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伯耆流居合の草稿

凡例
一 読み易さという観点から片仮名を平仮名にし、且つ改行・空白を入れ、各見出しに■・□を附すなどしました。私判断の区切りは動作の表現を損なうと考え句読点は打っていません。
一 旧字体・異体字は出来るかぎり原文のまゝ表記しました。但し「山+々」と書いて「出」、足偏を書かない「距・離」などは通用の文字に改めました。また、片仮名の合字も通用の文字に改めました。
一 抹消・改変、あるいは明らかな誤字・脱字・衍字についてはそのまゝ表記しました。但し本文の右傍・左傍に書かれた挿入すべき部分は前後の文脈や抹消部分とを見合わせ適宜本文に挿入しました。読み仮名には()を附して本文に挿入しました。また、抹消扱いでありながら抹消されていない箇所も多々見られたので、これらは抹消せずにそのまゝにしました。尤も文意を取り違える可能性が高いと判断した部分は[○○:抹消扱い]として抹消部文に含みました。
一 ●は管理人不読、[]は管理人註を示します。
一、目次の「A〜C」は、草稿の用紙や綴方によって執筆された段階ごとに分けたことを示します。同じ英文字は、同じ段階で執筆された草稿である可能性が高いと考えられます。

掲載史料及び参考資料
『肥後熊本藩星野家文書』私蔵文書

伯耆流居合 現在に於て実施しつゝある形の名称

■ 現在に於て実施しつゝある形の名称
 (當流利方目録の冒頭に記載しある手数は現在の分と相違するヶ所あるを以て更に茲に記載す)

□ 表
押抜  おさへぬき
小手切 こてぎり
切付  きりつけ
抜留  ぬきどめ
突留  つきどめ
四方金切 しほうかねきり

□ 中段
膝詰  ひさずめ
胸の刀 むねのかたな
追掛抜 おいかけぬき
返リ抜 かえりぬき
一作足 いっさそく
向詰  むこうづめ
長廊下 なかろうか
切先返 きっさきがえし
四方詰 しほうづめ

剣術 (居合に附属するもの)
□ 應変八極
正眼 臥龍 左龍 虎乱
右発 左拂 車  甲山
虎入

□ 居合八極変
圓波  相合  飛乱 乱波
虎掻  浦の波 逆波  逆面鷹
浮舟

□ 外物

居合利方目録 C 居合表五箇條 同裏五箇條



■ 居合利方目録
居合表五箇條 同裏五箇條
居合とは未発自己正道を守り衆人と向ひ居て心合ふの形なり
業にとりては平生油断なく正を守て若事の起ることあれは速に應するの術を示すものなり

下段
一 向の太刀 一 小手切 一 裏勝 一 押抜 一 磯之波

上段・中段
一 往合 一 還抜 一 左連 一 右連 一 追懸抜

□ 古格の切引何茂口傳
表五本の義は何れも磯波なれとも五行五常の道理を以て各向き違によりて殊四本は業の形によりて仮に名付けたり
五本目の磯之波是右[古]傳其侭なり其余は変に應して磯之波を用ゆる所なり五行に於ては土の位五常にをきては信の位を以て御工夫肝要なり

上中下三段表裏十五本にしたることは臨機應変の術を大概に分ち人に教ゆるに喩易ためにいたすものなり
元来は一本の磯波なり尤変に應して自在なる意にをきては必此一刀の術のみに限らす戦を久しくせす濁を跡に残さす勝て退く事速かなれは何れも磯の波の利方にして当流の格式をはずさぬ故に古格の切引何れも口傳と記し置きしものなり
是は畢竟久安久隆両代諸国江戸などに於て心持ありて交へ傳置きたるを後世まで懇に傳ふるなれは態々禁止するに及ばすとの傳来なり

□ 古格の切引何茂口傳
表五本の義は何れも磯浪なれとも五行五常の道理を以て各向きの違によりて殊四本は業の形によりて仮に名付けたるなり
五本目の磯の浪是右傳其侭なり其餘は変に應して磯の浪を用ゆる所なり五行に於ては土の位五常にをきては信の位を以て御工夫肝要なり

上中下三段表裏十五本にしたることは臨機應変の術を大概に分ち人に教ゆるに喩易ためにいたすものなり
元来は一本の磯浪なり尤変に應して自在なる意にをきては必此一刀の術のみに限らす戦を久しくせす濁を跡に残さす勝て退くこと速なれば何れも磯浪の利方にして当流の格式をはずさぬ故に古格の切引何れも口傳と記し置くものなり

居合術台抜 1 台抜をなさんとする場合

■ 居合術台抜
 目的

□ 台抜をなさんとする場合
抜台を所定の位置に持来し座台の短き方を前にし割竹を下段の両穴に充実する如く差入れる(巾五分 長三尺 割竹の方法)
 注意 以下の説明に当り抜台は単に台と称し台の右角及ひ左角と云うは向て台の右、左隅を云ふ

□ 台抜
木剣を右手にて持ち稍々水平にし栗形の上を握り台の前方約二間の処を距離へたてに木剣を両膝の前に出しつゝ座り両手を木剣と両膝の上に置きとの中間に手つき先師に一礼をなし

居合術台抜 2 下段:向ノ太刀 小手切 裏勝 押抜 磯之波 往合 還抜 左連 右連 追懸抜 上段



■ 居合台抜
  台抜台の位置の後
台抜をなさんとする場合は台抜台を所定の位置に持来し 座 台の短き方を我方にす(台は長短あるを以て長き方は後方背面にする)



□ 台抜を初める場合
  木剣を使用す
木剣を右手にて握り水平に持ち抜台の前方約二間の処にて座し居合刀の取扱に準し刀を木剣を膝の前に置き両手を膝の上に伸し更に木剣を取りて左腰に佩ひ更に右足より発進立ち発進して抜台の前方約一尺の処に座す二尺五寸の処に座し両手は両膝の上に置く

■ 下段

□ 向ノ太刀 仕方
刀を下に向け右足を右前に立て刀を抜きて下より中央に切付け刀を左肩の方へ廻しつゝ左足を立てゝ立ち刀を上にかえし切引をなし臥龍の構への侭持来し右、左足を引き右足を左足に引付けると同時に刀を右前に出し屈む(戻るときの臥龍の構へ以下動作仝し)

□ 小手切
台を後にして二尺を隔てゝ座す 右足を立て左膝右足を其侭軸として左膝を浮かせて前へ廻ると同時に下より抜打ち
次に刀を左よりかえして左肩の方向へ廻し立ちつゝ上より切引し臥龍の構への侭へ後方へ下り刀を納む

[上端メモ]
(右足を左膝と同線上に立て左膝を後に引き下より上に切付るか否か)

