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真影山流居合の手数書(二)

目次
表手數二拾八本(居合拾四本/立合拾四本)
取合表手數拾七手
陰手數貮拾八本(居合拾四本/立合拾四本)
取合陰手數(居組/居組柄取/立合柄取/張合之巻)
真影山流居合目録之巻
目録手數(居合九本/本段拾五ヶ條)
取合目録手數 行違之巻
真影山流居合免許目録
免許手數壹巻拾三本
免許手數貮巻拾本
太刀構/入身構/小太刀構
兵法免許口傳

凡例
一、『真影山流居合手数書(一)』は仙臺藩士石川家の旧蔵文書にて、真影山流居合を家中の士へ指南した八代目石川光實の筆と考えられます。
一、片仮名表記は平仮名に改めました。
一、「之」「者」「江」「茂」「与」、合字の「より」「こと」「とも」「して」等を平仮名に改めました。但し「之」は一部原文の侭。
一、翻刻文の記号は此の通りです。[ ]:管理人註 □:欠損 ■:不読

掲載史料及び参考資料
『真影山流居合手数書(二)』個人蔵

表手數二拾八本(居合拾四本/立合拾四本)

 真影山流居合手數形

   表組二拾八本の内
   居合拾四本

一 亂抜  間積り八尺
  打右の膝立抜付る
  時脇指を鞘からみ
  に持右の膝立抜合
  打八相に引取え左
  足を踏込脇指を持
  替脇壺え抜付脇備
  に取打足を踏替て
  上より打を指に受
  打又八相に引時指
  を冠り右の足を踏
  込上より切留立備
  に取堅める也勝身
   脇備は左り足を踏出
   半身にない左の乳の
   下え付て取
   指受は指の下より向
   を見るように受る
   立備は右足を踏出し
   半身になり脇指の
   切先敵の両眼の間え
   付ように柄は右の膝
   え付るなり
   鞘は左の乳え付て
   取紋備と云

一 乱鞘
  打抜付る時左りの

  手にて脇指の栗形
  の下を取左りの膝
  を立脇指持たる左
  の手を胸え付鞘の
  まゝに受打八相に引
  所え右足を踏込脇
  え抜付る打引て打
  を左足を踏込指に
  受打八相に引時指
  を冠り右を踏込て
  上より切留立備に
  取勝身
   指受より切留まて
   末共に同断

一 〆鞘
  右の膝立抜合ること
  すくに左足を踏込
  敵の太刀を指にて
  上より留る打立な
  から振上て打を指
  に受同切留勝身

一 上鞘
  上より抜打に打時
  左り足を踏出左の
  手にて脇指を鞘侭
  抜圖の如く向え掛
  り受打八相に引時
  右足を踏込脇え抜
  付上より打を左の
  足踏込指に受切留
  勝身


一 取合二刀
  抜合打八相に引時
 切先を向の両眼え付
  左の足を踏込脇備
  に取上より打を指
  に受切留勝身

一 抜
  抜打に上より打を
  右足を左の膝の通
  りえ踏込抜て抜打
  に上より打の小手
  を切打引取所え左の
  足を踏込逆に巻込
  よふに脇を切脇備
  に取上より打を指
  に受切留勝身

一 蜻蛉
  抜合打刀を引冠り切
  先え左手を添突身
  に入を抜合たる侭
  にて鍔にて押留な
  から鍔にて突逃
  しすくに首を切右
  足を引て膝を突脇
  備に取指に受切留
  勝身

一 蜻蛉崩
  抜打に上より打を
  右膝を立腰をひね

  り抜流に圖の如く
  受る脇を打を左足
  踏込切先て左の手
  を添て受打引取を
  右足を踏込柄を両
  手にて持上より打
  の小手を切又上よ
  り打を左の足踏込
  流し受に受打引時
  右足踏込上より小
  手を切留脇指を右
  の肩えかつき勝身

一 間抜
  右の膝を立脇指を
  向え抜出して柄え
  右の手を披きて掛
  仕掛る打抜打に上
  より小手を打時右
  足を右え披き手を
  ちゝめ空打をさせ
  右足を踏込小手え
  抜付る打立なから
  逃して振上打を左
  足踏込指に受切留
  勝身

一 巻打
  鞘からみに乱抜の
  如く抜合打八相に
  引時手を柄え持替
  左の手を添左の足
  踏込脇備の如く脇

  指を躰え引付て居
  上より打を其侭に
  脇指を頭上え上て
  受打引所え右足
  を踏込上より切留
  勝身

一 小手抜問答
  抜合打左足を踏込
  右の手首を左にて
  取上突んとするを
  取られたる侭にて
  右の手を身をくれ
  向え突込鍔にて打
  の突身を留なから
  左の手にて鞘を持
  手前の二の腕の所
  え掛飛違て打の手
  を突落す打引なか
  ら振上打を指に受
  切留勝身

一 小手詰
  抜合打八相に引時
  左足を踏込脇備に
  取上より打を叉に
  受切留勝身
   取合二刀は切先を打の
   両眼え付て入此太刀は
   只すらつと脇備に入也

一 逆刀
  抜打に上より打時

  左の脇の刀を左手
  にて栗形の下を取
  柄え右の手を持添
  左の膝立下よりす
  くふよふに圖の如
  く受打引所え右足
  を踏込立て脇指に
  て脇え抜付上る打
  上より打を叉に左の
  足を踏込受打引時
  切留勝身

以上拾四本居合

   立合拾四本

一 虎尾  間積り二間
  打右の膝立太刀え
  手を掛居所え陰に
  立刀を鞘からみに
  左え持乳の邊え付
  一文字に持脇指を
  右にて抜圖の如く
  立すら々と出打抜
  付る時左の足踏込
  左の刀を下て留上
  より首を切頭上え
  冠るよふに引かへ
  す打八相に引所え
  右足を踏込上より
  受切留勝身

一 乱拍子 間積り二間半
  打八相に取する々と
  出上より打を大小
  指刀え手を掛同出
  塩合にて抜流に圖
  の如く受打引所え
  脇備に入上より内
  を [指]に受切留勝身

