心巻』個人蔵
『剣法巻』個人蔵
『家傳巻』個人蔵
『事理決心巻』個人蔵
『本目録』個人蔵

八風切紙

 八風

一 強釼
一 弱釼
一 進釼
一 退釼
一 左釼
一 右釼
一 天釼
一 地釼
右八ヶ條者當流雖
為秘事依御修行
深切難黙止且又
稽古御募候便止存
傳授申候然上者無
油断鍛煉専一候
尤如誓盟更々不
可有他言他見者也

         與三兵衛改
寛政六甲寅年 杉浦素水
 二月廿八日  景健(印)(判)

大貝八兵衛殿
【訳】
□ 奥書
右八ヶ條は當流秘事たると雖も御修行深切に依て黙止難く、且つ又稽古御募り候便(たよ)りと存じ傳授申し候然る上は油断無く鍛煉専一に候
尤も誓盟の如く更々他言他見有るべからざるもの也

※「稽古御募り候便(たよ)りと存じ傳授申し候」とは、この上更に稽古の励みとなるようにという意味で伝授する

理盡得心巻

 理盡得心巻
(印)
有理則有事有事
則有理故得心理盡至也

 必勝之事(印)

玉簾伏仰之勝
八重垣浅深之勝
山動發相之勝
稲妻表裏之勝
鳥雲二理一向之勝
下段詰敵足之勝
刃引傳授之事
  附仕組之事
三寸之乗之事  口傳
無刀取之事
長蛇首尾之勝

右條々當流篤志而非
遊之習之者妄不可許之

     杉浦與三郎右衛門
文化元申子年  景禮(印)(判)
  四月二日


謹上
九鬼式部少輔殿 御左右
【訳】
□ 序
理有らば則ち事有り、事有らば則ち理有り、故に得心理盡に至る也

□ 奥書
右條々當流篤く志て遊に非ざる者これを習う、妄りに許すべからず

剣法巻

 剣法巻

(印)
天之所與者是曰武武
所得者是曰政抑萬
機之征衛者乃在一身之
攻守皆是剛勇之所為
而剣刃之所制也於是
乎武威始全故以一刀
能攻以一刀能守者是又
殺活自在之所能達也
可謂威徳己就矣然而
剛勇在内而理剣刃在
外而事是故事理兼
備者則向敵而可知能
勝然内有餘理而外有
不足事外有餘事而
内有不足理者不為不多
凡唯心之教者一刀之術者
心為刃之至攻復不侯他
求所謂事理全備者正
也正者則無不所的擢而
無不所向服既能探其
深意而能可窮其玄奥
苟怠於心倦於事者何
得至哉故非知剣法者
敢不以許謹而令傳其
目而記如左

 仕組目録

表五段之仕組
 電光
 明車
 圓流
 切留
 飛鳥

裏五天之位
 妙剣
 絶妙剣
 真剣
 金翅鳥王剣
 獨妙剣

三行之位
 風車 陰之位
    陽之位
 発的 進之位
    退之位
 流玉 左身
    右身

小太刀
 捨身刀
 表裏刀
 守攻刀
 攻守刀
 逆思刀

二刀
 無邪刀
 強弱刀
 左上刀
 間取刀
 手離刀

八風
 強釼
 弱釼
 進釼
 退釼
 左釼
 右釼
 天釼
 地釼

九曜
 本有刀
 陰陽刀
 神明刀
 直心刀
 風波刀
 重位刀
 獅子奮迅
 虎亂入
 無的刀

中極意電光之本意口傳書
一 平常中角ヲ鍛煉スル事
一 柄砕中位迄ヲ傳可申事
一 サヱテ之事
一 闇夜之事
一 太刀打合左右江組合様度々
  稽古腰〆リ大事之事

右五箇條者當流兵法剣術
此以後為被出御情傳申候
猶以御修行於有之者中
目録二三十箇條極秘傳之
大事共段々傳授可申者也

八天狗菩薩(印)