□ 裏勝
抜台の右方に座す 次に左足を抜台の左角に出す(此時左足先は敵の衣物を踏付ける処)右足を左足の稍々前方に踏出し右膝を立て左足を後に引き抜台の中央に下より切付け
次に左足を左足を立てると同時に右膝も伸して立上り上より切引し臥龍の構への侭後方へ下り刀を納める

□ 押抜
抜台の左に座す 次に右足を抜台の向つて右角に踏出し右足を軸とし左膝を右足の後方に移し次に下より切付け以下仝し

□ 磯之波
抜台の正面にありて規定の距離を取り右膝を立てゝ座す
次に右膝は其侭左膝を後方に引きつゝ下より上に切付ける以下仝し

□ 往合
抜台の前方約二尺の処に立ち向の太刀と同し動作をなす
(但し右足を出し左足を後方へ引くかは其侭にして抜くか右足は其侭左足を引いて抜くかは研究を要す)

□ 還抜
を後にして立つ 次に左の足を踏出し左足は其侭軸として左へ廻り右足を左足の前に踏出し下より切付く以下仝し

□ 左連
抜台の左側に立つ次に左の小足を抜台左角に踏出し更に右足を正面に踏込み左足を後に引き下より切付ける以下仝し

□ 右連
抜台の右側に立つ次に右足を抜台の右角前に踏出し左足を右足の前に踏出して正面に向直り下より切付ける以下仝し

□ 追掛抜
抜台より約三歩後方に下り次に右足より早足にて踏出し三歩目刀を抜き下より切付ける以下仝し

■ 上段は
往合
還抜
左連
右連
追懸抜 台より約三尺後方に下り次に右足より踏出し早足にて三歩目上より切引

居合術台抜 3 向ノ太刀 小手切 裏勢 押抜 磯之波 中段:往合 還抜 左連 右連 追懸抜 上段



[□ 向ノ太刀]
右手にて木剣栗方の上を右手にて握り握りて刄を上にし稍々水平にし台の前方約一間の処にをへだてゝ隔て木剣を膝の前方八寸の処に置き右手を両膝の前に来る如くし刄の方を我へ向け地上約八寸の処に置く刀の方を左へ置き 欛の方を左にし を我方に向け次に両手を両膝の上に置き先師に対し禮をなす(先師の御眞影なき場合は正面に高貴の人の着座ありしものとして禮をなす)
次に元の位置に復し木剣を右手にて栗形の上を握り右膝の前に刄を我方に立て左親指にて袴の紐二筋帯一筋の間に挿入れ木剣を刄を上にして指す準備をなし終りて木剱を左腰準備の位置に刄を上にして指し次に両手を両膝の上に置く左手の親指にて鍔を上より押へ右足左足の順序に立上り台の前約三尺木剣の処に着座す
而して両手を両膝の上に置く次に左手親指にて鍔を押へ腰を立て両膝両爪先を立て右足を一歩右前に踏み出すと同時に木剣の刄の方を下に向け木剣を少し前に出し左肩を少しく左に下け刀を鞘を後に引くと同時に右手を前に急速に伸し抜き割竹の中間下方に切付く
次に右手の刀先を左肩の方向へ廻し立てつゝ左肩の方向に行きし刀の刄を上にして頭上より割竹の上部中間に抜打ち切引をなし臥龍の構とな
次に臥龍の構への侭右足、左足の順序に足を引き次に左手にて鯉口を握り刀を前に出しつゝ右へかわし刄を右前に向け少しく臂を伸し其侭屈(かゝ)み両踵の前に殿部を託し右膝を正面に向けて地につけ左膝は左方に開き膝頭を地より離し而して刀を鞘に納める

□ 小手切
台を後にして座す(定距離を取り)
腰を上け右足を立て刀を左手にて栗方を握り左腰の刀の木剣を握り(栗方の上)鍔を親指にて押へ右手を以て柄を下より握り次に両手は其侭にして左臂を下け右臂を上け刃を下向に
次に躰重を右足にて支える如くにして腰を上け左足を左より前、右へ廻して台の方向へむき左膝を地につき右足先きにて刀を抜き下より切付け
次に其侭(其侭とは右足及ひ左足は其場に置きてく)立ちつゝ刀を左肩の方向へ廻し頭上に振上け右片手にて割竹の中央を切引をなしす面して臥龍の構へ持ち来し左手にては柄頭に近く握り後方へ退る退る動作は前に仝し(以下退る動作は全部前に仝し)

□ 裏勝
台の左方に座す(左連の)及両爪先を立て
腰をあけ両膝を立て腰をあけ刀の鍔を左手の親指に押へ両足の爪先を立てる
次に左足を台の左角に足先きか少し内へ向ける様に踏出しを少し斜にして踏出す(是は敵の足を踏付け動かさぬ為めなり)左膝を地につけると同時に右足を左足の右前に踏出し腰を少しく上け左足を右足の後方へ廻し膝を地につけ下より上へかえし切引の動作をなし退る以下切付け切引をなして退る

[裏勝の上端メモ]
左手にて刀を握り鍔を親指押へ腰を上け右膝は其侭にして爪先を立て左足を左斜台の左角前に踏出し

□ 押抜
両膝を立て及ひ両爪先を立て左足にて
左手にて刀を握り左手の親指にて鍔を押へ右足を台の右前に稍斜にして出す
次に右足先にて右へ廻りつゝ左膝を右足の後方に地につけ下より上へ切引して退る以下切付切引をして退る

□ 磯之波
台の前定距離に座す
次に右膝を立てる
腰を上け左足の爪先を立てると同時に左手にて刀の栗方を握り右手にて鍔近く柄を下より握り
次に左臂を下け右臂をあける如く刃を下向にし下より上への切付を下より抜打切付上より切引して退る

■ 中段 (立業)

□ 往合
台の前定めの位置に立ち下より上へ切引

□ 還抜
右に仝し台を後にして立つ動作は小手切に仝し

□ 左連
台の左に立ち裏勝に仝し

□ 右連
台の右方へ立ち押抜に仝し

□ 追懸抜
台の前方約三歩を隔てゝ立ち右足より早足にて右、左、右足にて進み下より上へ切引す其他は向之太刀に同し

■ 上段 (立業)
往合以下中段と同しき下よりの切付けを除き上よりの切引のみする

應變八極 A 禮法 正眼 臥龍 左龍 虎乱 右発 左拂 車 甲山 虎入




■ 應變八極 (双方共袋竹刀を用ゆ)

□ 禮法
仕手相手共右手を以て竹刀の後端を握り前端を前にし約二間を隔てゝ相対して立ち両踵を接す
次に両足先の方向に膝を曲けつゝ竹刀を体の中央に持来し左手を以て右手の下を握り臂部を両踵の上に托し互に目禮をなして然る後起立す

