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四天流組討の伝書

四天流組討伝書写

四天流組討註釈書写
四天流組討註釈書写:四天流取合の覚
四天流組討註釈書写:綱利公御稽古の目録
四天流組討註釈書写:尊師高重の伝記
1821.文政四年十二月吉日写之
星野実福

四天流組討目録
1834.天保五年午卯月吉辰
星野龍介實壽−小栗又彦
はじめに掲げた「四天流組討伝書写」には、後に掲げた「四天流組討註釈書写」「四天流組討目録」では見られない條目がいくつかあります。この相違は、代を重ねたことによって改変が行われたものか、将又別系ゆえの相違か、この点明らかにし得ませんが、「四天流組討伝書写」の奥書に「天下 無双高重判」と在ることから、初期の傳授形体を伝えたものかもしれません。

四天流組討註釈書写」は、条目、構え方、拳の握り様、躰の鍛え方、赤身・風身・空身の技法註釈、熊本藩の藩主細川綱利公御稽古の記録、流祖の伝記と云う順に記録されています。この史料の翻刻は三度の校正を行いましたが未だ正確を得ず、不確かな部分があることを御留意下さい。

掲載史料及び参考資料
『四天流組討伝書写』私蔵文書
『四天流組討註釈書写』私蔵文書
『四天流組討目録』私蔵文書

□…欠損 ■…不読 ●…潰字 []…管理人註・補

四天流組討伝書写


   赤身之巻

一 草摺の事      一 骨の當□□[りの事]
一 引立の事      一 大力を引立る事
一 左右手の勝の事   一 大力に不引立の事
一 引立の時當りの事  一 手の内の事
一 大小柄廻りの事   一 左右の勝の事
一 行相勝の事     一 行相當り□□[の事]
一 □□[こみ]こふしの事一 けあけの事
一 追懸者の事     一 たきころす事
一 追懸たきやうの事  一 左右より不引立事
一 一さつ足の事    一 四方袖の事
一 八分の當りの事

 右の条々表組皆是赤身と云
 自息の廻り起藝なり口傳に有
 秘事也
   風身之巻

一 追懸しころの事   一 上の勝の事
一 稲妻釼左右の事   一 四方抜の事
一 ふゑ請の事     一 當り三十一ケ所の事
一 数千騎を抜行事   一 馬上組討の事
       附り前輪の事
       同頸取様の事
一 逆しの事

 右の条〃皆是根本風身と云自
 息の廻り出来藝なり大秘書口傳
 是也
   空身之巻

一 頭渡の事      一 尾仕掛の事
一 みけん隠の事    一 一指あたりの事
一 盤石事       一 幼の事
一 あうんの事

 右の条々逆鋒不滅の法是也
 雖然皆是空身と云自息の廻り
 出来法也口傳大秘極
  空身の其身にあたるおんてきは
  立取にて退治□□□□[こそすれ]
  本来空之巻

    赤身
    風身
    空身

抑此三身の法と云は凡人に不受傳授
以佛神力作出す法なり夫赤身と云□□
身上の関上に息の廻り恵を赤身と云也
風身と云は自五臓取起し上三尺に息の
廻るを風身と云なり空身と云は自胴氣
取起上三尺下三尺に息の廻り有て惣身
如鐵丸成を空身と云なり此身に成不得
大利無云事大秘極是なり扨又逆鉾
不滅の法と云は藝心の事なり逆鉾と
云は七ケ条の取組なり藝なり不滅と云は
心法の事なり然るに藝雖慥成心不済
時は難得大利心雖慥成藝不済則其
利不慥故逆鉾不滅と云は陰陽の二なり
陰陽の二は日月也日月の二ツは明の字なり
日月明なル則藝心和合す藝心和合する
則不得大利と無云事大秘極是也
  明心之巻

 (月円)

 天下    無双高重判

 (日円)

四天流組討註釈書








    表

一 反橋      一 召とり
一 かひなぜめ   一 つばせめ
一 後つめ     一 ゆびかへし
一 たふさ責    一 はゞきぜめ
一 布引      一 かしらぜめ
一 追風      一 藤まき