 鐘捲外陀通宗

 伊藤一刀齋影久

 古藤田勘ヶ由左衛門尉俊通

 古藤田仁右衛門尉俊重

 古藤田彌左衛門尉俊定

 杉浦三郎太夫尉正景
  玄休
 杉浦與三兵衛尉正本
  泰休
 杉浦與三兵衛尉正健
  素水
 杉浦與三兵衛景健

寛延二庚戌年 杉浦與三兵衛
 八月十五日    景同(印)(判)


 田口裕治殿
【訳】
□ 序
天の與をる所のもの是れ曰く武、武の得る所のもの是れ曰く政
抑萬機の征を衛るものは乃ち一身の攻守に在り、皆な是れ剛勇の為す所にして剣刃の制(あつか)う所也
是に於いてや武威始りて全し、故に一刀を以て能く攻め、一刀を以て能く守るもの、是れ又た殺活自在の能く達する所也、威徳の已に就(な)ると謂う可し
然れば剛勇は内に在りて、理は剣刃の外に在りて、事(わざ)是の故に事理兼備するもの則ち敵に向いて能く勝つことを知るべし
然れば内に餘理有りて、外に不足の事有り、外に餘事有りて、内に不足の理有るもの多からずと為せず
凡そ唯心の教えは一刀の術者、心を刃の至功と為し、復た他に求むることを俟(ま)たず、謂所(いわゆる)事理全備する者は正しい也
正しい者は則ち無的の所摧(くじ)けざるして、向う所服せざること無し、既に能く其の深意を探りて能く其の玄奥を窮むべし
苟くも心に怠り、事に倦む者何ぞ至ることを得ん哉、故に剣法を知るに非ずんば、敢えて以て許さず、謹しんで其目を記し傳えせしむ左の如し

□ 奥書
右五箇條は當流の兵法剣術、此れ以後御情を出さるため傳え申し候
猶以て御修行これ有るに於いては中目録、二三十箇條極秘傳の大事共段々傳授申すべきもの也

家傳巻

(印)
夫剣術之法行者古昔
之治道而以教人之
法也蓋導之尊天命
敬五常順五倫而正賞
罰故善者揚之悪者抑
之所謂殺活自在是也於
今殺之以一刀活之以一
刀矣及于其至也両頭
倶裁断一剣倚天寒實
惟心為萬法之主是以
學此之術者不可不本
于一心於是顕十箇之條
目而欲使初學之弟子
鍛錬者也

   第五善悪虚實之事
   第四學不學損益之事
   第三生死順逆之事
   第二勝負三段之事
   第一事理本末之事
 一刀   常
天命一刀唯心勝我釼法常守
 唯心   守
   第一忠孝之事
   第二應身行之事
   第三運在天事
   第四師弟子之事
   第五不可忘之事

 仕組目録

表五段之仕組
 電光
 明車
 圓流
 切留
 飛鳥

裏五天之位
 妙剣
 絶妙剣
 真剣
 金翅鳥王剣
 獨妙剣

三行之位
 風車 陰之位
    陽之位
 発的 進之位
    退之位
 流玉 左身
    右身

五位先後一事之位
 随位刀
 妙殺刀
 心活刀
 連重刀
 無中刀

右師傳之趣雖有傳授
實志之者鮮矣或初學
而廃或半途而止是則
吾師所患也故其心
以辨之後来傳于兄弟
子孫長希無断絶也
仍家傳之巻如件

天和二壬戌歳十一月十五日
 杉浦氏正景謹誌(印)

 事理口傳書

八天狗菩薩(印)

 鐘捲外陀通宗

 伊藤一刀齋 影久

 古藤田勘解由左衛門尉 俊通

 古藤田仁右衛門尉 俊重

 古藤田彌左衛門 俊定

 杉浦三郎太夫 正景(印)
   玄休
 杉浦與三兵衛尉 正本(印)
   泰休
 杉浦與三兵衛尉 正健(印)
       與三兵衛隠居後
寛政八辰年 杉浦素水
  二月廿八日 景健(印)(判)


