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無外流の伝書 姫路藩

無外真傳兵法目録
1855. 安政二乙卯年五月七日
高橋八助成行・高橋留次成次−三俣惣之進

無外真傳兵法大略解
1855. 安政二卯年十一月廿日
三俣惣之進義章
三俣義章は国詰(姫路組)の姫路藩士にて、『無外真傳兵法目録』を傳授されたこの年27才。父は同藩の御物頭にて高三百十石、不易流銃術の師役であり、且つ安政2年頃は御取次も兼勤していたと見られる。 三俣家はいわゆる武官として藩に仕える家柄で、三俣義章は嫡子であり亦諸藝に出精していたことから若年の頃より格別に引立てられた。 無外流に関しては嘉永5年(1852)6月15日「無外流兵法一段出精致候様被仰付候、但学問并外藝事を廃候而致候ニ不及段御達」と藩より特に達があり、同年9月12日無外流の仮世話役を命じられた「無外流兵法仮世話被仰付候」。仮世話役は安政3年10月16日に御免となる「無外流兵法仮世話御免」。 しかしその後も同流に出精し「無外流兵法一段出精」の仰せが免されたのは、勤め向きが忙しくなった安政5年(1858)11月26日のことであった「無外流兵法一段出精御用多ニ付被成御免候」。 この間、黒船来航の影響があったものだろうか、義章は不易流銃術の世話役や、宝山流和良の世話役を勤めるなどして忙しかった。度々藩より褒美を下されいる。

掲載史料及び参考資料
『無外真傳兵法目録』私蔵文書
『無外真傳兵法大略解』私蔵文書
『家譜』私蔵文書
『姫路藩家臣録』姫路市立城郭研究室所蔵

無外真傳兵法目録








 無外真傳兵法大略

夫天地之造化一氣
而有陰陽人性之感
通一徳而有文武蓋
武者文之本也文者
武之本也孝悌忠信
而為國是文之徳也
撥乱伐逆致治者是
武之徳也兵法者専
武術之最上也抑無
外真傳之兵法者恃
不傳刺撃之術而廣
通武道之正理乎故
主忠孝而修其心以
兵法護其身而以至
文武合一之地為要
率太刀之用者戦法
所謂等正兵歟然因
敵為轉化者兵法之
常理也心術已通則
理自以心傳心焉今
茲十剣之名目並所
學之階級書之昇高
之為一助而已
  無外嗣子
    都治資英記


一 稽古人慎之事
一 太刀持様之事
一 體之事
一 腰之事
一 物見之事
一 場合之事
一 先後之事
一 氣相之事
一 志氣差別之事
一 足之歩之事
一 兵法者非業而心之修行成事
 右各口傳

 十剣目次
一 獅王剣
二 翻車刀
三 玄夜刀
四 神明剣
五 乕闌入
六 水月感應
七 玉簾不断
八 鳥王剣
九 無相剣
十 萬法歸一刀
 右十剣秘訣免許之巻
 具者茲不記

 安政二乙卯年
   五月七日

右流儀積年稽古篤志
之躰神妙存続依而秘
密之目録一軸令相傳
候秘密之事理雖為親
子兄弟相傳無之仁江者堅
洩説有之間敷者也
 右附

   都治月丹無外一法
       資茂
   無外嗣子
     都治記摩多
       資英
   無外孫
     都治文左衛門
       資賢
   無子彦
     都治記摩多
       資幸
     都治文左衛門
       資信
     都治金市郎
       嘉重
     都治記摩多
       茂岡
     高橋八助
       充亮(印)
     高橋八助
       武成(印)
     高橋八助
       成行(印)(判)
     高橋秀蔵
       武憲(印)
     高橋留次
       成次(印)(判)


  三俣惣之進殿江
【訳】
夫れ天地の造化は一氣にして陰陽有り、人性の感通一徳にして文武有り、蓋し武は文の本也、文は武の本也、孝悌忠信にして國為るは是れ文の徳也、乱を撥い逆を伐ち治を致すは是れ武の徳也、兵法は専ら武術の最上也、抑無外真傳の兵法は恃り刺撃の術を傳にはあらずして、廣く武道の正理に通ず乎、故に忠孝を主として其の心を修め、兵法を以て其の身を護りて文武合一の地に至るを以て要と為す、率太刀の用は戦法に謂う所正兵に等しき歟[か]
然れども敵に因て轉化為すは兵法の常理也、心術已に通らば則ち理自ら心を以て心を傳う焉、今茲に十剣の名目並ぶる所を學び階級を書して高きに昇るの一助と為す而已[のみ]