一 諸鍔  間積り一間半
  大小指立向脇備に
  て圖の如く抜合上
  より打を大小共に
  左の小耳え寄鍔に
  て瀧流に圖の如く

  受打の引所え左の
  足踏込巻打に脇を
  切脇備に取上より
  打を [指に]受切留勝身

一 行違  間積り三間程
  大小指常の如く出
  打の右の方を行違
  時大小を諸に抱て
  右足を立左の足に
  て逆に廻り刀にて
  抜付る打抜拂ひ振
  上打を左の足踏込
  流に受打八相に引
  所を右足踏込上よ
  り切留て勝身

一 両塞
  打八相に取出を刀
  を右え下て出上よ
  り打を刀の鐺に左
  の手を添右足を出
  刀の柄にてふうはり
  と受る打左の手に
  て柄を取引時右の
  手を放し左の足を
  踏込上より打を鐺
  を持たる左の手を
  持たる侭に向え押
  掛摺足に進腰を捻
  り脇指を抜付突身
  に取也

一 鍔摺  間積一間半
  大小立向脇指に
  え抜合は紋備
  取也振上打を脇指
  の鍔にて刄を内え
  向目通え出て真直
  受にして頭上え摺
  上摺落す又振上て
  打を [指]に受て切留
  勝身

一 向詰
  立向刀にて抜合打
  引所え左の足を踏
  込下段に入上より
  打を右足を踏込下
  よりすくふように
  小耳え受打の引頭
  え左の足を踏込脇を
  切又上より打を流
  に受て切留勝身

一 逆抜  間積二間
  打右足を出柄え手
  を掛居所え大小指
  歩行打塩合にて抜
  拂時下より脇壺え
  抜込左を飛込刀を
  横に身に付居上よ
  り打を流に受切留
  勝身

一 逆掴  間積り一間半
  立向打刀え手を掛
  仕掛る所を上より
  抜打に切込打はつ
  して抜拂上より打
  を左の足踏込流に
  受引頭え右足を踏
  込上より小手を切
  又上より打を小耳
  に受引頭え付込て
  脇を切又上より打
  を流に受切留刀を
  右の肩えかつきて
  勝身 此切留は二太刀重切に
     切なり

一 拊刀  間積三間
  打八相利刀を拊て
  互にすら々と出上
  より打を抱たる刀
  を其侭にて頭上え
  上さの足を向え出
  半身に成受脇を打
  を本の如く刀を下
  て摺足に進留打の
  引所え刀は左に持
  右足踏込脇指にて
  脇え抜付る上より
  打を [指]に受て切留
  勝身

一 二段詰
  立向刀にて抜合打

  振上打を刀の柄え
  左の手を添鍔摺の
  如く受て摺落す又
  上より打を左の足
  を踏込流に受切留
  勝身

一 諸打
  諸鍔の如く抜合同
  く受引返して首を
  右より打を脇指を
  逆流に取なから左
  を踏込左え持たる
  刀の柄を打の小手
  え押掛留て脇指に
  て首を切虎尾の如
  く引る打引なか
  ら上より打を下よ
  りすくふ様に右足
  踏込又諸鍔に受打
  の引頭え付込脇を
  切留勝身

一 引詰  間積り二間
  打刀え手を掛仕掛
  居所え大小指つか々
  出塩合にて上より
  抜打に切込打抜拂
  すくに横に付る時
  一歩引て切先を少
  し下る打進て上よ
  り打を流に受切留
  勝身


一 柄嫌  間積り三間
  打八相利拊刀の如
  刀を持掛りにす
  ら々と出塩合にて
  上より打を左の足
  を踏出持たる刀を
  頭上え上て半身に
  成受打八相に引所
  え其侭右足踏込て
  鞘は頭上にて拂上
  より切込打はつし
  て上より打を少し
  披きてはつし刀の
  柄にて打の刀を上
  より突落し打の
  引際え切先を左の手
  を添冠りて左の足
  を踏込付入又足を
  つり替て打の小手
  を上より留て八相
  に取る打踏込て腰車
  を打時右を一歩引
  て上より向の小手
  を切て又振上る打
  又踏込て右の腰車
  を打時又左を一歩
  引て上より向の左
  小手を切打又打ん
  と振上る下より切
  先を向の両眼え付
  て進む打二歩斗り
  引て逃す時左の足

  を向え踏出て刀を
  後え引返す打又上
  より打を腰をひねり
  下よりすくひ上る
  よふに小耳に受て
  切留逆掴の如く刀
  をかつき勝身

右二拾八本表手數
遣方圖の如く錬磨
肝要たるへき者也

− 1 −

取合表手數拾七手

 真影山流取合

   表取合拾七手

一 片手取  三手
 一 打右の拳を上て
   頭を打を身を沈
   右の手にて手首
   を取左の手を肱
   え掛左の足にて
   向の右膝を踏拂
   前え引倒す
 一 同打を同取左の
   足を前え踏込左
   の手にて向の足
   を拂右膝を突て
   かつき投
 一 同打を身を沈め
   左にて取右足を
   飛込右の手にて
   向の右足を取仰
   に返し堅め

一 両手取  二手
 一 立向右にて向の
   右の手を取上左
   を下より遣左の
   手を取前え捻り
   倒す
 一 立向両手にて向
   の両手を取横に
   返か投堅め

一 岩石落  二手
 一 後より行両手に
   て向の両足を取
   頭を腰え當前え
   突倒す
 一 行違なから右の
   手にて向の右の
   手を取捻上なか
   ら左にて足を拂
   前え引倒す

一 後取   二手
 一 打後より組付を
   肱を張身を沈て
   逃し向の両手を
   取右足を向の左
   より後え抜前え
   引倒す
 一 同組を同逃し右
   の手にて向の右
   の手を取右の方
   え抜なから左に
   て右の足を取前
   え引伏る

一 腰車
   立向右にて向の
   帯を取左腮え
   掛仰に押倒す

一 追掛取  二手
 一 後より右にてのと
   を取左にて左脇

   の帯を取れたる
   時左にて帯を取
   たる手を上より
   取右にて咽を取
   たる手を取捻放
   左の膝を突て上
   より前え投出す
 一 打右にて胸を取
   を左にて捻放し
   右を向の腮え掛
   押掛て押倒す