□ 業の仕方

□ 正眼
仕手 竹刀を中正眼に構へる(中正眼とは竹刀を前に出しつゝあけ剣先きを相手の喉に後端柄頭をあごの直下に持来す)
相手 両手を以て竹刀を右肩に持来す
双方共 右足より踏出し三歩目
相手 右片手にて竹刀を仕手の眞向に打込み
仕手 左上に相切り續て左足を踏込み相手の眞向に打込む
相手 右足を後に引きつゝ竹刀の後端を左にして眼前にて受止む
仕手 竹刀を頭上に振上け剣先を後にして退る

□ 臥龍
仕手 臥龍の構へをなす
相手 竹刀を右肩に持来す
双方共 右足より踏出し三歩目
相手 右片手にて竹刀を仕手の眞向に打込む
仕手 左上に相切り續て左足を踏込み眞向より相手の頭上に打込む
相手 右足を後に引きゝ竹刀の後端を左にし眼前にて受止む
仕手 竹刀を頭上に振上け剣先を後にして退る

□ 左龍
仕手 右足先の侭竹刀を右肩に持来し直に臥龍の構へをなす
相手 竹刀を右肩に持来す
仕手 双方共右足より踏出し三歩目
相手 右片手にて仕手の眞向に打込む
仕手 左上に相切り續て左足を踏込み相手の眞向に打込む
相手、仕手共 其後の動作は前に同し

□ 虎乱
仕手 右足先にて正眼の構へにあるとき両膝をひねり竹刀を眼の高さに上けつゝ前端を前に出し左手は竹刀の中央を親指と人指との間に握り直に正眼の構に復す
相手 竹刀を右肩に持来す
双方共 左足より二歩目
相手 右片手にて竹刀を仕手の眞向に打込む
仕手 左上に相切り續て左足を踏出し相手の眞向に打込む
仕手及相手共 其後の動作は前に同し

□ 右発
仕手 正眼の構へ
相手 竹刀を右肩に持来す
双方共 右足より発進し三歩目
相手 仕手の右片手にて仕手の眞向に打込む
仕手 左に流し右足を踏込み相手の眞向に打込む
双方共 其後の動作は前に同し

□ 左拂
仕手 正眼の構へ
相手 竹刀を右肩に持来す
双方 右足より進み三歩目
相手 右片手にて仕手の眞向に打込む
仕手 竹刀を右に流し左足を踏込み相手の眞向に打込む
双方 其他の動作は前に同し

□ 車
仕手 正眼の構へにありしとき左足を前に出し両手を以て竹刀を右肩に取り直に左足を引き臥龍の構へをなす
相手 竹刀を右肩に持来す
双方 右足より進み三歩目
相手 右片手にて仕手の眞向に打込む
仕手 左上に相切り續て眞向に打込む
双方 其他の動作は前に同し

□ 甲山
仕手 正眼の構
相手 竹刀を右肩に持来す
双方 右足より進み三歩目
相手 右片手にて仕手の眞向に打込む
仕手 右上に相切る
相手 更に仕手の眞向に打込む
仕手 左に流し左足を踏出し相手の眞向に打込む
双方 其後の動作は前に同し

□ 虎入
仕手 臥龍の構へ
相手 竹刀を右肩に持来す
双方 右足より進み三歩目
相手 右片手にて仕手の眞向に打込む
仕手 突打ちをなし續て左足を踏出し相手の眞向に打込む
双方 其他の動作前に同し

應變八極 B 禮法 正眼 臥龍 左龍 虎乱 右発 左拂 車 甲山 虎入




 中正眼とは
 正眼の構とは竹刀を胸の前に持来し
 右手か乳の高さ左手か帯の位にある如くしたもの
中正眼とは正眼の構を少しく上にあけしものにて左手かあこの高さ左手か乳の処にある構へ●●
  竹刀の前端後端の区別先 先頭を前端と云ひ
  両手にて握る柄の処を後端と云ふ

■ 應変八極
 (相方仕手相手共袋竹刀を用ゆ)

□ 禮法
相方仕手相手共右手を以て竹刀の後端を(鍔あるものと仮定して其眞下を)握り前端を前にし約二間を隔て相対して立ち両踵を接す
次に両足先の方向に膝を曲けつゝ竹刀を体の中央に持来し左手を以て右手の下を握り臂部を両踵の上に托し互に目礼をなし起立す

□ 業の仕方

□ 正眼
仕手 竹刀を中正眼に構へ
相手 両手を以て竹刀を右肩に持来す
相方仕手相手共 右足より踏出し三歩目
相手 右片手を以て仕手の眞向に打込む(此時左手は左もゝに接して伸す)
仕手 左上に相切り續て左足を踏込み相手の眞向を打つ
相手 右足を後に引きつゝ竹刀の後端を左にして眼前にて受く
仕手 竹刀を頭上に振上け剣先端を後にして退る適当の位三歩を退り臥龍の構をなす

□ 臥龍
仕手 臥龍の構へをなし
相手 竹刀を右肩に持来す
相方共仕手相手共 右足より進み三歩目
相手 右片手にて仕手の眞向に打込む
仕手 左上に相切り續て左足を踏込み眞向より相手の頭上に打込む
相手 右足を引き竹刀の後端を左にし眼前にて受く
仕手 竹刀を頭の上に上け先端を後にして振上け退る

□ 左龍
仕手 右足先の侭竹刀を右肩に持ち来し直に直に前に下して臥龍の構に復すをなす
相手 竹刀を右肩に持来す
相方共仕手相方共 右足より進み三歩目
相手 仕手右片手にて仕手の眞向に打込む
仕手 左上に相切り續て左足を踏込み相手眞向に打込む
相手 右足を引き竹刀の後端を右にし眼前にて受く
              前端
仕手 竹刀を頭の上に振上け先頭を後にして退る

□ 虎乱
仕手 右足先にて正眼(正眼とは剣道の正眼構へに仝し)の構へにあるとき両膝をひねり竹刀を眼の高さに上けつゝ前端を前に出し左手は竹刀の中間を親指と人指との間に握り直に正眼の構へに復す
相手 両手を以てにて竹刀を右肩に持来す
仕手相手共 左足より三歩目
相手 右足先にて右片手に仕手の眞向に打込む
仕手 左上に相切り續て左足を踏込み更に相手の眞向に打込む
相手 右足を引き竹刀を後端を左にし眼の高さにあげて前にて受く
仕手 竹刀を頭上に振上け前端を後にして退る

□ 右発
仕手 正眼の構にて右足より進むをなす
相手 両手にて竹刀を右肩に持来す取り
仕手相手共 三歩目
相手 右足先右片手にて仕手の眞向に打込む
仕手 左に流し右足を踏込み相手の眞向に打込む
相手 右足を引き竹刀の後端を左にして眼の前にて仕手竹刀を受く
仕手 竹刀を頭の上に振上け前端を後にして退る
相手 正眼の構にて退る