    柄詰

一 柄どめ     一 ねぢ□□
一 みけんかくし  一 小しり□□
一 岩おこし      扇子取
一 ひしき     一 うでがらみ
一 ふみわけ    一 むさうからミ
一 蹴はなし    一 ふりかへ
一 刀せめ

    胸詰

一 切上け     一 もぬけ
一 けかへし    一 もきあき
一 ひちからみ   一 本手つめ
一 岩くだき    一 すけあけ

    脇詰

一 いわつけ
一 つきわけ

    立相

一 太刀搦     一 岩波
一 うでかへし   一 太刀とぎ
一 手先づめ
一 猿かえり
一 逆手づめ
一 天地づめ
一 大ゆるき
一 關破り

  抑四天流の請身息の廻りと号するは呼吸の息邊身にめくる
  にあらす前にも謂空心不滅の躰至て如何成わさをなしても
  惣躰指頭に至る迄氣少もぬけさる所を云り居合兵法にて
  身をかるめさそくをかるし早技を習大つは[鐔]刀持早走うて
  押等の技にて骨の間の肉村を押去り軟肉變して肉堅く
  筋骨あれて力量を増す此故に初て力わさをなす時は
  身骨肩腰強く痛を不怠力技をする時は次第に痛止て
  力量まさる是則筋骨を荒し肌肉を變する故也凡武勇
  の家に生れては戦場に望んて大敵に向てたけきを振前後
  を拂左右を打東西に馳南北に走或は鎗を合太刀打をし或は
  引組んて勝負をする也今せゐひつ[静謐]の御代なれは武□□□
  わさなく人〃此道をおこたり有て身をいたつらに□□□
  力わさにも身をいたみ氣勢労す武士たる者能あ□□□□
  事也常に不怠身をならわし學時は時〃至て労れす□□□
  働をなす也躰痛氣力をとる時は心はやさけなりといふ共
  おこたりなく勤學て執行すへし就中戦場は身に堅甲を掛
  たかひに秘術を盡す故に多は手詰の勝負取合組討と成る
  事多し眼心手足慥して前後左右を拂則は四方に敵を
  請ても勝利を得へし夫息の廻の執行といふは左の足を向に
  延て蹈右の足を少かゝめ足を十文字に蹈て片肩お十分
  に落しこふしをにきり息を延て四方に働といえ共身躰少も
  ぬけさる様に執行すへし大かひ[概]図をあらわす委細は筆力の
  及所にあらす口傳万〃たり
  
一 大方如此のかまへにて打太刀の者は四人古るき
  具足を着てうでには竹をわりて
  すにあみて小手に拵て當て
  上をさわり下をさはり右より取付
  左よりつき後より手を出してあらはすへし則取付しをはあ□□□
  上に来るてをはね下に来る手をはあたり後にねちむき左□□□□
  打働てさそくをかはすへし則是をいつさつそくの執行□□□□□
  時は初心の間は少し働則惣躰の構ぬけ手を働は足の氣□□□□□
  左を働は右ぬけ足働は手はゆるまり或は腹の息込ぬけ肩上より
  腰すわらす惣躰崩也年月立て執行すれは惣身本邊身如何
  様に働ても少もぬける事なく息込眼心手足惣躰一っはひにはり合に
  指の先に至迄少も氣のぬけさる処則息の廻の執行しよふしゆ[成就]
  したると知るへし如斯のわさをなして氣を込ときは元来刀態の
  執行にて筋肉荒て世の常平人の肉並にあらさるゆへ惣躰筋ふと
  く荒れ肉堅く力こぶ面〃として金剛力士の仁王躰のこと
  し力量倍にして金鉄をも取ひしくに堅しとせす