一 霞
   後より両眼を塞
   れたるを両手に
   て両の手首を取
   直にかつき前え
   投出す

一 捨身
   立向両手にて帯
   を取打肩え手を
   掛押所を其侭仰
   に返り腹の上よ
   り落し堅め

一 五倫碎
   打両手にて帯を
   取を左にて向の
   左の手首を取右
   にて肱を取捻り
   倒す

一 壹つ足
   立向左にて向の
   右の手を取右足
   にて蹶るを打左
   の手にて其足を
   取時右の手を肱
   え掛横に返りな
   から捻り倒す

一 向詰
   打刀を抜付る時
   右の手にて拳を
   取すくに脇の下
   よりくゝり向え
   抜なから足首を
   左にて取上後の
   方え返し投引伏
   堅め

右拾七手附屬の
取合表手數也

− 2 −

陰手數貮拾八本(居合拾四本/立合拾四本)

 真影山流居合陰手數

   陰勝身貮拾八本
   之内居合拾四本

一 乱抜
   鞘からみに表の如
   く小歩に抜合せて
   合と否向の太刀を
   打拂柄え左の手を
   添鐺にて突身に摺
   足にて入勝身

一 乱鞘
   表の如く抜付るを
   表の如く受すくに
   摺足にて進左の手
   を摺込突倒勝身

右二本の勝身は免許
傳授の節に外相傳不
仕事に先師より申傳の
由に候所如何様の故
に候哉不分に候得共
申傳に付記置畢


一 〆鞘
   表の如く拳見當に
   抜合すくに飛込な
   から左の鞘を打の
   腕え掛押倒突身に
   取勝身


一 上鞘
   表の如く頭上の取
   にて受右の手を下
   より遣逆手に向の
   右の手首を取手前
   え引付るように引
   〆左にて受たる侭
   向え押ひしき勝身

一 取合二刀 位詰
   表の如く抜合せ打
   八相に引所え合せ
   たる通刄を上にし
   て切先を両眼え付
   て摺足に進勝身

一 抜
   表の如く打を前え
   飛違よふに抜けて
   抜打に両腕を上よ
   り切落す

一 引外
   表の如く抜合柄を
   取に来るを腰にて
   披き小手を切落す

一 蜻蛉
   表の如く振合打太
   刀を冠り入所を鍔
   にて突拂へ後え其
   侭にて飛除首を切

   巻て切なり

一 蜻蛉崩
   表の如く抜流に受
   左にて向の拳を打
   拂真向を切

一 間抜
   表の如く仕掛て打
   を披き右の足にて
   打太刀を踏落し抜
   付に打の両腕を切
   拂ふ

一 巻打
   表の如く鞘からみ
   に抜合せ合とすく
   に巻て向の握りを
   打なから進て腮見
   當に突身

一 小手抜問答
   表の如く抜合小手
   を取れるとすくに
   左の手の鞘を向の
   小手え掛腮を目當
   に左の足を踏込な
   から鞘にて摺込て
   押倒す直に突身

一 小手詰  位詰
   表の如く抜合引所
   えすらつと脇備に

   入なり

一 逆刀
   表の如くすくい受
   すくに鐺にて両眼
   を突よふにすり込
   胸え當て左の膝を
   披き後え打倒す

   立合勝身拾四本

一 虎尾
   表の如く出塩合に
   て早足に進鐺にて
   脇腹を突押倒す

一 乱拍子
   表の如く受左の鞘
   持たる手にて打の
   拳を打拂ふよふに
   披き真向を切なり

一 諸鍔
   表の如く抜合上よ
   り打を左の刀を小
   鬢の所え上柄にて
   受なから右の脇差
   にて向の小手を巻
   打に切落す

一 行違
   表の如く出行違なか
   左の足にて後さ
   まに踏倒抜なり

一 両塞
   表の如くに出打時
   右の方え逃して持
   たる刀にて真向を
   打なり鍔にて打也

一 鍔摺

   表の如く抜合同鍔
   にて受るとすくに
   身を進めて真向目
   當に摺落す

一 向詰
   表の如く抜合下段
   に進上より打込時
   右の膝を前足え寄
   膝を突て逃しなか
   ら突身

一 逆抜
   表の如く抜拂時右
   の手にて刀を逆手
   に持右足を踏込て
   切先向の両眼の間
   え付て抜込打飛違
   て打を右の刀を持
   たる手を左の小鬢
   え引付て受すくに
   摺込なから太刀を
   捨向の右の手首え
   移り左の手にて左
   を取向えくゝり抜
   捻倒す

一 逆掴
   表の如く抜打にし
   上より打時右足を
   左脇え少寄左の膝
   突なから抜け刀を
   身に引付て突身


一 拊刀
   表の如頭を受ると
   すくに打太刀を摺
   落し左の足を打の
   後え進胸の所え鐺
   を當後えしをり投
   すり込は両眼見當
   に摺込なり

一 二段詰
   表の如く抜合同受
   すくに身を進めて
   真向え摺落しなか
   らすり込なり

一 諸打
   表の如く抜合諸鍔
   お如く切又引返し
   首を打を逆流に受
   小手を切落す

一 引詰
   表の如く抜込一歩
   引流に受左の手に
   て向の拳を上より
   取捻上なから刀を
   捨右にて向の左の
   手を取右足を飛込
   かつき投
    投つに左の手にて向の太刀
    を打拂てもよし

一 柄嫌
   表の如く受摺込を
   打迯して八相に引
   時頭上にて鞘を迯
   し上より切込又迯
   して上より打を身
   を披き抜け柄頭に
   て向の拳を上より
   突落す打八相に引
   所え切先え左の手
   を添冠て左の足を
   踏込て入又足を立
   替て小手を留る打
   飛違て腰を打を一
   歩引て上より向の
   右の腕を切打又振
   上て右の腰を打を
   左を一歩引て又上
   より向の左の小手
   を切打振上る所を
   下より切先眼中
   え付る打二歩三歩
   引時太刀を後え引
   返して見せる打虚
   に乗て真向え打込
   時腰を捻りなから
   下より拂上るよふ
   に太刀をすくい上
   小耳え引付て受す
   くに身を進めて向
   の真向え摺り落す