□ 左拂
仕手 正眼の構へにてをなす
相手 両手を以て竹刀を右肩に取り持来す
仕手相手共 右足より進み三歩目
相手 右足先右片手を以て仕手の眞向に打込む
仕手 竹刀を右に流し左足を踏込み相手の眞向に打込む
相手 右手を右上に引き前端を内にして眼の高さにて受く
仕手 竹刀を頭の上に振上け退る
相手 正眼の構にて退る

□ 車
仕手 正眼の構へをなし
相手 両手を以て竹刀を右肩に取る
仕手相手共 右足より進み三歩目
相手 右片手にて仕手の眞向に打込む
仕手 右上に相切る
相手 更に眞向に打込む
仕手 左に流し左足を踏込み相手の眞向に打込む


□ 車
仕手 正眼の構へにありしとき左足を前に出し両膝をひねりつゝ手を以て竹刀を右肩に取り竹刀を前に出し直に左足を引き臥龍の構をなす
相手 両手を以て竹刀を右肩に取る持来す
仕手相手共 右足より進み三歩目
相手 右片手にて仕手の眞向に打込む
仕手 左上に相切り續て眞向に打込む
相手 左足を引き竹刀をの後端を内にして眼の高さにて持来し仕手の打込む竹刀を受く
仕手 竹刀を頭の上に振上け退る
相手 正眼の構にて退る

□ 甲山
仕手 正眼の構へをなす
相手 両手を以て竹刀を右肩に持来し取る持来す
仕手相手共 右足より進み三歩目
相手 左足先右片手にて仕手の眞向に打込む
仕手 右上に相切る
相手 更に眞向に打込む
仕手 左に流し左足を踏込み相手の眞向に打込む
相手 右足を引き竹刀の後端を内にし眼の高さにて受く
仕手 竹刀を頭の上に振上け退る
相手 正眼の構へにて退る

□ 虎入
仕手 臥龍の構へをなす
相手 両手にて竹刀を右肩に取る
仕手相手共 右足より進み三歩目
相手 右片手にて仕手の眞向に打込む
仕手 発進三歩目の足を廣く踏出し突打ちをなし續て左足を踏込み相手の眞向に打込む
相手 右足を引き眼の高さにて仕手の竹刀を受く
仕手 竹刀を頭の上に振上け退る
相手 正眼の構にて退る

應變八極 正眼 臥龍 左龍 虎乱 右発 左拂 虎入 甲山 車 礼法

■ 應變八極 相方共袋竹刀を用ゆ
礼法約二間を隔て

□ 正眼
仕手 中正眼にかまえ相手は両手を以て竹刀を右肩に持来し
双方共 右足より踏出し三歩目
相手は右片手にて仕手の眞向に打込む
仕手 左上に相切る續て左足を踏込み眞向より打込む
相手 右手を後に引き竹刀の後端を左にし水平に受く眼前に受く

□ 臥龍
臥龍の構へをなし右足より進み三歩目左上に相切り左足を踏込み眞向より打込む

□ 左龍
右足先の侭竹刀を右肩に持ち来し直に臥龍の構に復し右足より進み三歩目左上に相切り續て眞向より打込む

□ 虎乱
右足先の侭両足をひねりつゝ竹刀を眼の前に水平に出し左手を以て竹刀の中央を親指と人指との間にのせ直に臥龍の構に復正眼の構へに復し右足より踏出し両手を以て左上に相切り左足を踏込み眞向より打込む

□ 右発
正眼にて進み相手の眞向より打込む左に流し右足を踏込み相手の眞向に打込む

□ 左拂
正眼にて進み右へ流す

□ 虎入
臥龍の構へにて進み右足先にて突打をなし續て眞向より切込む

□ 甲山
左足を前に出し竹刀を右肩にとり直に左足を引くと同時に臥龍の構をなし右足より進み三歩目左上に相切り續て眞向より打込む

□ 車
臥龍の構にて正眼にて右足先にてより進み相手の眞向に打込むを右上に相切り又た眞向に打込むを左に流し續て眞向より打込む

□ 礼法
相方右手を以て竹刀を後端を握り相礼して 前端を前にし
相方約二間を隔てゝ相対して立ち両足先の方向に膝を曲けつゝ竹刀を中央に持来し左手を以て右手の下を握り臀部を両踵の上に托す互に目礼をなす

應變八極 C 正眼 臥龍 左龍 虎乱 右発 左拂 車 甲山 虎入

■ 應變八極
正の邪と変し福の禍とかわるは朝の晩となり昼の夜と変するか如く豫め知れてあることなれはたやすき也
依て此剣術をは極のうつり変れるにたとへて示すものなり

□ 正眼
正を以て己れの備へとして変に應すること眼の物に應するか如く速やかなれと云義なり

□ 臥龍
龍の臥て不動るにたとう

□ 左龍
己れの不徳より変の起れる不得止動也依て其徳はあれとも二に落是を卑下して左龍と云ふ 不得止面して動く意に左の字を用ゆ

□ 虎乱
虎の竹林にありての異獣を防くと云ふなり

□ 右発
右は祐也 神助を祐と云 其君を祐て不正を征伐するの謂なり

□ 左拂
左は佐也 人助を佐と云 君の命を奉て人難を救ふて不從を拂ひ去の太刀なり

□ 車
車は凡てを持て轉曲するもの邪悪害せんとして来る時是に張合す正道を守りて轉曲せは邪悪自ら屈すへし是斜の矩なり

□ 甲山
甲も理有て成長し山も時有て変動す 武人武を用堅厚にして能戈止の義にあはゝ上を殺し下を殺すと云とも可なり

□ 虎入
武人正道を守て油断なきこと猛虎の郡に入るか如くせよとして変に應する速なることは虎の口を開て己にかまんとするに未其閉る気なき内に虎の口に拳を通する如くなりとそ
以虎入為中心霊
 虎入の理を以心中に納めて忘れざること魂魄如くなれとぞ

居合八極変 A 禮法 圓波 相合 飛乱 乱波 虎掻 浦ノ波 逆波 逆面鷹 浮舟




■ 居合八極変
 (仕手は木剣を用い相手は竹刀を小手覆に入れて握る)

□ 禮法
仕手 木剣を左腰に差して踞む
相手 右手にて小手覆の内より竹刀を握り左手を僅かに竹刀の後端を握る而して両足 双方而して両足の方向に膝を曲け竹刀を体の中央に前に出す
双方 約二間を隔てゝ礼をなす

□ 業の仕方

□ 圓波
仕手 左手を以て刀の鍔を押へ握りて立つ
相手 竹刀を右肩に持来す
双方 右足より進み三歩目
相手 右片手にて仕手の眞向に打込む
仕手 右足を左足の処に引き相手剣先を避け更に右足を踏込み抜打ちに相手の眞向に切付く
相手 剣先を少し左へかわし小手にて受く
仕手 抜打ちせし剣は臥龍の構になし其侭の姿勢にて後へ退る
相手 正眼の構へ

