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伯耆流居合の伝書

伯耆流居合免状
1616.元和弐年卯月吉日
片山伯耆守久安−谷忠兵衛

當流居合傳授巻物之寫:伯耆流身之金意味
1741.寛保元辛酉歳十二月
江口喜内之昌−星野角右衛門

當流居合傳授巻物之寫:當流居合目録
江口喜内之昌−星野角右衛門

當流居合傳授巻物之寫:當流居合免目録
江口喜内之昌−星野角右衛門

當流居合身之金意味聞書
星野

當流介錯口傳聞書
星野

居合兵法歌之書/應變之圖説
1805.文化二年丑二月吉日
片山友猪之介久豊−星野龍助

自臨巻目録
1805.文化二年丑二月吉日
片山友猪之介久豊−星野竜助

伯耆流居合目録
1832.天保三年閏霜月吉辰
星野龍助實壽−小栗又彦

伯耆流居合目録
1935.昭和十年二月吉日
星野龍太實重−星野宣敏
掲載史料及び参考資料
『伯耆流居合免状』私蔵文書
『當流居合傳授巻物之寫』私蔵文書
『當流居合身之金意味聞書』私蔵文書
『當流介錯口傳聞書』私蔵文書
『居合兵法歌之書/應變之圖説』私蔵文書
『自臨巻目録』私蔵文書
『伯耆流居合目録』私蔵文書

伯耆流居合免状

一當流居合太刀之事
貴殿数年被遂執心其上
手前次も我等雖多弟子一
段勝余御器用成故我等
手前不相残御相傳申者也
何方にても居合執心之旁
於在之ニ者堅誓詞をさせ
其上弟子の心を引見仍
於有之考ニ者極意なと
被成相傳候事者御無用
にて候殊ニ御手前弥夜白
共ニ被懸御心ヲ他流之
理方よりも無非様御心持
肝要たるへく候仍免状
如件

元和弐年
    片山伯耆守
 卯月吉日  久安(判)(印)

 谷忠兵衛殿
【訳】
一、當流居合太刀の事、貴殿数年執心遂げられ、其の上手前次も我等弟子多しと雖も一段と勝り余る御器用成る故、我等手前相残らず御相傳申すもの也。 何方にても居合執心の旁[方々]これ在るに於いては堅く誓詞をさせ、其の上弟子の心を引見し仍て考えこれ有る者に於いては極意など相傳成され候事は御無用にて候。 殊に御手前弥(いよいよ)夜白共に御心を懸けられ、他流の理方よりも非無き様、御心持肝要たるべく候。仍て免状件の如し。
元和弐年 片山伯耆守
 卯月吉日  久安(判)(印)