一 惣躰右のことくかまへて掛るも引も烏飛を用ひてかまへを崩さ
  す後にねち向ときは足をめくらして右の足を蹈のへ[延べ]左の足を折
  敷右の手を以敵をふせき左の手を以かまへ十文字の足蹈左右に替る是
  肩の十文字からす飛の事戸田の烏足と云は是也こふしはこみ込こふ
  しと云先に繪圖をあらわす也身に九ツの劒と云事頭両手両肘両膝
  両足合て九ツ也前より取付をは両こふし頭膝足を以當り後より
  取付をは両肘又はねぢ向て當る打太刀すはたにては當りに□□□
  取付事ならすしてひるみ恐るゝ故あたりのはつみ覺かた□□□□
  小手をさし手を出して當らせ身をよせて當り當は則退□□□□□
  取付如是して執行すへし

一 肩を十分につき落し後のこふくわうの骨を後につき出し腹十
  分に息を込首持さつとして腰をすへ働へし肩十分に落さゝれは
  當りまけさる物也腰すわらされは前後左右自由ならす初心の間は
  少働は肩上りさし肩になり腹細く氣ぬけてわさきけさる也

一 三身法とゆふは上関より上に息の廻めくむを赤身といふ五臓より取起て
  上三尺息廻候を風身とゆふ胴氣を取起て上三尺下三尺息廻みち
  て手足の先迄少も抜す惣身如鉄丸なるも則空身と云此身に成る
  則は敵に向て大利を得すと云事なし■[吾]三身の法は凡人の傳授にあ
  らす佛神の教を以尊師清兵衛尉高重自執し出し給ふ法にして
  大秘極是也大つはを貫せ力態を成す事皆此身の執行をなさせん
  との前行也不滅と云は心法也藝慥成ると云共心せいせされは難得大
  利心雖慎成藝不練なれは其利慥ならす逆鋒といふは取組の
  事也逆鋒不成は陰陽也 阳[陰陽]の二ツは日月也日月の二ツは明の字也
  日月明る則は藝と心は和合す和合する則は凡人にあらす大利
  を得すと云事なし大秘極是也 高指のふしと大ゆひのふしと合て
                つよくにきり留る
  
一 込こふしの事如圖にきり高指の節大指の節を合てにきり留る
             たゝし
  高指の中ふしにて當る也但當る時手ゆひ
  のおれさる様に執行すへし是則うでの中とふ
  りにして骨を立かゝけて當る故如何成者もこたふる事あたわす此こ
  ふしにて當る時は処をきらわす何方をつきても甚敷痛也是當流
  手先斗にて當ては強からす右の手にて當る時は左の肩を跡にふり
  分左にて當る時は右の肩を跡にふり分身ともに請て當る時は鉄へ
  き[壁]をも突破程つよく當つ也惣て當流のわさ身を以強みをうけ
  ふり分る勢にて當り又は骨を堅に請て強みをこへる事多能〃心
  を付て執行すへし兵法居合小太刀功等何も此四也突引當打等何も
  なまりなくきくと引はつと打はしと當何もなまりたる拍子を不用
  常の執行に心を付る事肝要也

一 力持の事竹の輪を一ツ板縄あみをぬきかけ大石を中に入手掛の
  縄を能程に付中越にかゝみて縄を手にかけ金剛力を出して引
  上立事はおろしゝゝゝすれは次第にかろく上る也枕程の石をいくらも
  置てかろく上る時は亦石を入倍〃に重りをかけて持上へし此持様
  一身手足持処なく力を増し執行也如斯する時は次第に大
  力と成候て面身手足筋骨あれて堅肉ふんゝゝとして變化
  の躰となる也

  

四天流組討註釈書:四天流取合の覚






      四天流取合の覚

  此目録の次第は後に成田辰之丞えらひて宜糺公の御前の上覧に備たる次第也
  取り組も少し替り有り○如斯したるか其取組也御前にてなしたる技なれは是を
  用へし尤も勇悦さしつにて辰之丞撰し被申たる也

      赤身之巻

一 骨の當の事 手のとりこのふしのきわにて當るを云又惣身
  骨の上は大形當りて強く痛也そこゝに當りてこゝろえべし
  ○相手両手にて帯に取付をにあたり相手の手首を取我手のひちの
  前の横骨にて相手の手首の骨を押てたほしひぢを押へ相手の
  くひを取てかたむる