右流儀 積年稽古篤志の躰 神妙に存続、依て秘密の目録一軸相傳せしめ候、秘密の事理親子兄弟為ると雖も相傳これ無き仁へは堅く洩説これ有る間敷きもの也

無外真傳兵法大略解











無外真傳兵法大略解


無外真傳兵法大略 無外と云は月丹
         翁の本名なり

無外流と云は 無外真傳 是は無外真傳とよみて
是を以云なり      上にかさりなく少も

あさむくことなく真實を 兵法大略 ほゞ兵法のあら
以することなり          ましをと云ふなり

夫天地之造化一氣而有陰陽
もと大地のなりは一つなるものにてそれより昼夜ともなり
春夏秋冬ともなり或は雨もふり日よけもあるよふに
色〃うつりかわれどももとはと云に天地の
一氣よりいてたものなり   人性之

感通一徳而有文武 上に云天地陰陽の
         氣をうけて人と

生るゝか人性の 一徳而有文武 一徳と云は徳は
感通なり           うると云のことに

て天地の一氣をうけ溥ることなり文武と云は上の陰陽と
同しことなり上には天□て云
次には人の上にて云たものなり 蓋武者文之

本也 武はなりてなならぬものなりすれは武斗あれは
   よいかと云にそうてなし文なくては道理を
わきまえること成かたきなり故に文武は車の両輪の
如し一つもかけてはならぬものなり古語に無文之武は
ありしかれはいつれもかぞへからさるものなり 孝第

忠信而為國是文之徳也 両親ゑ孝養
           をつくし見を

うやまうか孝仁弟也徳は実心なること信は言の道理に
たかはぬことヶ様に孝弟忠信にて為國なにそと云にこれ文の徳なり

撥乱伐逆 致治者是武之徳也

乱ほふ[暴]なものをはらいのけ逆なるものをうつ是武徳也
武と云てわけもなしに無理を以撥伐は本の武にをらす
道なりを以悪逆するものを
伐なり不溥已周の武則已なり 兵法者専

武術之最上也 武術は色〃あれとも兵法は
       其内就中よきと云のことなり

抑無外真傳之兵法者恃不傳

刺撃之術而廣通武道之

正理 當流の兵法はたゝきりたりつきたりする斗の
   術にあらす武士の道の正しき所をしらんためのことなり

故主忠孝而修其心 上の通ゆへとにかく忠孝を
         をもにして吾心をよくをさめ

以兵法護其身而以至文武

合一之地為要 この兵法を我身の守りとして
       上に書文と武と一枚の地位に
いたるようにとそれを
肝要とつとむることなり 率太刀之用戦法

所謂 凡太刀の用のようは  等正兵歟 正はたゝしい
   たゝかいの作法に云てある    と云ことて人を

はかるとなく真正面にしかてゆ
く其通正きと云こと也     然因敵為轉

化者兵法之常理也 □□はたゝ真面
         斗かと云にそう
てはなく向ふより一つにかゝるものあり或はひかへるもの
もあり色〃様〃あり故に因敵轉化と
向のくるなりにうつりかはるか兵法常定さ理なり 心術已

通則理自以心傳心焉 心の修行をよく
          熟しかてん[合点]した
上は道理がをのつから心にひゝきて師匠の心上のところも
よく合点することなり
口上ひはいゝときかたきことなり 今茲十劒之名目

并所學之階級書之昇高之

為一助而已 十剣の名目とはをく[奥]にある木刀
      十本の名也其上習ふところの
階級とはのほるはしこ[梯子]なりこの目録を書立て高きへ
のほる所のまつの助にもなれ
かしとする斗のことぢやと云こと