 田口裕治殿


小太刀
 捨身刀
 表裏刀
 守攻刀
 攻守刀
 逆思刀

二刀
 無邪刀
 強弱刀
 左上刀
 間取刀
 手離刀

八風
 強釼
 弱釼
 進釼
 退釼
 左釼
 右釼
 天釼
 地釼

九曜
 本有刀
 陰陽刀
 神明刀
 直心刀
 風波刀
 車位刀
 獅子奮迅
 虎亂入
 無的刀

中極意電光之本意
発拂刀
一 平常中角ヨリ鍛煉スル事
一 柄砕中位迄ヲ傳可申事
一 サヱテ之事
一 闇夜之事
一 太刀打合左右江組合様度々
  稽古腰〆リ之事
一 上中下身之程ヲ知事
一 後ヨリ取レタル時之事
一 左右ヨリ二三人ニテ引立連行事
一 二刀相之事
一 取〆縄掛様之事

右十箇條者當流兵法
剣術全可有修煉鍛煉
熟於身心者数ヶ條之
秘事口傳聊不可残者也

寛政八辰年 杉浦素水
  二月廿八日 景健(印)(判)


 田口裕治殿
【訳】
□ 序
夫れ剣術の法を行う者、古昔の道を治め以て教る所人の法也、蓋しこれを導くに天命を尊び五常を敬し五倫に順じ、而て賞罰を正す故に善はこれを揚げ悪はこれを抑えん、所謂殺活自在是れ也、今これを殺すに一刀を以てし、これを活すに一刀を以てす、其の至れるに及んでは両頭倶に裁断一剣天に倚て寒(すさま)し、實に惟心は萬法の主為り、是を以て此れを學ぶ之術者一心に本せざるべからず、是に於て十箇之條目を顕して初學の弟子鍛錬せしめんと欲すもの也

□ 杉浦正景奥書
右師傳の趣 傳授有と雖も實志の者鮮し、或は初學にして廃(すた)れ或は半途にして止む、是則ち吾師患う所也、故に其の心を(とり)て以て之を辨え後来兄弟子孫に傳え、長えに断絶無きを希う也、仍て家傳の巻件の如し

□ 奥書
右十箇條は當流兵法剣術全く修煉鍛煉有るべくして身心熟すにおいては数ヶ條の秘事口傳 聊かも残すべからざるもの也

事理決心巻

事理決心巻
 事理決心巻

(印)
一 戸入戸出之事
一 火燵之大事之事
一 夜討之事
一 馬上ニ而歩立江太刀打之事
一 馬上ニ而歩立江鎗合之事
一 入身之事
一 具足相之事
一 組討之事
一 當身之事
一 四方ヨリ囲レタル時之事
一 大力ニ手詰ラレタル時之事
一 手離剣之秘事
一 寅之一天之事
一 異變之時馬駕籠下リ
  様之事

右之條々者別而秘中之
秘而一子相傳之大事雖然修
行之位以追々御傳授
可申候傳授之上傳法被
及御子孫度時節者其
旨當家御聞合次第
否可及御指図候御
子孫江傳来御相續
之儀武門之至宝何
可求其他哉猶以御熟
得可有之者也

八天狗菩薩(印)

 鐘捲外陀通宗

 伊藤一刀齋影久

 古藤田勘ヶ由左衛門尉俊通

 古藤田仁右衛門尉俊重

 古藤田彌左衛門尉俊定

 杉浦三郎太夫尉正景
   玄休
 杉浦與三兵衛尉正本
   泰休
 杉浦與三兵衛尉正健
   素水
 杉浦與三兵衛景健

 杉浦與三兵衛尉景同
   六郎治
 杉浦與三兵衛尉正純

 杉浦直六郎尉正行

     杉浦與三兵衛
嘉永四辛亥年  景高(印)(判)
 三月吉日


田口勇馬殿
【訳】
□ 奥書
右の條々は別して秘中の秘にして一子相傳の大事、然りと雖も修行の位を以て追々御傳授申すべく候、傳授の上傳法御子孫に及ばれたき時節は其の旨當家へ御聞き合せ次第否や御指図に及ぶべく候、御子孫へ傳来御相續の儀は武門の至宝何ぞ其の他に求めん哉、猶以て御熟得これ有るべきもの也