一 の請の事 少しうつむきてのと[喉]筋をはりて腰を前にはり
  出しつきかゝりて請る也能執行する時は首を竹にて後の両方を
  しめつけ結ひても水を呑に支[つか]へす其次第筆談にあたわす
  ○相手我かを取て柱に押付るを喉筋をはりて押かゝり相手の
  手を取りて小うてせにしめたをし其侭足をふみ込て堅る

一 かひなひねりの事 相手すはりて居るをつと寄早く
  石の手を取小うて返にして堅むる

一 廻りかひなの事 相手寄来るを行合にうて首を取て外に廻
  て押ゆる也

一 引立の事  すわりて居るを相手此方の手を取て引立るを
  足をぬつて相手の足首を横にふみはり此時此方の足かゝめは
  あしく直にふみたる也何程引ても引立る事成さる也此時相少横
  に引其頭に相手を取て急に引はころふ也則ひちを押へてかたむる

一 逆ぬけの事 立合に相手此方の喉を取を右手にて相手の手
  くひを取左の手にて相手のひちを付あけ右のひさをつよき相手
  の脇の下よりくるりと廻る相手のうでねちれてたをるゝを則
  ひちを押へてかたむるなり

一 朽木たおしの事  ○相手立つて行を後より両手の横にて
  二のへにあたり直にさかりてひさの下に手を付我肩を相手のひさの
  上につけ手を引と肩にて押上拍子にうつふしにたをれ則ちを
  押えて堅る

一 ひしきころしの事 ○相手行を後より手の大指のふしにて
  まりんに當り直ににあたり足を相手のうしろにふし[み]込あ
  をのけにたをし直に手を取つて脇の下に足をふみ込かた
  むる

      風身之巻

一 召取の事 并引立  居合取組に有之同前也
 ○相手すわりて居るをつと寄手の横にてのとにあたり我右の手にて
  相手の右の手を取り左の手を相手の前より入てうでを巻て引立
  相手の首を左の手にとり右の手は我刀に手をかけ引せ行也

一 行合大ころしの事  行合にこふしにてまりむをつき則手を
  ひろけ大指人指のまたにて喉をつよくつきあけ相手の腰に
  左の手を付あおのきに打たおしするに足を脇の下に蹈込かたむる

一 行合かひなの事  行合に相手の喉に手の大指人指のまたを
  あたり同ひちにてまりんにあたり相手うつむくを手をとつて我手
  の横骨にて相手の二の元を押えてうつふしにたおし押へて堅る

一 込のこふしの事 前に有し込こぶしの事也常に執行して
  にきり習ふへし  ○四ツの手に組込こふしにて脇腹にあたり
  我右の手を相手の脇に入むそふにてたをし則足を蹈込かたむる

一 おとかひ詰の事  ○相手行を後より両手をのとにかけ我右の
  足にて相手の腰を蹈てあをのきにたおし則我足を脇下に
  蹈込かたむる

一 腰とまりの事  ○四ツ手に組て付くるを我右の膝をひたと
  地につき左手の帯を取りたるをつよく引は相手の足のひつかゝみに
  此方の左の膝に掛りてあふのけてたをるゝをのとを押てかたむる

一 さうしや[奏者]取の事 塩田流さうしや取同前也
  ○一ツには小うて返し二ツには手を取つて引脇の下へ手を入てたおす

一 蹴上の事   下手に入て取付居る敵也膝にてまりんの當り
  なり左にて力足をふみて右の膝にて當る也左右同前也手の
  横にて其くびを打てうつふしにたほし則かたむる是を天地の
  あたりともいふ
  ○右同前也

      空身之巻

一 八歩の當の事 鎧武者は當り所無之也頭の當りを用甲の吹返の
  所を一方よりとんと打ち其返して又一方よりつよく打を云縦は甲と頭
  との間四分歟すき[透き]たるを一方にて打よせすれは其打よせたる方八分
  のすきに成る強打故頭痛目くるめきて十方を失ふ也武者組第
  一の當り也足を四分八分の當りと云也 甲を差たる者には手をつほめて耳を
                    両方一拍子に打也○腰に取付を右のことく
                    打うてを取て二のめを押てたをし
                    かたむる