右拾四本立合陰勝身

と云

表手數二十八本并
陰手數二十八本を
よく練熟すへし猶
柄嫌は進退應變
の自在虚々實々
の太刀捌悉皆備り
たる太刀也此太刀
を遣得る時は事[わざ]は
大抵尽せりと云ん
力能々工夫練磨
熟達専要たる
へきものなり

− 3 −

取合陰手數(居組/居組柄取/立合柄取/張合之巻)

 真影山流取合陰手數

   居組拾手

一 向詰
   向合坐付両手を
   突居るを右の膝
   立なから右にて
   右の手を取下よ
   り左を遣脇指の
   遣を逆手に取腕
   え掛押ひしく

一 状取   二手
   向合右の手にて
   状を出を右にて
   手首を取左を肱
   え掛左の膝を立
   前え捻倒す
 一 同居左の手にて
   出を左にて手首
   取右を二の腕え
   掛前え引伏る

一 使者取  二手
 一 両手を突居を右
   にて右の手を取
   左を肱え掛左の
   膝を立前え捻り
   倒す
 一 同居るを左にて
   右の手を取右を
   腮え掛右足を踏

   込なから押倒す

一 坐配取  三手
 一 膝え両手を上居
   を右にて右の手
   を取なから左の
   膝を立後え廻り
   後より腮を〆膝
   え背を當後え引
   返す
 一 同居るを両手に
   て右の手のこふ
   を取逆に捻り上
   て仰に返す
 一 同居るを両手に
   て左の手首を取
   右膝を立前え捻
   伏る

一 太刀殺  二手
   坐付居取え歩行
   を抜付に足を拂
   時太刀を飛越左
   にて太刀を持手
   首を取右を腮え
   掛押倒す
 一 同行を高く抜付
   る時右を伸て拳
   を取より早く左
   の足を飛込左を
   逆に腮え掛後え
   返す

   同居組柄組 五手

一 小手取 二手
   向合脇指の柄え
   手を掛るを両手
   にて肱を上左の
   足にて膝を蹶拂
   引倒す
 一 同柄え手を掛る
   時右の膝立なか
   ら右にて拳を取
   左を肱え掛るを
   振拂よふに抜時
   抜出侭に身を引
   なから引倒す

一 柄取   二手
   同柄え手を掛る
   時左にて柄頭を
   逆手に取右にて
   拳を取もき放し
   すくに柄を肱え
   拂押ひしく
 一 同手を掛る時左
   にて手首を取右
   にて下より拳を
   取空え抜せて仰
   に捻倒す

一 大渡
   右の膝立抜付る
   時右にて拳を柄
   侭取すくに左を

   添其侭左の方え
   横に返り捻倒し
   起直り堅め


   立合柄取 三手

一 八方搦
   立向刀の柄え手
   を掛る時右にて
   柄頭を取早足に
   後え廻り左にて
   鐺を取しほり投

一 朽木返
   同手を掛る時左
   にて柄を取右に
   て右足を取仰に
   返す

一 搦取
   同手を掛る時右
   にて手首を
   振拂ふよふに柄
   にて拂時右を放
   左にて鞘持たる
   左の手首を取て
   早足に後え廻り
   なから鐺を取肱
   え掛引廻なから
   押倒す

   張合之巻

一 
 一 立向右に胸を取
   を左にて手首を
   取右にて胸を突
   其侭右の足首を
   取仰に返す
 一 同取を両手にて
   手首を取逆に捻
   放しすくに下を
   く々り投
 一 同取を左にて帯
   を取右を腮え掛
   仰に押返す
 一 左にて胸を取右
   にて脇指を抜ん
   とするを左にて
   左の旨取たる手
   首を取右にて向
   の柄を逆手に取
   右え一捻り捻り
   はつみをくれ直
   に左を向なから
   胸取たる手をも
   き放し肱え柄を
   掛引倒す
 一 両手にて取を左
   にて腮を取右にて
   たふさを取右の
   方え投倒す

− 4 −

真影山流居合目録之巻

 真影山流居合目録之巻

   真影山流居合起證
   文前書之事

一 御相傳之通他人者
  不及申雖為親子兄弟
  他見他言仕間敷事
一 他流批判申間敷事
一 唯授壹人之事
一 對師有悪心間敷事
一 雖為相学依器用極
  意御相傳前後之恨
  有間敷事
一 相弟子中にて善悪之
  口論仕間敷事
一 當流居合不審於有
  之者心底不残尋可
  申候無左野心之批
  判申間敷事

右之條々於相背者

梵天帝釋四大天王惣而
日本六拾餘刕大小之
神祇當所鎮守并主
生國氏神八幡大菩薩
天満大自在天神部類
眷属神罰冥罰可相
蒙者也依而起證文
如件

   重而
   起證文前書之事

一 當流居合不残御相傳忝
  奉存候事
一 貴人又者禮物等にて為身
  之勝身相傳仕間敷事
   附卑賤同前之事
一 手詰之極意御免無之
  弟子えは相傳仕間敷事
一 御許容已後無指圖
  抜申間敷事
一 唯授一人之外老人於
  執心者勝身可有御免事

  誓詞右同断

   表太刀數手詰之覺
一 向剱 三本
一 右剱 三本
一 左剱 三本

   本段拾五ヶ條
一 仕組 三本  一 同替 三本
一 手詰 九本

   免許
一 向剱   一 右剱
一 左剱   一 仕組
一 摺足   一 中太刀
一 移之大事 一 擬之大事
一 車輪   一 脇差一二之大事
一 多勢   一 無明雲

一 聲之大事 一 兆
一 動之大事 一 一二之大事
一 心 口傳

   同免許
一 真明剱  一 玉明剱
一 車留   一 勝明剱
一 真入釼  一 天車
一 位詰   一 發刀剱
一 闇隠   一 中腰

   九傳之勝太刀構え
一 付   天車  光常
  無明  直至  三當
  見〆  玉簾  下段

  外に
一 霞   一 清眼
一 早 口傳


   卯可之巻
一 身強釼  一 水月
一 三之大事 一 合太刀
一 摺    一 兆
一 放前   一 入合之釼
一 満字 口傳
   已上

一 大巻并唯授一人之事

  以上

右一巻御執心不浅に付令相傳畢
猶御吟味可為肝要者也依
許状如件

   ─────重判
年号
 月日
 ───殿

− 5 −

目録手數(居合九本/本段拾五ヶ條)