 谷忠兵衛殿

當流居合傳授巻物之寫:伯耆流身之金意味







  伯耆流身之金意味

一 身之金位惣而人之身者天地之躰ヲ受得タル故ニ天地
  之體ニ順シテ其矩ヲ極ル也人之本躰者南面シテ明ニ向ヒ左
  ニ東方之陽氣ヲ受右ニ西方之陰氣ヲ備ヘ背ニ北方ノ
  陰中ノ陽アリ南ニ陽中之陰アリ四方之位立則ハ四隅之
  位モ立是八卦ニ配シテ天地萬物之理備ル左右前後一ツモ
  其矩ニ違則ハ身之位金ナラス約而言之則天地圓満之
  氣トモ云ヘシ吾體之金正シカラサレハ物ニ應スルノ變化盡
  ス事ナラス故ニ先身之金ト云事ヲ立ル也八寸之體トハ右之
  方維円満ノ所八卦ニ配シテ言之四寸[時の略字]之打込トハ右ノ八方円
  満之位立ツ則ハ四時之行ハレテ万物生長収蔵之功アル如
  ク身之直ノ金立テ左右前後四方ニ變化自由ナルヲ云一
  年ニ八節立テ四季アリ一身ニ八寸之金有テ四支之働ア
  リ故ニ八寸之躰ヲ以テ四寸之切込ト云也金トハ則矩也又曲尺
  トモ書之也矩ハノリト訓スレトモ所以為方トアレハ是工人
  之用ル處ノ曲尺タル事明ケシ倭訓ニ是ヲカ子トヨム然則ハ
  矩モカ子ト讀ヘシ金モ倭訓ニカ子ト讀故ニ通シ用ユ金銀
  銅鐡皆カ子ナレトモ廣ク兼テ用ルハ金也其上金ハ寳之
  最頂彼圓満之矩ヲ得レハ實ニ身之重宝一代用テモ盡サ
  ルノ寳タル意味ヲ以テ金ト云ナルヘシ位トハ夫々ノ矩ノ立ヲ云
  目ハ見耳ハ聞手ハ取足ハ蹈ム上下貴賤ノ列アルカ如ク
  人之躰モ圓満シテ分定ル所ヲ云事其位ヲ不知則其術賤
  右ノ心得ヲ以執行シテ遠近左右應セスト云事ナシ故
  身之金之位ト立ル也
一 目附之事遠山の目付拳の目付と云事有リ惣シテ敵の
  見様目の付処肝要なり遠山の目附といふハ敵にはま
  らぬ見様也大様に遠山を見ることく一はひに見るなり
  如此見る則ハ敵の働も精く見へて變化自由也敵も
  はつしあひしそふこと難成なり是ハ一切に渡りて平生
  覚悟に成事なり拳の目付ハ敵の動処其かしらを
  勝心也
一 浮木の事是は膝詰之敵の時勝之仕様なり跡へ一足
  立退時に抜き足を蹈替て切付ルなり其味喩ハ浮木
  のことし水木を浮るや木水にうくやいつれ極めかたし
  我如此して抜や太刀の如此抜るや不覚しらす敵に應して
  勝くらひ也
一 手掛の事是ハ間遠き敵に勝の仕様なり間相に責
  付手を太刀に懸るとひとしく打込なり手掛ると敵に見
  らる則ハ延引して勝利なし我手の太刀に掛る処大
  事也
一 色相之事是ハ敵の色相を見ることなり大方の
  人ハ其色を顕ハして事に發するゆへに是ハ見能き
  なり達人ハ其色を秘して顕ハさゝるゆへ覚悟も油断
  あるへきなり我色も窺れさる覚悟肝要也
一 息相の事是ハ人の呼吸ハ氣の往来なる故氣さ
  だつ則ハ息あらし其時は心もうわつりて事を仕
  損する事有我氣を能静め能〃工夫をすへき也又敵
  の呼吸も察せす人ハあるへからす労せすして勝事
  を知るへし                
一 陰陽の事是ハ他流にあふを抜といふ當家にハ是を
                       
  陰陽と云右の膝を立て抜付て左の膝を立替て
  打也却而左右の働自由ならてハ勝利なし左右ハ
  則陰陽なり
一 残心之事是ハ相並ひて居時其座を立離れ敵の
  氣を抜立帰て切事也躰ハ其座を立離れて
  も心は残し置て打をいふ
一 間積の事敵の間其間相をしりて勝負を決する也
  何間何尺の定まるかねハなし心拍子の積り有物也
一 戸入之事是ハ門戸出入の用心なり敵萬一隠れ居
  て内へ入時懸る事有へし柄を抜出し自然打懸ル
  則ハ柄ニて受其下に身を隠し夫を縁にして抜付ル也
  惣シテ物陰門戸の出入うかと心得へからす