一 みけんかくしの事  惣て當流は籠手の筋金を丈夫にする也みけん
  の此筋金にて當りて其調子にたほす也又は眼を手にてつきひたひ[額]を
  こみこふしにて當る也籠手の外の方の筋金也
 ○相手の甲のまひさしに我手の四ツの指を入四指をかゝめて取れば手のふし
  のけんに當りていたむ也左の手をうしろにさし廻し敵の右のしころ
  吹返の先を取て一拍子にひねりかへす也かため様甲組に同じ
  
             此筋金一ツをあつく丈夫にする也

一 内甲の事  引組て早く内甲に右の四の指を入しころの跡に左の手
  を懸引付打たをす
   四ツ手にくまんとするを我右の手の四指を相手の内甲右の方吹返の邊に入是も
  ○四ツ指のふしをかたむれは強く痛む也左の手にてしころを取我右の足を大こしに
   踏入一拍子にひねりたをすかため様同前

一 しころひねりの事  左の手をおとかひ[頤]に付右の手を敵の後に
  さし廻し敵の右のしころにかけ一調子にひねり返す也
  ○右同前也

一 折指の事  おとかひにて[手]をかけつき上て當り甲のてへん[天辺]に指を
  いれ一調子に首を折也
  ○相手の甲のまひさしに我手のはらを付左の手にて相手のしころ後の方を取り一拍子に
   首を折あをのきにたをす

一 さかおとしの事  敵のむねに我頭を付敵押掛る拍子をうけて我右の
  膝をつき敵の腰にさかり我首を敵の腰に當右の手はむないたを取り
  左の手は上帯を取そへ中にあけてさかしまにおとすつり合第一也
  ○後より相手ひたといだ●を息廻のかたちにてつり右の手を右かたにあけ相手
  の甲のしころを取て身をさかり前におとす也

一 追かけしころの事  追付てしころを大ゆひを内に四指を
  外に取て敵に引添て身を下り一調子に引也
  ○右同前也

一 引腰の事   ○相手我上帯を両手に取引寄るを我左の手は
  相手のしころの後を取右の手はよたれかけを取右のひざをつくと一度にひ
  ねり返す

一 左右しころの事 ○前にて甲組左右遊悦を相傳し進也

一 折小手の事   ○相手我上帯とのとに手を付るを我右と相手
  の右の手を取我左の手にて下より相手のひちを打上其拍子に我左の手の横骨
  にて相手のひちにあてゝうつふしにたおす

一 草すり引の事  一っさつそくのかまへにて敵草すりを引時
  足を強くふみはり身をさかりて釣合也後の手にて我もゝを押也
  ○右同前扱相手横に引其拍子にてうてを取てむそふに入てたをしかたむる