本目録

本目録
 本目録
(印)
夫唯心流兵法剣術
者事理要中和而変
化應機蓋事者随流
變動無常因適轉化
不為事先動而輒随故
事理正則為全勝将掬
水月在手弄花香満衣
自得其妙而應万機而己

 仕組目録

表五段之仕組
 電光
 明車
 圓流
 切留
 飛鳥

裏五天之位
 妙剣
 絶妙剣
 真剣
 金翅鳥王剣
 獨妙剣

三行之位
 風車 陰之位
    陽之位
 発的 進之位
    退之位
 流玉 左身
    右身

小太刀
 捨身刀
 表裏刀
 守攻刀
 攻守刀
 逆思刀

二刀
 無邪刀
 強弱刀
 左上刀
 間取刀
 手離刀

八風
 強釼
 弱釼
 進釼
 退釼
 左釼
 右釼
 天釼
 地釼

九曜
 本有刀
 陰陽刀
 神明刀
 直心刀
 風波刀
 車位刀
 獅子奮迅
 虎亂入
 無的刀

中極意電光之本意口傳書
一 平常中角ヨリ鍛煉スル事
一 柄砕中位迄ヲ傳可申事
一 サヱテ之事
一 闇夜之事
一 太刀打合左右江組合様度々
  稽古腰〆リ大事之事

五位先後一事之位
 随位刀
 妙殺刀
 心活刀
 連重刀
 無中刀
右中極意事之至極可秘

諸勝負相之事理
一 小具足相之事
一 二刀相之事
一 多勢之事
一 闇夜之事
一 具足切之事
一 馬上相之事
一 鑓相之事
一 先後不止之事
一 乗而間ヲ取事
一 構ヲ以合敵事
一 構心不異之事
一 移目付之事
一 先之定間之事
一 移無遠近之事
一 剣前躰後之事
一 剣躰備勢之事
一 先後當的之事
一 進退依敵利事
一 應在本未之事
一 攻中之守之事
一 守中之攻之事
一 釼躰形勢之事
一 剣体色勢拍子之事
一 釼躰釣合虚實之事
一 事理順逆之事
一 守而不待之事
一 主一剣一理之事
一 長短一味之事
一 捧心之事
一 水月之事
一 単刀直入之事
右事理之傳授者釼躰心正
虚實明勝負得失釼法正
理之方規也雖然至釼心不異
者得手之應心之也可有能
鍛煉也

極意一理不轉之位
 金剛剣
 小太刀三光
 向上本分之位
 能縦剣
 殺人刀
 活人剣
右極意向上殺活之自在也
同撰中撰秘中之秘也而
機微言之旨全不此術此書
但守器用感懇志可授與
者也仍如件

八天狗菩薩(印)

嘉永四辛亥年 杉浦與三兵衛
 五月吉日    景高(印)(判)

田口勇馬殿
【訳】
□ 序
夫れ唯心流兵法剣術は事理要中の和して変化機に應ず
蓋し事(わざ)なるは流に随って變動し常無く、敵に因て轉化して、先動て而して輒(すなわ)ち随い事(わざ)を為さず、故に事理正ければ則ち全勝為り
将に水を掬(きく)すれば月手に在り、花を弄すれば香衣に満つ、自ら其の妙を得て万機に應ずのみ

右事理の傳授は釼躰心正しく虚實明らかにして勝負の得失釼法正理の方規也、然と雖も釼心不異に至らば、手に得て之を心に応ず也、能く鍛煉有るべき也

□ 奥書
右極意向上殺活の自在也、同撰中撰秘中の秘也、而して機(きざし)微言の旨、此の術此の書全きならず但だ器用を守り懇志に感じ授け與うべきもの也仍て件の如し
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