 真影山流居合
   目録手數居合九本

一 向剱 三本 間積り六尺
 一 對坐して居敵抜
   付る時左の膝を
   後え披きなから
   拳を目當に抜合
   振上る所え引冠
   り切先え左の手
   を添左を飛込て
   突身に入突倒
 一 右の膝立抜合せ
   振上て上より打
   を順に巻打に頭
   を切 受は流受
      なり
 一 同抜合同打を逆
   に巻打に頭切也
   受は逆流に受るなり

一 右剱 三本
 一 對坐して居敵抜
   付る時左膝を後
   え披き拳目當に
   抜合振上打を引
   冠り左の足を飛
   込受すくに突身
   に入
 一 對坐して脇指を
   右の脇え取置敵
   抜打に上より打
   時右の手にて脇

   指の栗形の所を
   持右膝を後え披
   右の小鬢え付て
   柄にて受る敵引
   返て左の膝を打
   時右の膝立なか
   ら打落すよふに
   柄にて留る敵振
   上る所え中腰に
   抜込
 一 脇指を左え置時
   同打を左の手に
   て脇指の栗形本
   を持左膝を後え
   披き左の小髪え
   付柄にて受る敵
   引返て右の腰を
   打を左の膝を立
   上より柄にて打
   ひしく敵振上る
   所え中腰に抜込

一 左剱 三本
 一 對坐して居右の
   膝を立抜合ると
   直に引冠り入を
   敵引返て左の脇
   を打時飛違て小
   手を切落す
 一 同居刀を左にて
   取左の膝を後え
   披き脇指にて抜
   合敵振上打時左

   を踏込脇指にて
   流に受なから左
   の刀の柄にて敵
   の拳を打拂脇指
   にて真向を切
 一 同居右の膝を立
   脇指にて抜合る
   敵左の足を踏込
   刀を突身に取小
   手を取んとする
   時手を取せなか
   ら左を踏込左の
   手にて敵ののと
   つか
   掴み向え仰に押
   倒す

  本段拾五ヶ條

   居合六本

一 仕組 三本

  大小詰
 一 對坐して左にて
   刀を取右膝を立
   脇指にて抜合る
   柄にて敵の小手
   を上より留る敵
   迯[はつ]して振上る時
   陰の諸鍔に入突
   身

  鞘詰
 一 同く居右の膝立
   脇指にて抜合る
   とすくに左を飛
   込脇指を突身に
   取鞘にて脇を突
   鐺にて突也

  拂切
 一 同く抜合敵振上
   て内より小手か
   らみに膝を拂時
   足は立たる侭に
   腰にて披き右の
   方より巻て両腕
   を切落す

一 同替 三本

  柄返
 一 同く居敵抜打に
   打を右の脇え置
   たる脇指を右に
   て取両塞の如く
   右の膝を立拳を
   目當に受留直に
   突返す

  早足勝
 一 同く抜打に打を
   表抜の如く迯[はつ]
   し右にて敵の拳
   鍔元を取左にて
   脇指を鞘の侭抜
   柄を敵の拳え掛
   左を踏込なから
   押切太刀を取返す

  一文字
 一 同く居刀を左え
   持右膝を立抜合
   敵振上る所え左
   を踏込左の刀を
   表上鞘の如く額
   え付脇指を突身
   に取入込突倒

   立合九本

一 手詰 九本


  突身
 一 立向諸鍔に抜合
   敵上より打時陰
   の諸鍔の如く入
   突身

  十文字
 一 同く抜合敵振上
   る所え十文字に
   入 膝は立候共突候共時宜
     次第なり

  逆受
 一 刀を鞘の侭右え
   下敵八相に取て
   する々と出上よ
   り打を左向の逆
   刀に受摺込也

  拊刀
 一 拊刀の如く相方
   より出同く受右
   の足を踏込押返
   すよふに上より
   返し鍔にて頭を
   打

  小手留
 一 立向諸鍔に抜合
   敵振上打時左を
   踏込左の刀の柄
   を敵の腕え掛留

   右の脇指にて突
   身 膝は立るも突も時宜
     次第なり

  中腰
 一 敵八相に取する々
   と出打を大小指
   たる侭立向中腰
   に抜込

  鍔留
 一 同打を指たる刀
   の柄にて受留右
   足を踏込脇指を
   脇壷え抜込

  柄取
 一 大小指立向敵両
   手にて大小の柄
   を取時右にて敵
   の右の手首を取
   左を遣し敵の左
   の二の腕を取左
   を踏込右膝を突
   投倒す

  左右之捨
 一 敵左右の車にて
   来る時刀を左え
   下敵の歩を見合
   出向上より打を
   右を踏込右にて
   鐺を持引冠て受

   すくに左を踏込
   打返すよふに鍔
   にて真向を打

− 6 −

取合目録手數 行違之巻

 真影山流之取合目録手數

   行違之巻

一 腰車  三手
   行違後より腰を抱
   敵振放す時両足
   をさらへ前え突
   倒す
 一 同行違なから左
   にて右の手を取
   上下をくゝり右
   にてえりからみを
   取背負投
 一 同行違時右にて
   右の手首を取左
   にて肱を取左の
   足にて腰を蹶放
   引倒す

一 小手乱 二手
 一 左の方を行違両
   手にて左の手を
   取逆に上て捻り
   倒す
 一 右を行違右にて
   右の手を取後え
   廻り左にて腮を
   〆左の膝にてし
   ほり投

一 
  行違後より襟を

  取背骨を蹶打返

一 袖搦
  後より両袖口を
  取手からみ組し
  たる時両肱を張
  中よりつかみ捨
  身をくれ投る

   立合柄取

一 小車
  大小指立向敵抜打
  にするを中腰に受
  左にて柄を手から
  み上より取太刀を
  捨右にて腮を取捻
  倒す

一 岩石落
  上より打を中腰に
  受左にて拳を取上
  下より右を指込肩
  を取右足を踏込肩
  無雙に前え投倒

一 浮舟
  同打を同受左にて
  拳を取右を膝左の
  足引なから捻り引
  倒す

   小具足


一 爪取
  敵左の膝立左の手
  にて胸を取右にて
  脇指を首え押當た
  る時右にて刄持た
  る右の手首を取左
  を肱え掛左の方え
  返り投
   投る時押上て頭上より
   迯し起返り堅るなり