  右之一巻當流雖爲秘傳貴殿晨月夕
  習學依無御怠慢其令感心不得黙而先
  師相傳身之金之意味無殘相傳畢尚廻
  工夫鍛錬可至誠心直通者也

   寛保元辛酉歳    江口喜内

    十二月        之昌 判
【訳】
  伯耆流身之金意味

一 身の金位
 惣じて人の身は天地の躰を受け得たる故に天地の體に順じて其の矩を極むるなり。人の本躰は南面して明に向い、左に東方の陽気を受け、右に西方の陰気を備え、背に北方の陰中の陽あり、南に陽中の陰あり。四方の位立つ則(とき)は四隅の位も立つ、是れ八卦に配して天地萬物の理備わる。左右前後一つも其の矩に違う則(とき)は身の位金ならず。約(つゞ)めて之れを言う則(とき)天地円満の気とも云うべし。吾體の金正しからざれば物に応ずるの変化尽す事ならず、故に先づ身の金と云う事を立つるなり。八寸の體とは右の方維円満の所八卦に配して之れを言う。四時の打ち込みとは右の八方円満の位立つ則(とき)は、四時の行われて万物生長収蔵の功ある如く、身の直の金立て左右前後四方に変化自由なるを云う。一年に八節立て四季あり、一身に八寸の金有りて四支の働あり、故に八寸の躰を以て四寸の切り込みと云うなり。 金とは則ち矩なり。又曲尺とも之れを書くなり。矩はのりと訓ずれども、方為(た)る所以とあれば是れ工人の用いる處の曲尺たる事明けし。倭訓に是れをかねとよむ、然る則(とき)は矩もかねと読むべし。金も倭訓にかねと読む故に通し用ゆ。金銀銅鉄皆かねなれども、広く兼ねて用いるは金なり。其の上金は宝の最頂、彼の円満の矩を得れば実に身の重宝、一代用いても尽きざるの宝たる意味を以て金と云いなるべし。 位とは夫々(それぞれ)の矩の立つを云う。目は見、耳は聞く、手は取る、足は蹈む、上下貴賤の列あるが如く人の躰も円満して分定る所を云う事、其の位を知らざる則(とき)其の術賤し。右の心得を以て執行して遠近左右応ぜずと云う事なし。故に身の金の位と立つるなり。

一 目附の事
 遠山の目付、拳の目付と云う事有り。惣じて敵の見様、目の付け処肝要なり。遠山の目附というは、敵にはまらぬ見様なり、大様に遠山を見るごとく一杯に見るなり。此くの如く見る則(とき)は、敵の働きも精しく見えて変化自由なり。敵もはつしあひしそふこと成し難きなり是れは一切に渡りて平生覚悟に成す事なり。拳の目付は敵の動く処、其の頭(かしら)を勝つ心なり。

一 浮木の事
 是れは膝詰の敵の時勝つの仕様なり。跡へ一足立退く時に抜き、足を蹈み替えて切付けるなり。其の味、喩えば浮木のごとし、水木を浮るや木水に浮くやいづれ極めがたし。我此くの如くして抜くや太刀の此くの如く抜くるや覚えず知らず、敵に応じて勝つ位なり。

一 手掛の事
 是れは間遠き敵に勝つの仕様なり。間相に責め付け、手を太刀に懸るとひとしく打込むなり。手掛ると敵に見らる則(とき)は延引して勝利なし。我手の太刀に掛る処大事なり。

一 色相の事
 是れは敵の色相を見ることなり。大方の人は其の色を顕わして事に発するゆえに是れは見能きなり。達人は其の色を秘して顕はさゞるゆえ覚悟も油断あるべきなり。我色も窺われざる覚悟肝要なり。

一 息相の事
 是れは人の呼吸は気の往来なる故気さだつ則(とき)は息あらし。其の時は心もうわづりて事を仕損ずる事有り。我気を能く静め、能〃工夫をすへきなり。又、敵の呼吸も察せず人はあるべからず、労せずして勝つ事
を知るべし

一 陰陽の事
 是れは他流にあうを抜という、当家には是れをば陰陽と云う。右の膝を立て抜付けて左の膝を立替えて打つなり。却って左右の働き自由ならでは勝利なし。左右は則ち陰陽なり。