  右取合の所作は筆力の及候処にあらすくわしくは執行にあら
  されは具ならすといへ共只其大かひ[概]を記書物也

四天流組討註釈書:綱利公御稽古の目録





      綱利公御稽古の目録

一 前一巻は藝のゐけんなり

      赤身之巻 第二

一 草すり引の事    前に有

一 骨の當の事     同断

一 引立の事      居合取組に有り

一 太刀を引立る事   同断一はつかかしら小手の甲を當る一ツは
  刀をぬきかけて敵の手の首を當る

一 左右手の勝の事  敵は両手にて取付て有を両手は自由
  なり 眼につよく當るを云

一 太刀に不引立事  敵のむかふすねを片足にてふみて居は引る事
  ならぬ也

一 引立る時當の事  時を取たる手の甲に込こふしと以當る

一 手の内の事    初より強く取てはもきれて離れあし
  ゆるくとつて敵のもかひてもかひてはなさんとするかしらを
  ひしとしめる手の内を云

一 大小柄廻りの事  居合取組に有り

一 左右の勝の事

一 行相勝の事

一 行相當の事   込こふしを以横腹に當る又はまりんに當る

一 込こふしの事   前に有

一 瀧上けの事    同断

一 追かけ者の事   先に有て並て追行事

一 だきころす事   後よりたきて大指の節をまりんに當候息
  込を以一拍子にしめころす

一 追掛だき様の事  たくと其侭下りて引すへる也少々の間も
  立ち居さる物也

一 左右より引立られさる事 取組に有り大ゆるき也

一 一さつ足の事   前に具に有

一 四方袖の事    惣て前後左右より四人ならては人に取付事
  はならさる者也何百人有ても四人の拂は身に障なし一つさつ
  くの構を以四人の當りたおす時は別に敵なし

一 八分の當りの事  前に有り

      風身之巻 第三

一 追懸しころの事  同断

一 上〃勝の事    前に有之折首の事也

一 稲妻劒左右の事  敵にくむと其侭脇差をぬきてつくを取

一 四方抜の事

一 の請の事   又前に有り

一 當り三十一ヶ所の事 惣て人は前後左右の四筋の當りならて
  其肉には當きけさる者也此四筋はいつ方に當りてもきける
  ものなりあかち竹一ヶ所も定りたるにあらす又曰何方にて
  も骨の上をこみこふしにてつくへし皆能當り也

一 数千騎を抜行事 きつそへのかまへを以こふし又はひち
  にて當るぬけ行也

一 馬上組討の事   居合の巻に有り

   をとし
一 逆の事     前に有之さかおとし也

      空身之巻 第四

一 頭渡の事   前有之しころひねり同前也

  すひ
一 尾仕掛の事   敵の両眼惣躰西に當て其拍子に勝を云り

一 みけんかくしの事 前に有

一 一指の當りの事  まりん横腹眼なと當るによくきける物也
  人指ゆひにてあたる也平人は赤金を以指とまかふ様に作り我指
  の色にぬりてさし打むへし是非事也能執行する時は常の指にて
  當る也又は大ゆひにてあたる何も骨を堅にうけて當る也人指指
                    また
  と延てあたりさまに大指にて當り引取時又人指を延る見分には人さし
  にて當ると見ゆる是秘事也

一 盤石の事   人をたおすことは先我身を堅くすへし一さつ
  足の技を以我身の格をきわめ扨人に勝を云

一 幼の事    なまりなく早き位を云■■■とあたりて敵の首と
  するかしらを其拍子とぬかす勝を云ふ

一 あうむの事  人に當るに只あたりたるははつし無之して
  當よはし息込を以つめてうんと當る

一 五之巻は極意也以上五巻也

四天流組討註釈書:尊師高重の伝記





一 尊師高重若かりし時ほふふり[棒振]の商人或百姓日用取の類
  の下〃力量のたつ氣成者をなつけ[懐け]集て念頃にして是に酒食
  をあたへ銭衣等をとらせて是を朝夕夜のことくし給ふ皆人是を
  さして朋輩と出合す下〃を友とし給ふをそしる是まつたく吉と
  思ひ給ふにあらず歴〃の侍は打たおし蹴ころし當りたおすことならす
  此者ともに酒なとあたへて常にねちあひ蹴たおして自分の稽古を
  し給ふ又居合に大つは[鐔]を工夫して貫せ給ふ是又常に不怠力能する
  強勢きしよふ[氣象]の者なけれは是を以不怠執行させ強力氣執力
  強く其志有者は請身を傳む有也凡請身は強力にあらされは
  徳少し故に高重一代餘多の弟子有りといえ共或は強力なれは■だ
  にして稽におこたり或は能執行をなす者は弱力にして躰骨其
  器に非す終に師に似たる者其出来さる者也後来強力器用にして
  正直にして勇有者有は此態と傳て此態を執行すれは自力
  一倍には成る也

一 一指の當りの事 惣の指をにきり人指を延てつくなり
  是表裏のこと也人をつく時大指にかきり替也其以来口傳に有
  又赤金にて人指指に本迄つまる様に抜て置是をこめてつく
  とも言非也