一 披取
  同取脇指を突付た
  る時右にて左の手
  首を取左にて刄の
  平を打拂二の腕え
  移り返り投

一 打くけ
  左にて胸を取右を
  柄え掛たる時右に
  て柄え掛たる手を
  取留左の膝立左に
  て胸を打後え返す

一 抜詰
  右膝を立抜付る時
  右の膝立右にて拳
  を取左にて右の足
  首を取引伏る

一 上返

  同抜付るを身を沈
  めくゝり左にて拳
  を取右にて足首を
  取右膝を立仰に返

   伏太刀之事

一 二刀詰
  仰に寝たる時上え
  跨り大小を抜首を
  挟たるを両手にて
  両手首を取押上敵
  りきむ時膝にて陰
  嚢え當り枕元え倒
  下より抜る
一 同立なから挟まれ
  たる時は枕にて抑
  跨をくゝり後え抜
  両足を取前え突倒

一 枕定
  上え乗掛り刄を胸
  え突付たる時左の
  手にて刄を拂右に
  て敵の右肩を掴み
  仰に引倒す

一 抜詰
  上より乗掛り刀を
  首え押當し時左の
  手にて拳を取右に
  て刄のむねを取平
  に返し右の手え移

  り捻返す

右取合小具足より已上
は免許傳来前は相傳
申間敷由 先師より
段々申傳置候に付
此所え書記置畢

− 7 −

真影山流居合免許目録

 真影山流居合免許

   目録

一 向剱   一 右剱
一 左剱   一 仕組
一 摺足   一 中太刀
一 移之大事 一 擬之大事
一 車輪   一 脇差一二之大事
一 多勢   一 無明雲
一 聲之大事 一 兆
一 動之大事 一 一二之大事
一 心 口傳  卍

  居合とは人に切れつ人切らつ
   只をたやかに抜留てをけ

  居合とは飛いなつまの如くにて
   立と其まゝ勝利なりけり

右此一巻と末書名判可致事

− 8 −

免許手數壹巻拾三本

   免許手數

一 向剱 間積り四尺
  對坐して敵抜掛る
  いなや抜合せ合と
  すくに突身 膝立ることは
        時宜次第也

一 右剱
  同抜合敵突身入ん
  とする所を小手搦
  に切留て突身

一 左剱
  敵抜付る時右膝を
  後え披左膝を敵え
  寄下より抜込突身

一 仕組
  敵戸の陰に居打掛
  るを刀を右え下て
  行柄にて受左の足
  を飛込引冠鐺にて
  突身

一 摺足
  敵八相え大小指た
  る侭にて双方より
  走懸り上より打時
  右の方え太刀の下
  をくゝり抜け左の
  膝にて陰嚢え當る

一 中太刀
  表両塞の如く出敵
  上より打を柄にて
  左右の手の間より
  すくい込すくに引
  冠り鐺にて突身

一 移之大事
  敵八相え大小指走
  懸り場合にて上よ
  り打時右足を左え
  踏込抜け右にて拳
  え移り捻倒す

一 擬之大事
  表両塞に受左を踏
  込鐺にて拳を打

一 車輪
  敵左右にて大小の
  柄を取を同敵の拳
  を柄搦に取押ひしく

一 脇指一二之大事
  大小指走懸り上よ
  り打を脇指の柄に
  て受左にて敵の柄
  を取向え押付る

一 多勢
  双方より走掛り敵
  抜打にするを身を
  しつめ左の足を右

  え踏込て抜け左に
  て上より拳を取右
  にて脇指を逆手に
  抜突身

一 無明雲
  敵陰に隠れ居棒に
  て足を打を左の方
  ならは左足にて踏
  付右の方ならは右
  の足にて踏付飛違
  て抜付る

一 聲之太刀
  敵左右にて大小の
  柄を取時同く左右
  にて脇より柄頭を
  取下え押下なから
  左右え披き内え引
  返す

一 口傳

右拾三本の手數免許
壹巻眞明剱以下を
同壹本と貮巻に致候
趣意不分に候仍て
此度吟味の上壹巻に
相改候事

− 9 −

免許手數貮巻拾本

   同免許手數

一 真明剱 真明と云は心明なりと
      云心なり
  敵八相の所え何に
  ても手に持たる道
  具にて立向上より
  打を高く受るなり
  卍の形也居合立合
  共に同然なり敵柄
  を取は手前え引下
  切先え手を掛押ひ
  しくへし取つは受
  るとすくに突也

一 玉明剱
  両塞の如く出上よ
  り打時身をしつめ
  片膝突て敵の両手
  の間より刀の柄に
  て両眼の間を見當
  に突なり

一 車留
  敵中段下捨にて来
  る時大小指立向ふ
  下捨は上より打も
  の也大小の内を敵
  の脇壷見當に抜込
  鞘を張  中腰なり

一 勝明剱
  立向抜合敵の振上

  頭に左の方え身を
  除なから取上の小
  手を切落す 勝所は其人
        の妙なり

一 真入剱
  敵八相え大小を指
  双方より走掛り場
  合にて敵に左え小
  歩を遣見せ却て右
  え抜け左にて敵の
  打込たる小手を取
  右にて首を掴み押
  付なから捻返す

一 天車
  太刀を頭上え立て
  刄を内にし柄をか
  い込ように取事也
  同構にて出打下る
  所え中腰の如くに
  仕込なり又脇え抜
  脇指にて抜打に切
  もよし 天車は上より打を
      主とする太刀なり

一 位詰  至極に位を取て
      遣太刀なり
  敵中段え下段に取
  詰寄塩合にて右え
  小歩を遣上より打
  時左え抜け左の足
  を踏込小手搦首を

  切

一 發刀剱 發[をこ]りを見る太刀也
  敵上段え下段にて
  詰寄敵の動くまて
  静に詰行敵上より
  打時右の小耳えす
  くふ如く受留直に
  突也  留る所は水月也