一 稽古人慎之事 稽古する人諸事慎の心をわす
         れぬ様に大切に修行することなり

一 太刀之持様之事 太刀を持には少もきめかたまりたる
          所なく自然すくなる様もつことなり

一 體之事 是も上に同し體にゆかみなくゆつたりと
      前後ゑ心をくは[配]りす様にすることなり

一 腰之事 こしめうこかす又しづますよく臍下ゑ
      心を用しまり合事専一なり

一 物見之事 これもゆかまぬ様に真
       直にみることなり

一 場合之事 たとゑは大太刀力をは太刀たけより入れぬ
       内に打とる様にし小太刀から□其通相手の
       足本いる様にするなり

一 先後之事 先とは先〃の先をとることなり
       後は後の先をぬかさぬことなり

一 氣相之事 向ふのつよきにもあれよわきにもあれ
       或早きも[の]にてもおそきものにても此方
       氣相のかわらぬ様にと心得ることなり

一 志氣差別之事 志とは別の□□りたとへは
         向ふの敵を打つと思ふの志なり
行かゝりてつかへて打出されぬは氣なり 様に
つかれぬ様に志氣差別なしにゆけと言ことなり

一足之歩之事 一足出るとき飛込と云ことなし
       をそくもなく又はやくもなく
たゝすらゝゝと滞なしにゆきさて場合に至ては先と
云ことなしすらゝゝとするなりを通し打てはあいうたね
は打込と云様にするを専一とするなり

一兵法者非業而心之修行成事

もとこの兵法はたゝよく人を打たりつきたりする斗のこと
てはない我心をよく治めて修行するなり我心かよく
をさまらねはなにほと達者によくしてもそれはたゝの
藝者と云ものなり何の用にも立ぬなり然れは我刀
身心をねる工夫を専要とすることなり

  右各口傳 口傳と云は格段の□はない
       上にある通のことなり

   十劒目次

一 獅王劒 これはしゝと云ものは甚つよきものにて
      ね入てをるときに□其わきを余の
      けたものがゑにとうらず乕は百獣を
かのものね入たるときは其わきを通ると云ことあり故に
其いきこみのつよきを以獅王と名附る也

二 翻車刀 ひるかゑる車と云ふていさゝかもとゝ
      こうりのなき所を以云なり

三 玄夜刀 玄夜はやみの夜のことなりさいしよつき
      ゑつけてゆくわざはよく心をちらさぬ
こと也右之通太刀をわきに付てゆけはや三夜に道を通る也
山中□にて敵にも向ふにをれはちきにあたるゆへ則
此方のかたことなるなり

四 神明剣 これは身躰鏡のことくなれはよき
      もあしきもよくうつると云から神明
と云也又一説に明は佛と云ことにて佛もよき佛なれは
善悪ともによくうつると云からのことなり

五 乕闌入 虎のいきこしのつよきから名附闌は
      闌子のことにて六ヶ敷関所を云ヶ様な
ところにてもつきぬくと云から乕闌と云なり

六 水月感應 これはうつりのは□□ことを云なり
       水に月のうつるはとこにても水さゑ
あれは雨をちてもたらいの水もちきにうつるか水月
かんのうなり

七 玉簾不断 たとへは禁中に玉のすたれか掛り
       てある両方へうつり合て勤の
ないと云ことはない勝負するにも藝の□きものゑは其の
をとりたるものより向ふへうつる 不断 女波男波と
も大太刀よりひきて打こととすれは其の引ところへつ
けもみ波のうつかごとく引かとすし[れ]は又あとよりうちたり
この如く一向にきれめのないか不断なり

八 鳥王劒 これはと云鳥ありて甚大なる鳥なり
      一羽うちて十万りに至るとありそのすさまし
き所を名附也

九 無相劒 これは甚急な場合のこと云なり無相
      とは無相と云意なり則此形のぬき
うけの通未さやにある内にあうと云甚はやき場に
勝のあることなりそれゆゑに無相と名附るなり

十 萬法歸一刀 わさは万法かにゝゝにわかれて
        をれとも其をつゝめてみれは
もと一本うつより外はない是萬法歸一なり


安政二卯年十一月廿日
       三俣惣之進義章


前當本法
但 割革につゝむ
幅五分
竹十三本 但し幅
     五分
上 幅四寸弐分
下 同五寸九分



 右之通辻先生に承申候

大太刀弐尺五寸   柄 八寸
小太刀壱尺参寸   同 五寸

鞱革仕立三寸八分先にて壱分五厘落す
小 壱尺参寸 柄五寸先留る
但し 三寸八分仕立をとしなし
鞱竹三十弐けずる
小 十六   同
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