一 尊師高重仁王身と号て金剛力士の形をまね[真似]給ふ其興[おもむき]さなから
  木そふ[像]の仁王のことし是執行と又は躰とに寄也執行有ても躰悪
  けれは能学事能す弟子共是を學と云へ共高重のなし給ふに
  似たる者も非す誠に以て下手の作たる仁王のことしおかしき
  興也凡人の生付に面そう惣躰強弱色〃也高重の興はひれひなり
  といへ共惣躰面そふ勇氣備り忿る興をなし給へは則面そふ
  しゝむらあれて常の顔に變化する是執行の躰に惣應する故なり
  人〃興に強弱あり大力量の者は生付にあつてしゝむら荒て自ら
  堅肉面にと有也今も角力取の大力にヶ様の者多し是に此法を傳へ
  て能執行させは高重に似たる者出来へし世常の弱躰の者は
  執行しても能学こと有へからす乍去力量躰ともに其外に應
  しては常一倍のかたちとは成へし皆人常の躰にても此躰を學得様に
  思ふは非也中〃及ことにあらず是躰の強弱に有故也惣て何の稽にも
  躰の強弱其身の器用不器用あり不器用弱躰の者にても執
  行功を積其道を能智得する則は免書をあとふ[与ふ]へし是も身は
  不器用にして極〃いたらすといへ共傳ふへき道を能知る時は其
  弟子には又器用の者有之師に増る物出来ても希ひ後世にはんじふ[繁盛]
  する也凡技の極意は以心傳心也師教は一通にて実は心より心に傳ふ言に
  延旨の事に非すたとへは大道の■■とふを師にならゐて行時は
  其小道の近道又は道中のもろゝゝの事は其道を行時は其身の才に
      
  よつて能知るが如し其弟子とひと敷成つて免書をあたへんとす
  れは師は数年の功を積たる執行なり弟子は師の執行の功に及す
  此弟子又師の年数になれは師の執行に及んて功を増こと有る也師に
  ひとしくして免書をあたふる心にては免書の者まれにして流儀
  たん[断]絶する物也大方其道調は免書を出すへし免書を持ても余人の傳る
  者も有又は其身一分の徳にして人に傳へさる人もあり免書の者まれ
            こと
  なれは後世其流儀絶る事多是又師高重の傳也是によつて
  仁王身の事も我身は學得すといへ共能傳の受たり後来其器にあたる
  者有之不怠執行する者に傳受せは高重のことき者出来るへきも
  難にあらす



   文政四年
      十二月吉日写之    星野実福

四天流組討目録




 天下無双
   四天流組討目録
(印)
一 骨のあたり
一 腕ひねり
一 のうけ
一 廻り腕
一 逆ぬけ
一 朽木たをし
一 拉ころし

右條〃表組皆是赤身と云
自息廻起藝也口傳有秘事也

   同風身之巻

一 召捕
一 行相大ころし
一 同腕な
一 籠のこぶし
一 おとがひ詰
一 腰とまり
一 奏者捕
一 蹴あけ

右の條〃皆是根本風身と云自
息の廻り出来藝也大秘事口傳是也

   同空身之巻

一 八歩のあたり
一 甲組左右
一 眉間かくし
一 しころひねり
一 折首
一 ぬけ
一 坂おとし
一 追かけ
一 引腰
一 左右しころ
一 折小手
一 草摺引
一 仁王身
一 決り
一 多勢割

右の條〃逆鋒不滅の法是也
雖然皆是空身と云自息廻
出来法也口傳
 空身のその身に當るおんてきは
  立取にて退治こそすれ

當流の組討数年不怠執行
依有之流儀の手数無残所致
相傳畢以来全御執行可有之
者也仍目録如件

    成田清兵衛尉
        高重

    西 勇平次
        俊武

    堀田孫右衛門尉
        之寛

    星野角右衛門
        實員

    関 郡馬
        経貴

    星野龍介

天保五年
 午卯月吉辰 實壽[印][印][判]


   小栗又彦殿
      與之
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