□ 相合
仕手 左手にて刀の鍔を押へ握る
相手 竹刀を右肩に持来す
双方 右足より進み三歩目
相手 右片手にて仕手の眞向に打込む
仕手 打込み来る所を下より相手の小手に切付け續て上にかへし再ひ小手に切付ける次に剣先を頭上に振返し左手の親指と人指とにて剣の中央を受け留め次に左手を放ち右手を頭の上に持来し更に左手を前に出し柄頭を握り後へ退る
相手 正眼の構へ

□ 飛乱
仕手 自然体侭左手を以て刀の鍔を押へて握り次に右手を以て刀を前より右へ丸く抜き臥龍の構へをなす
相手 竹刀を右肩に持来す
双方 右足より進み三歩目
相手 右片手にて仕手の眞向に打込む
仕手 左上に相切り續て小手に切付く
双方 其他の動作は前に仝し

□ 乱波
仕手 前に丸く抜き臥龍の構をなす
仕手の双方 右足より進み其他の動作は前に同し

□ 虎掻
仕手 左手にて刀の鍔を押へて握る
相手 竹刀を右肩に持来す
双方 右足より進み三歩目
相手 右片手にて仕手の眞向に打込む
仕手 右足を左に踏開き左足を左後に引きつゝ抜打ちに相手の小手に切付く
双方 其他の動作は前に同し

□ 浦の波
仕手 左手にて刀の鍔を押へ握る
相手 竹刀を右肩に持来す
双方 右足より進み三歩目
相手 右片手にて仕手の眞向に打込む
仕手 左肩を少しく後にし左足を右後に引きつゝ抜打ちに相手の小手に切付く
双方 其他の動作は前に同し

□ 逆波
仕手 自然体にありしとき左足を前に出しつゝ刀を下より抜き續て左足を引き臥龍の構へをなす
双方 右足より進み三歩目
相手 右片手にて仕手の眞向に打込む
仕手 左上に相切る
双方 其他の動作は前に同し

□ 逆面鷹
仕手 自然体にあるとき左手にて栗方を握り拇指にて刀の鍔を押へる
相手 竹刀を右肩に持来す
双方 右足より進み三歩目
相手 右片手にて仕手の眞向に打込む
仕手 打込み来る竹刀を左先にて小手に切付く
相手 更に眞向に打込み来るを以て左足を引きつゝ刀を上にかえし小手に切付く仕手の眞向に打込む
双方 其他の動作は前に同し

□ 浮舟
仕手 左手にて栗方の処を握り拇指にて刀の鍔を押へ握る
相手 竹刀を右肩に持来す
双方 右足より進み三歩目
相手 右片手にて仕手の眞向に打込む
仕手 相手の小手に抜打ちに切付け(内部より)續て刀背に左手を副へ(刀背を左手の拇指か内に他の四指か外側を握る如くす)左足を踏込み相手の右肩に切込む而して左足を引きつゝ臥龍の構へに復し更に刀を頭の上に振上けて退る
相手 右手を右前へ落す
仕手 後退のときは正眼の構へにす

居合八極変 B 禮法 圓波 相合 飛乱 乱波 虎掻 浦ノ波 逆波 逆面鷹 浮舟



■ 居合八極変
  (仕手は木剣を用ひ相手は竹刀を小手覆に入れて内より握る)
   △右手の拇指にて鍔を押へ右手は右腰に接して伸す

□ 禮法
仕手相手共二間を離 てるものとす
仕手 木剣を右手にて右腰に下け水平に持ち所定の位置に至り左腰に差して踞み
相手 右手にて小手覆の内より竹刀を握り左手を僅かに竹刀の後端を握る而して両足先の方向に膝を曲け竹刀を体の中央に出し
相手仕手共 目禮をな(約二間を隔てゝ禮をなす)て起立

□ 業の仕方

□ 圓波
仕手 左手を以て栗形の上を握り刀の鍔を押へ握るて立つ
相手 両手を以て竹刀を右肩に取る
仕手相手共 右足先にて進み三歩目
相手 右片手にて仕手の眞向に打ち込む
仕手 右足を左足の処に引き相手の剣先を避け續て更に右足を踏み込み抜打ちに相手の眞向に切付く
相手 剣先を竹刀の前端を少し左へかわし小手にて受く
仕手 抜打ちせし剣を臥龍の構へになし持来し其侭後へ退る
相手 正眼の構えとなる

□ 相合
仕手 左手を以て栗形の上を握り刀の鍔を押へ握るて立つ
相手 両手を以て竹刀を右肩に取る
仕手相手共 右足より進み三歩目
相手 右片手にて仕手の眞向に打込む
仕手 打込む所を下より小手に切付け續て上にかへし小手に切付けるけて續けて 次に直に剣先を頭の上にかへし左手の親指は人指とをか内になる様にし他の四指か外側にある如くして剣の中央棟を受く其時親指か外になる如くす更に左手をはすし右手の下を握り其侭後へ退る
相手 正眼の構えをなす
 相手 剣先を左下にかえし仕手か後退と同時に左手を右手の下に添へて竹刀を右肩に取りて退る

□ 飛乱
仕手 自然体のまま左手を以て栗形を握り刀の鍔を押へ握 りある右手を以て刀を左前より静かにより右へ丸く抜き臥龍の構へをなす
相手 両手を以て竹刀を右肩に取る
仕手相手共 右足より進み三歩目
相手 右片手にて仕手の眞向に打ち込む
仕手 左上に相切り續て右片手にて仕手小手に切付く其他の動作は前に仝し

□ 乱波
仕手 前に飛乱は左前より右へ丸く抜きしを此業は正面に丸く抜きて臥龍の構へをなす
仕手相手共 右足より進む其他の動作は前に仝し

□ 虎掻
仕手 左手にて栗形を握り刀の鍔を押さえ握り立つ
相手 両手を以て竹刀を右肩に取る
仕手相手共 右足より進み三歩目
相手 右片手にて仕手の眞向に打込む
仕手 右足を左に踏開き左足を左後に引きつゝ抜打ちに右片手相手の小手に切付く其他の動作は前に仝し

□ 浦ノ波
仕手 左手にて栗形を握り刀の鍔を押へ握りて立つ
相手 両手を以て竹刀を右肩に取る
仕手相手共 右足より進み三歩目
相手 右片手にて仕手の眞向に打込む
仕手 左肩を少しく後に引きつゝし左足を右後に引きつゝ抜打ちに相手の小手に切付く其他の動作前に仝し

□ 逆波
仕手 左手にて栗形を握り刀の鍔を押へつゝ立ち自然体にありしとき左足を前に出しつゝ刀を下より抜き續て左足を引きて臥龍の構へをなす
相手 両手を以て竹刀を右肩に取る
仕手相手共 右足より進み三歩目
相手 右片手にて仕手の眞向に打込む
仕手 左上に相切る其他の動作は前に仝し