一 闇陰  陰し下捨は太刀を
      後え廻下て持事也
      上か脇より打太刀也
  敵陰し下捨にて来
  大小指立向上より
  打を刀の柄にて受
  脇指を抜込突身
  脇より打は柄にて
  上より留へし

一 中腰
  脇指にても刀にて
  も同然なり抜と直
  に突なり 中腰は
  心のすはる所也
         わさ
  躰の中より出る事
  なり心て抜て心え
  納る是則其本え歸
  る也是を中腰と云

  以上
    外に口傳書有

− 10 −

太刀構/入身構/小太刀構

 真影山流居合太刀構

一 付   敵の模様を見る太刀也
  右足を踏出手を伸
  切先を敵の両眼の
  間え付て取太刀也

一 天車  敵の色を見るなり
      紅葉の目付と云
  頭上え太刀を真直
  に立て一足に立て
  取太刀也

一 光常  眼間を打の目付也
      眼間の目付と云
  左の足を踏出太刀
  を左の乳の下え引
  付て取太刀也

一 無明  敵の左の肱を打心也
      ゆるき
      揺の目付と云
  左の足を踏出太刀
  を後え廻し切先を
  下て上身懸に成て
  取太刀也

一 直至
  右足を踏出太刀を
  右の肩えかつく様
  にねせて取太刀也

一 三當  向剱右剱左剱を

      以手の中とす
  直至の少し上りた
  る太刀也上中下段
  合て三當と云

一 見〆  敵の胸え心を留る也
      満字の目付と云
  右の足を踏出切先
  を向え出し胸え引
  付平めて取太刀也

一 玉簾  敵の太刀の真中え合る
      心の太刀也剱當の目付
      と云
  右足を踏出切先を
  下柄を左の乳の下
  え引付て取太刀也
   但左の手を披柄え添る玉簾也

一 下段  無の目付と云
      下段よりは目付なしに
      見える故無と云なり
 太刀を下て取事也

  右足を出時は切先を下て手
  元は膝臺に取
  左足を出時は切先を上て
  手元膝より下て取

右九つの構を九傳の勝太刀と云

  外に

一 霞
  陰に立手を結ひ眼の下え引付
  切先を向に出取太刀也

一 清眼
  付の如く手を伸太刀を平めて
  取太刀也裏の時は手を結ふ

一 早  打とすくに取合に
    掛る太刀也
  切先下りに首え引掛太刀を
  後え廻して取太刀也左の手は
  柄え添る表裏共同し

一 一刀先之事
  是は教にもなく習にもなく
  自然執業の妙所より
  出るなり

 真影山流入身構之事

一 陰
  大小を叉に組冠て詰寄
  る也左右の脇の外打所無
  構也脇を打時上よりひし
  き留て突身

一 乕尾
  表の如く構仕掛るなり
  上より打は替て留脇より
  打は刀を張へし打つに引
  時は冠て入へし

一 瀧流
  表諸鍔の如く構仕掛行
  場合にて脇備に替るなり
  敵動つは替りなから切
  込動きえ付入へし替頭を
  打は  二受付入也

一 小手添
  真身に成小太刀を下て
  仕掛行上より打は小太刀
  にて右の小耳え受左にて
  留る

一 鎗留
  半身に成切留の形に構て
  除々と仕掛る變化自在也

右五本當流入身の構
追年有相違間敷事

   小太刀構之事

一 小太刀は一足に立平清眼
  に取速に進へし立留る
  所負と心得へし

− 11 −

兵法免許口傳

 真影山流居合兵法免許

   口傳

一 兆
  氣指とは人の氣を見ること也
  譬は闇討撫の如く後より
  聲なしに討る々時敵の氣
  我心に眼在時は写つと云
  事なし写るは則水月也
  兆は色に現れ目に現れ不見
  と云こと無もの也

一 動之大事
  動とは業の生出る所を云也
  心正き時は上より打とも下
  より薙とも見さることなし
  見る時は前後左右働自在
  なり敵右より働は左より合
  左より働は右より合せて
  早く太刀の方より入事専
  心懸へし

一 一二之大事
  一二とは立合所か一足を踏
  出所か二也又勝負の所に
  一二在受留るか一受るより
  早く切返すか二也立合の
  時位を見定め虚を見て
  進み是を一二の大事と云

一 心
  心は心にて外に品なく候只

  心を正くするの工夫也

一 けんさんの目付之事
  向て見ることを云真向をけんさん
  と云敵上目遣する時は下より
  發ると知へし下目にするは上より
  をこると知へし

一 眼間之目付
  敵右え目遣する時は左より打
  懸へし左え目を遣は右より
  懸るへし敵の業を留るなり
  目の間え心を付る故に眼間の
  目付と云

一 入身之事
  太刀の時は立合て敵の虚有は
  打込てすくに入へし虚な
  くは静に詰寄へし何れに
  切先え左の手を添冠つて
  入込事肝要と心へし
  一刀の入身を大一とする也

一 二刀の入身は場合にて
  小太刀を投掛敵の動く
  虚え左の刀を中腰に抜込
  勝事大一也

一 敵中段の付にて来る時は
  小太刀を投掛替る所の虚
  え抜込へし

一 下段同く心得へし


一 上段にて来る時場合にて
  早く付込へし又小太刀を
  打掛て抜込もよし

一 陰叉にて行時腹を打は
  叉にて押懸留へし

一 小太刀下て行時敵打は
  受ると刀は捨て手を小太刀
  え添て突留へし

一 瀧流にて行時右の脇より
  打は刀を下よりひしき
  打へし

一 虎尾にて行時敵打は
  替るへし此構は替れは受
  る構也

一 大小指ての入身は抜受也
  場合にて抜込事大一也
  合とすくに突也

一 抜付は常々稽古の時より
  五六寸も踏込て抜付へし
  居合立合共同し

一 何れの構にても付にて
  懸る也敵滞り猶豫し
  て来る時は付へからつ
  悠々と来るか速に来る
  には付て勝也


一 打は明間をかそへ滞りの
  なきよふ打也打より
  早く引ては打々々絶えぬ
  よふに業の發動する
  所を見せさるよふに打
  事専要也

一 抜付之事
  抜留てをけ也外に品も
  なく候

一 七五三之事
  稽古始の節抜也免許以上
  大小共指料真剱にて抜也
  免許已下稽古大小にて抜掟也

一 中腰之事
  當流の組手數皆中腰より出
  平生心掛稽古すへき事也
  居ても立ても中腰也鍔元
  目當に抜込へし合とすくに
  突か取か也
  立て抜事も在居て抜事
  も在逆に抜事も在上より
  抜下る事も在也皆中腰
  の位也前後左右に氣を
  通つるを元とする也
  心て抜て心に歸る是を
  中腰と云也
  稽古の時は臺え向躰をすへ心を
  静左右え披き夫より手を掛
  下より抜上鞘を張也