一 残心の事
 是れは相並びて居る時、其の座を立ち離れ敵の気を抜き、立ち帰りて切る事なり。躰は其の座を立ち離れても心は残し置きて打つをいう。

一 間積の事
 敵の間、其の間相を知りて勝負を決するなり。何間何尺の定まるかねはなし。心拍子の積り有るものなり。

一 戸入の事
 是れは門戸出入の用心なり。敵万一隠れ居りて内へ入る時、懸る事有るべし。柄を抜き出し自然打ち懸る則(とき)は、柄にて受け其の下に身を隠し、夫れを縁にして抜き付けるなり。惣じて物陰門戸の出入、うかと心得べからず。

當流居合傳授巻物之寫:當流居合目録





  當流居合目録

   身之金之位

一 目附之事
一 浮木之事
一 手掛之事
一 色相之事
一 息相之事
一 陰陽之事
一 殘心之事
一 間積之事
一 戸入之事

   表

一 向之刀
一 除身
一 引取
一 胸之刀
一 籠手切
一 押抜
一 開抜

   中段

一 突留
一 四方金切
一 向詰
一 決付
一 一作足
一 頂上
一 切先返
一 三之柄捕    口傳有

   詰合之大事

一 壁附
一 角附
一 腰搦
一 前後之抜
一 夜之太刀
一 籠手詰
一 夢之枕

   極意

   介錯太刀   有習

一 義錯罪錯といふ差別ある事
一 頸を打に左右の秘事の目付の事
一 頸を打間相宜き時分を知る事
一 切腹の武士をそたてるといふ訳の事 附タリ其時之よろしきニ
  随ひ寛悟之事
一 臨氣應變之事

     右口傳

 右目録者當流之大綱也貴丈依御志学等
 敬而令附与畢夫綱不立則細目不可得
 成所謂本立而道成之謂也自今而後猶以
 尽心力則其奥義可有自得者也仍如件

             江口喜内
                 
               之昌 判

當流居合傳授巻物之寫:當流居合免目録



   當流居合序

 夫當流居合謂古今絶唱也我従幼少在志於
 武道而學他流之理方數百流因無決座中之
 勝負慶長丙申年孟春撰吉日良辰七日
 七夜参籠愛宕山云云寅時夢中有一老僧
 来推予枕子曰汝為勵武道来茲嗚呼深哉
 有其志矣我不勝感激授爾向上之一流克
 用之則途中一更用譬雖遇異國樊噲張良
 其勝必矣況又於我朝人乎此事可秘言畢
 不見矣夢中至于今此儀一事更不違是以
 傳之於世人加之慶長十五年庚戌中呂八日参
 禁中遂一奏
 帝王云則感其事書伯耆二字以賜予誠是
 天鑑無私也余夢想一流順行逆得大自
 在傳授之門弟子可秘可保