□ 逆面鷹
仕手 自然体にあるとき左手を以って栗方を握り刀の鍔を押へ握る立つ
相手 両手を以て竹刀を右肩に取る
仕手及相手共 右足より 仕手左足より相手左足より進み三歩目
相手 右片手にて仕手の眞向に打込む
仕手 打込む竹刀を下より小手に切付く
相手 竹刀を振上け仕手の更に眞向に打込み来るを以て左足を一歩後方へ引きつゝ刀を上にかへして
仕手 小手に切付く其他の動作は前に仝し

□ 浮舟
仕手 左手にて栗方を握り刀の鍔を押へ握るて立つ
相手 両手を以て竹刀を右肩に取る
仕手相手共 右足より進み三歩目
相手 右片手にて仕手の眞向に打込む
仕手 相手の小手に内部より抜打に切付
相手 續て竹刀の前端を左斜前に下け刀背に左手を副へ左足を踏込み相手の右肩摺込む而して
仕手は次に左足を引きつゝ臥龍の構へに移り更に刀を頭の上に振り上けて退る 相手其他の動作は前に仝し

居合八極変 圓波 相合 飛乱 乱波 虎掻 浦ノ波 逆波 逆面鷹 浮舟

■ 居合八極変

□ 円波
右足先にて進み三歩目相手か眞向に打込むを以て送足にて退り抜打ちに切付け臥龍の構をなしつゝ退るり鞘に納む

□ 相合
右足先にて進み相手の打込む刀に対し下より切付け續て上より打込み直に剣先を頭の上にかへし左の合指ち人指と中間にて受け次にて夫れを頭の上に持来し表のとき後に退る動作に仝し

□ 飛乱
左より右へ丸く抜き臥龍の構をなして右足より進み三歩目左上に相切り直に剣先を頭の上に持来す其他は相合の通り

□ 乱波
前に丸く抜きて臥龍の構をなしつゝ右足より進み三歩目左上に相切る其他は前に仝し

□ 虎掻
臥龍●●の構へにて左足より進み三歩目左に踏開きつゝ抜打に切付け其他は前に仝し

□ 浦の波
臥龍の構へをなしつゝ右足より進み三歩目右に踏開きつゝ抜打ちに切付く其他は前に仝し

□ 逆波
其場に右足先にあり左足を前に出し刀を抜き左足を後に引きつゝ臥龍の構をなし右足より三歩目相切る其他は前に仝し

□ 逆面鷹
左足歩にて下より切付け相手か更に眞向へ打込み来るを以て左足を引きつゝ刀を上にかへして眞向に切込む

□ 浮舟
左足歩にて進み三歩目相手の右小手に上より内部より切付け續て刀背に左手を当て左足を踏込み相手の右肩に切込む一歩後に下るときは臥龍の構へをなし次に頭上に振上けて後る


[右上端メモ]
左に踏

[左上端メモ]
右に踏

居合八極変 C 圓波 相合 飛乱 乱波 虎掻 浦ノ波 逆波 逆面鷹 浮舟

■ 居合八極変
 本居合は磯浪の一刀なれとも磯波に南北東西中理あるより変し来りては極変となる

□ 圓波
円とは天照の形 波とは満の海水に逆はさるの云也 正を守りて角なく世並に逆わさる円波と云ふ

□ 相合
己と人と相対して己れの道と他の道は合適するなり

□ 飛乱
此太刀は人の後にて抜作法の利方なり

□ 乱波
前の飛乱に対したる太刀にて人と並居る所にて太刀を抜作法なり

□ 虎掻
掻は爪を磨也 至剛の獣にして常に至微を磨く其備の全して小事といへとも油断せさつにたとう

□ 浦ノ波
浦とは海濱也 潮汐に従て来るもの世並に従ふの云なり
然れとも己れの分際を辨へ知らされは高きものは竟に(ついに)石上なとに止まりて死水となる故に己れを知り人を知て世並に従ふを浦ノ波の要とす

□ 逆波
逆と不順也 能従ふへからさるの世並を察て従はさるの云也

□ 逆面鷹
首を逆にする鷹なり 鷹は陽鳥昇るを以て常とす事有て変に應する時は上して下て勢を添え先其難きを先きにして易きを後にす

□ 浮舟
無我無心なる者は能変に應す虚舟の中流に浮ふか如くなれは物とめ容れさることなし
以浮舟為中心霊
 此浮舟を中心の霊とせされは余の太刀はつかはれさるなり

外物 十文字 打落 態妙剣 射向返 鷙 声ノ抜 瀧波 臥龍尾返


□ 十文字
相手は刀を右肩に取る
仕手は刀を帯に指す
三歩目 相手は仕手眞向に打込む
仕手は片手十文字にて受 左手を刀の棟に当て左足を踏込み相手の右小手に押へ込む
相手は送り足に一歩引右足を出して眞向に打込む
仕手は左に流し右に廻りて打込む

□ 打落
相手及仕手共 前同様の姿勢に進む
相手 仕手の眞向に打込
仕手は刀を抜き左に流し少し右斜に開き相手の右肩に打込む

□ 態妙剣
前同様にて進み 相手は仕手の眞向に打込む
仕手は片手の横十文字にて受
仕手は更に右に開き右膝を折り相手の右小手に切付く

□ 射向返
前同様にて進み相手は仕手の眞向に打込む
仕手は相手の左小手に片手抜打ち
相手は刀を引き冠り構へより打込む
仕手は右足を引き左足を踏込み刀を右より丸く廻して相手の眞向右肩に打込む

□ 鷙
前同様

□ 声ノ抜
前同様 仕手両刀を帯ふ 相手八相構 左より踏出し三歩目相手声をかける
仕手 小太刀を抜き腰に持ちへ向く時相手打かゝる
仕手は抜きたる小刀と太刀の柄にて受け(仕手は左先)左へはね落し右足を踏込み小刀を以て相手の左肩に打込む

□ 瀧波
相手八相構へ 仕手は臥龍の構へにて進み三歩目
相手は仕手の眞向に打込む
仕手は右手を以て相手の右下臂に切付け次に相手刀を引きて打込む
仕手 霞(右足先)の構への如くし刀を左へ廻し右足を飛込み相手の眞向に打込む

□ 臥龍尾返

外物 C 十文字 打落 態妙剣 鷙鳥返 聲之抜 瀧波 甲陽左発 霞 逆剣 無手切

□ 外物
 外物に接する時なり慎むへきの甚しき場なりと云ふ

□ 十文字
敵の邪悪已に九分の勢ひを待て襲ひ来る時は己れ正の一に止まりて能守るときは敵対する者其徳に化せられ和して十字をなして治に至るの義なり

□ 打落
強敵不正を以て打来る時己れ戈止の道を以て敵と位を異にする時は敵自ら敗を取るなり

□ 熊妙剣
熊は力を恃むの猛獣なり依て力を以て人の押す者をたとへしなり或は権威なるもの又は多勢者襲来る時是に争はゝ及ふまし己れ妙處を以て之を防く也 妙とは幽玄の理物を積て此に至るなり