一 坐中働之事
   敵左より立時は右より
   立へし右より立時は左
   より立へき事
 一 脇指を置に身え引付て
   置は悪し急に取時必取
   逃す物也少し放して
   弓の如く置もの也刀
   も同然なり
 一 枕元え脇指を置に常々
   ならひ昼寝撫の時扇を
   披き下え下緒を敷其上
   え肱枕にするか能候事
 一 疊を蹶立て楯に取か又
   打掛て働事
 一 捕者する時は手に鉄の金
   を握り掛るへし握りたる
   鉄にて打か突かすれは
   敵弱る也鉄は握り程
   の丸棒に拵る也

一 枕屏風之事
   枕元えは屏風を立るものなり
   屏風なき時は行燈にても
   置へし忍入打時打苦敷
   もの也

一 木枕致間敷事
   切れる時下臺をして切
   れる同然にて悪し必々
   用さる事也

一 寝屋之大事
   かけかんとう共
   枕時斗共云
   
 一 寝屋え入伏時左の肱を突
   右の大指を握り無名指にて
   九字一篇唱枕元え犬と
   云字を圖の如く唱書其
   上え一を引寝候へは
   急變時目の覺る也

一 かんとう火之大事
 一 四方四角の筥一方を明
   内え燈火を付火先の明
   たる方を向にして枕元
   え置敵に逢時はすくに
   かんとふに用る也
 一 行燈え衣裳か羽織を
   手前の方と両脇え廻て
   掛向を明置枕元え置は
   手前は見えつ向き見え
   る物也

一 朝夕飯食之節心得之事
 一 食物に毒入しを知には左の
   手の中指を折疊え付て
   置外の指は立無名指を

   明へし中々明ぬもの也
   明時は必毒有と知へし
   右の法人に見せぬように
   試へし
       圖
        
 一 朝夕飲食の時器物
   を左の手に取器物の
   真中え無名指の先を
   當て持へし肱しひれ
   る時は動右え持替て
   拭へし同しひれる時は
   其内に毒有と知へし
   食へからつ

一 平日心掛之事
 一 肱俄にかゆく成時は
   難に會と知へし
 一 足の裏右同然の時は
   外出すへからつ

   右両條の節しきびの葉にて
   體を三度なて
   をんひら々けんひらけんのふそわかと
   三度唱あひらうんけんそわかと
   一度となへて大小をなてる也

 一 両肱俄にしひれる時は必定
   難に逢と知へし茶碗え水
   を入て中えいの字を書入
   指ゆひにて書也 圖

      
   あひらうんけんそわかと唱しきひ
   の葉にて掻廻し九字を唱
   左右の肱より指まて水を
   付慎むへし

 一 胸さわきする時は難
   に逢と知慎へし咽え左
   の人さし指を押付右の
   手にてしきひの葉を持
   咽より肩まて撫九字
   を唱へせんと云時手を
   下るなり

一 四寸縄之事 不入番とも云
   両手の大指を右真結にして
   首え打越両腕の間え棒
   か竹にて通し置は動事
   成ぬもの也糸五寸にて
   間に合也

一 人に出會時心掛之事
   外より取騒きて六ヶしく
   来る時脇指の反を返し
   て出會へし常々共に
   押込て指應對すへし

一 戸出戸入之事

   戸口を出入するには常
   々油断なく心を付戸の
   に陰人の有無を探り
   知へし尤戸を明るには
   明る方え身を寄て明
   静に出入すへし

一 大小抜見る心得之事
   外出する毎に大小抜て
   見る物也抜時は刄を内に
   して抜見る也汗はみた
   る時は難に逢と知へし
   右の大指を握り込て
   九字を唱握りたる指
   を柄頭え當て納る
   又九字を唱鞘を撫て
   置へし
 一 脇指に曇り在は坐中
   の災と知心を付へし
 一 刀曇り有は外にて災
   有と知外出すへか
   らつ

一 早ねた刄之事
   鞘の上より峯の方を
   九字を唱撫て指也ね
   た刄合ると同然也常に
   九字無に撫て指へし

一 喧敷時之事
   外にて騒動しき時夜中
   は行燈を消障子の敷
   居え錐又は小柄火箸

   の類を指置へし旅中
   には常々右の通心懸
   へし

一 夜中闇にて湯水呑時之事
   茶碗え白紙を蓋に
   し九字を唱右の薬指
   にて穴を明て呑也

一 小口留を解法
   小口を留られしと思時
   九字を一篇唱なから
   大指にて小口をくつろ
   けて置也

一 留九字之事
   留九字は上をそき下の
   方四角なかさは大指
   より人さし指の二のふし
   まて  

一 血留之事
   紙を疊なからみ返
  血の道はちふさの神の血の道よ
   血の道留よ血のふさの神と
   唱て付る也血留る也

一 鼻血留之事
   同紙を疊て歌
   北は黄に東は青く南白
   西紅にそめいろの山とし

   返唱る也常の血留の歌

   にてもよし鼻え入置

一 川之瀬を見る事
   椀え油を塗火を付流
   して見る物也常に油を
   塗て付置へし

一 草鞋はらんし之事
   わらんちの紐は人さし
   指より肱までの長さ
   にてよき物也

一 二人詰之事
   前後の敵を打には先に
   前の敵え仕掛却て引
   返し後を打前の敵は
   跡にて打もの也猶又
   時宜によるへし

 以上

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