□ 鷙鳥返
鷙は暴鳥なり如期暴敵襲来する時は禮譲を厚くして是を覚し化すへし

□ 聲之抜
ホタ其物を見すして其声を聞て已に抜の備をなすの義なり能未然に備ゆるものは変に遇て周章することなし

□ 瀧波
瀧は擲来也 敵打来るの時也 身を浴して受打返すを波にたとふ己の正道を害せんとそ来るものは打返するも苦しからす

□ 甲陽左発
太陽を甲表にする也 正道を表とするなり 左発とは君の命にあらすとも天道に違はすんは己れより発して邪悪を拂ふ

□ 霞
時の宜をとり場の先を以て美しく取治め跡の見るへきなきを霞と云ふ

□ 逆剣
逆は後ろに向て見る形なり己れ自己の非を防検するの義なり

□ 無手切
己れ正道を守りて天下悉く手足ならはそむく者ある時は手無くして切れ敵も亦防くの手なくして切れん

六個之太刀 B 禮法 瀧波 臥龍尾返し 甲陽左発 霞 逆剣 無手切



■ 六個之太刀
 (相方竹刀を用ゆ但相手は小手覆を用ゆ)

□ 禮法
相方共竹刀を右手に握り前端を前にし踵を接して約二間を隔てゝ起立す
次に両足先の方向に両膝を屈め竹刀を体の中央前に持来し左手は右手の下を握り互に目禮す
禮を終へて起立す

□ 業の仕方

□ 瀧波
仕手 臥龍の構へ
相手 両手を以て竹刀を握り右肩に持来す
仕手及相手共 右足より進み三歩目
相手 右片手にて仕手の眞向に打込む
仕手 相手の小手に下より切付け續て飛上りつゝ右足先右手のみにて用ひ上より小手を切込む
相手 竹刀を右肩に取り退り
仕手 頭の上に振上け退る

□ 臥龍尾返し
仕手 臥龍の構より少し左上にあけし構へなり
相手 両手を以て竹刀を握り右肩に取る
仕手及相手共 右足より進み三歩目
相手 右片手にて仕手の眞向に打込む
仕手 打込む際竹刀を右上にかへし右足を引き左足を前に出して相手の小手に外側より打込む
相手 左手を右手の下に副へて竹刀を右肩に取り退る
仕手 竹刀を頭の上に振上け退る 相手

□ 甲陽左発
仕手 上段の構(上段の構へとは両手を以て竹刀を握り頭の上に振上ける処を云ふ)
相手 両手を以て竹刀を右肩に取る
仕手及相手共 右足より進み三歩目
相手 右片手にて仕手の眞向に打込む
仕手 打込むはなを少し早く相手の小手に打込む
相手 左手を添へて握り右肩に取り退り
仕手 頭の上に振上け退る

□ 霞
仕手 両手にて竹刀を握り上にあけつゝ左にひねり眼の高さに構え(此時は竹刀は眼の前に水平となる)
相手 両手を以て竹刀を右肩に取る
仕手及相手共 右足より進み三歩目
相手 右片手にて仕手の眞向に打込む
仕手 打込むはなを少しく早く相手の小手に打込む
相手 左手を右手の下に副へ右肩に取る
仕手 竹刀を頭の上に振上け退る

□ 逆剣
仕手 左足先にて右手にて竹刀を握り左手を以ては竹刀の中央前を親指拇指を上よりと他の四指とにて上より握
相手 両手を以て竹刀を右肩に取る
仕手及相手共 仕手は左足より相手は右足より進み三歩目
相手 右片手にて仕手の眞向に打込む
仕手 打込みを押へ込む
相手 更に竹刀を引抜き打込むを用ひ押込み右足を踏込み相手の眞向に打込む
相手 右足を引き仕手の打込む竹刀を小手にて受く
仕手 竹刀を頭の上に振上け退る
相手 左手を右手の下に添へ右肩に取り退る

□ 無手切
仕手 正眼の構へ
相手 両手を以て竹刀を右肩に取る
仕手及相手共 右足より進み三歩目
相手 右片手にて仕手の眞向に打込む
仕手 両手を以て左上に相切り右に踏開くと共に左肩の方向より相手の小手に打込む
相手 更に振上け再ひ眞向に打込み来るを以て右上に相切り右へ踏開きつゝ右肩の方向より相手の小手に打込む
相手 左手を右手の下に添へて右肩に取り退る
仕手 頭の上に竹刀を振上け退る


[上端メモ]
左上に相切 左へ廻し相手の右手を
右に相切り右へ踏開右前へ●●●

二刀崩 1 巴  正雪  込月 午圓 轤


八相構


■ 二刀崩

□ 巴
相手は二刀を組合せ利刀の方を上にす して進にす(夜叉の構と云ふ)
仕手は八相の構へをなす
仕手は右足 相手は左足より進み三歩目相手が八叉構に出てくるのを 仕手は八相より右下下しつゝへ廻し夜叉の 夜叉せる所を夜叉構を下より突入れて上へ開かせる
相手は更に八叉の構へをなすを以て仕手は左足を踏出し前部の如く下より夜叉を打開き竹刀を頭上に振上け勝位をつけるつけ退る

腹の高さ位に組合せて進む

 左 小刀 防刀と云ふ
 右 太刀 利刀とも云ふ

□ セウ(せう)
相手は二刀を浅く交叉して下け左足より進む(夜叉構の低きもの両膝の前位の高さ)
仕手は下構へ臥龍の構にて右足より進み三歩目 下より崩し夜叉を崩し右足を引き左足先にて上より夜叉を打開く[夜叉を打開く:抹消扱い]頭上に刀を振上ける 相手は右足を出し夜叉構にて進み来る
仕手は左足を引き上より更に夜叉を崩し刀を頭上に振上け勝位をつけて退る

鋒先を下ける


□ 正雪
相手は左手小刀を左先に出し切先きを少しく外に向け利刀は右肩の下に振上く
仕手は冠太刀にて右足より進み先つ相手の小刀を頭上とし相手の小刀を左方に巻き落す様にして
相手は利刀を以て我か●眞向を打たんとするに依り体を少しく右へ開き相手の右小手に切付く



□ (れき)
相手は圖の如き姿勢にて相手は左足より進み
仕手は下構へにて進み 右足より近き 三歩目防刀(小刀のこと)の柄の上より臂へ掛け押し掛
右へ少しく体を開かんとするとき利刀を以て相手は打込み来る刀を頭の上に持来し左へ流し
右足を左、左足を右足の後ろに開き相手の左肩に打込む



□ 込月(こみつき)
相手は圖の如き姿勢にて左足より進み
仕手は中正眼にて右足より進み相手の防刀を右に少なる相切りをなすしく押す
相手は利刀を以て己か頭を打込むとき虎入の如く右足先にてすり込む相手の小手に突込む
相手は小刀を以て仕手の眞向を打たんとす
仕手は左へ流し更に頭上に振上ける右足を右斜前に踏出し相手の腋下に刀を返して右へ引抜き更に頭上から振上けて相手の右肩に打込



□ 午圓
相手は圖の如く二刀を埋伏して待つ右腰下に提けて待つ
仕手は冠太刀左足先にて三歩目敵の眞向に打ち込む
相手は上段組太刀にて受け留める
仕手は組太刀を強く押しつゝ右へ右足を飛替へ相手の左肩を打つ
「相手二刀を以て仕手の首に打込み来るを以て右足を引き左発のようにして打ち込み相手の右肩へ打込む」



□ 轤(ろ)
相手は二刀を圖の如く立て
仕手は下構左足先にて進み三歩目 甲山の如 刀を左へひねり切先きを  小刀の処に付きつけ切先にて にて相手の防刀を押上けんとす
相手は利刀を以て仕手の眞向に打込む
仕手は刀を左より右へ流して左足を踏込み相手の右臂を切り落す[を切り:抹消扱い]に打ち込む

二刀崩 2 巴  正雪  込月 午円 轤


□ 巴
相手は二刀を刄方を外にして利刀(右手)を上に十手に組み夜叉構とする(下より上へ向ける形)
仕手は太刀を冠刀八相構太刀にして位を取る
仕手相手は丸右手より仕手は左足より発進し三歩目叉中へ刄を右より丸く下して下へ廻し夜叉を下より切上け開き次に上より切下け冠太刀左足を踏出して前同様に取る

 

□ セウ
相手は二刀を浅く交して鋒を下く
仕手は右足 相手左足にて冠太刀に進み三歩目上より叉中に打込み正眼の構
相手は一歩進み来るを以て仕手一歩退り下より切上く

□ 正雪
相手は左手を前に出し小刀刄を内部に向け右手は高く上けて居る
仕手は八相の構にて進む冠太刀
双方三歩目右●相
仕手は相手の左剣を其侭の姿勢にて打落し次に打落す(内へ廻す如く)
次に左足を出し刀を左肩へ廻し頭の上に持来し右足を踏込み相手の肩に打込む

□ 
相手は下構へ
仕手は右足先にて相手の左刀(鍔先き)を押へ更に左足を踏込みて少す押す気味にあり相手が左足を引きて打込む更に右足を踏込●●相手の右手の小切手に切付く
仕手は右へ少しく開き腰をのき相手の小手に切付く

□ 込月
仕手は中正眼にて行き右へ相切り相手の左剣を少し右上に押す
相手打込み来るを以て左へ流し右足を虎入にて付き打ち右足を踏込み打込む
相手は防刀を以て仕手の眞向に打込む
仕手は左へ流し相手の左わき下をくゝり刀を返して頭上より相手の左肩に打込む

□ 午円
仕手 臥龍冠太刀左足先にて進み 左へ流し右に廻り相手打込む
仕手 右へ流し更に打込む

□ 轤
仕手 下構へ左足にて三歩進み相手の左手首に下より切付け上け押しつゝ右へ少し位置を轉す
相手 利手を以て眞向に打込み来るを以て丸上に流して相手の
相手 利刀を打込み来るを以て体を右へかわし左肩上にて流し更に相手の眞向右手に切込む落す

二刀崩 3 巴  正霊

 二刀崩

□ 巴
相手は二刀を腹部の前にて組合せ利方を上にす(夜叉構なり)
仕手は刀を右肩に取る
相手は左足先き 仕手は右足先にて進み三歩目
仕手は刀を右下より廻して相手の夜叉を下より切上け八相構となる
相手は送り足にて一歩退る
仕手は又た右足先の送足にて進み更に下より切り上ける

 注意
動作を終れは刀は頭上に振上け勝位をつけ次に後方に退る以下全部へ應用す

夜叉構

左刀小太刀を防刀と云ひ
右方長刀を利刀と云ふ

八相構


□ セウ(せう)
相手は二刀を両腰前にて組合せ(夜叉構)利方を上にし左足より 仕手は臥龍の構にて右足より進み三歩目
相手の夜叉を下より上へ切上く 相手は更に交叉して右足を出して押し来る
仕手は右足を引きつゝ臥龍の構へより夜叉の上より下へ切り開く



□ 正雪
相手は左手防刀

小木刀 少々波 表裏 一妙剣 表裏 戸隠 表裏 隠剣 表裏

■ 小木刀

□ 少々波
 表
仕手は小太刀を下構に持ち右足より踏出し 相手は太刀を右肩に両手にて持つ
仕手相手共 右足より踏出し三歩目
相手は両手を以て仕手の眞向に打込む
仕手は右片手十文字にて受け(十文字とは眼の高さに水平にして受けるもの)次に相手か直に左足を踏出し相手の手首を左下に引分け右足を踏込み右手の小太刀を相手の眞向に打込む

 裏
仕手相手共 右足より発進し三歩目 相手か仕手の眞向に太刀を打込み来るを以て左手仕手は十文字に受く次に相手か仕手の左脇腹を拂ふを以て
仕手は太刀先を下に向け右膝少し左方に踏込むを前に掛け太刀先を下に向け右脇腹にて接する如く垂直にして受く

□ 一妙剣
[表]
両手十文字構へ太刀を右肩に取り双方
仕手は相手は右足より進み三歩目 相手は仕手の眞向に打込む 仕手は右足を右へ踏込み太刀を其侭左へ下し 左足を踏込み相手の眞向に打込む

[裏]
仕手は両手十文字相手は太刀を右肩に取る
手相手共右足より三歩進み相手か仕手の眞向に打込み来るを以て
仕手は右手を右下にさけ左手の右こぶしの下を握りそろへて向へ押す相手
は刀を右肩に取る

□ 戸隠
[表]
仕手は下構へ相手は太刀を右肩に取る
仕手相手共 右足より発進三歩目 相手は仕手の眞向に打込む
仕手は右手を上にかえして相手の右うてに切付る

 裏
相手か仕手の眞向に打込み来るを以て
仕手は右の方へ少し開き刄を右側に向け切先を高くして受け右手を出し右手に取添へて相手の太刀を押へ

□ 隠剣
 表
仕手下構 相手か左すねを拂ふ 仕手は右膝を地に着き刄を上に向け太刀先は右膝の前に接して地に着けて受く
 裏
仕手下構へ
相手か左膝を拂ふ 仕手は左へ飛越し両足をそろへ敵の右うてに切付ける
次に相手か眞向に打込み来るを以て右足を前に踏出し太刀を左頭上に廻して振上け更に左足を引き更に相手の眞向に打込む

表紙 1

居合術 伯耆流師範 星野龍太編

表紙 2

 表紙の書方

昭和十二年一月偏 伯耆流居合術
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