   當流居合免目録

一 向之二刀
一 脇之二刀
一 捕刎
一 四方詰
一 聲之抜

 右之條々師資承而今于之學術之志厚朝
 請暮益至道々之間奥感嘆之餘毫末不殘
 授畢許爾獨歩於四海仍而免状如件

             片山伯耆守
               藤原久安

             淺鬼一無齋

             薗田九左衛門尉

             小靏五左衛門尉

             下田角兵衛尉

             田代與五郎

             粟津権兵衛尉

             久布白喜郎左衛門尉
                  藤原充春

             江口喜内
             
                
              之昌 判
【訳】
夫れ当流の居合は謂く古今絶唱なり。我、幼少より志在り武道に於ける他流の理方数百流を学ぶ。因て座中の勝負を決すこと無し。慶長丙申[元]年孟春の吉日良辰七日を撰み、七夜参籠す愛宕山云云。寅ノ時夢中に有って一老僧来り推予す、枕子曰く「汝、武道に勵む為茲に来る、嗚呼深き哉其の志有り、我れ感激に勝へず爾(なんぢ)に授く向上の一流、克く之れを用いれば、則ち途中一更用、譬えば異國の樊噲・張良に遭うと雖も、其の勝つこと必せり。況んや又我が朝人に於いてをや。此の事秘すべし」と言い畢り見えず。夢中于に至り、今此の儀一事更に違わず、是れ以て世人に之れを伝え、加之(しかのみならず)慶長十五年庚戌中呂八日、禁中に参り遂一帝王に奏す云。則ち其の事に感じ伯耆二字を書し以て予に賜う。誠に是れ天鑑無私なり。余の夢想一流は順行逆大自在を得る、傳授の門弟子は秘すべし保つべし。

當流居合身之金意味聞書










 伯耆流身之金之意味

   流義の訳并居合起り等之事ハ別ニ有之ニ付爰ニ畧
   身之金と云心ハ左ニ詳也意味とハ先意ハコヽロハセ又ハ
   コヽロとも讀味ハアヂワヒと讀爰に意味と出ス事訳と
   記ても事としるしても同事の様なれども至て深長なる
   理を引起さんために意味としるせるなるへし味と云心ハ物
   を喰覚たとへハ丼き物と云ても蜜と砂糖の味は格別
   なり云処ハ同し丼き物なれ共如此の違有爰を以其
   道に入て其理を味わへと云理を以記せるなるへし
一 身之金位惣而人之身者天地之躰ヲ受得タル故ニ天
  地之躰ニ順シテ其矩ヲ極ル也
   人之身ハ天地の躰を受得たると云ハ天ニ日月五星あるが
   ごとく人に両眼両耳鼻口の七穴有両眼ハ則日月を
   表す左ハ陽にして日右ハ陰にして月也天に日月有て
   萬物を明にし人に両眼有て萬物明なり又五星とハ
   木火土金水の五星也五臓則此五行をはつるゝ叓無し
   天の形に随ひて頭ハ圓く地の形に随て足ハ方なり
   又草木ハ逆に生し鳥獣ハ天地横に請る故ニ天地の
   躰を受得たるとハ云かたし草木の逆に生るとハ上を
   末と云本を本と云訳を以逆に生ると云依之人を万
   物の長とも云則天地の躰を受得たる故也故に天地の
   矩に随て身の矩を立られしなるへし
  人之本躰者南面シテ明ニ向ヒ左ニ東方之陽氣ヲ受
  右ニ西方之陰氣ヲ備ヘ背ニ北方之陰中之陽アリ南ニ
  陽中之陰アリ
   人の本躰ハ南面して明に向ひとハ右にも有之通人ハ
   天地自然の侭に生れきたる物なれハ陰陽に随ふ事
   又自然の理也本躰を南面と定る叓ハ南則陽也
   北則陰也人の躰も前ハ陽背ハ陰故南面するときハ
      タガ
   陰陽に差ふ事無し恐らくは
   天子南面仕給ふ叓を以考へし明に向ひと出せる事
   此明の字要の文字にして右の陰陽の理を含人の本
   躰にもとつき武道に入所のミなもとにして道の明なる
   根本たる故を以出せるならん左に東方の陽氣を受
   右に西方の陰氣を備へ背に北方の陰中の陽有南ニ
   陽中の陰有りとハ右に顕すことく南を陽北を陰と
   云叓常にして八卦にも如此出たり然れ共爰ニ東方の
   陽氣西方の陰氣なとゝ記せるハ其きさす処のみなもと
   を以定らるゝと見へたり四季に配する時ハ東ハ春にして
   陰中の陽南ハ夏にして陽西ハ秋にして陽中の陰北ハ
   冬にして陰と配する事常なれ共其陰陽の氣秋
   きさす所を以夏に配らるゝ叓武道に取ての理第一の
   儀なるへし
  四方之位立則ハ四隅之位モ立是八卦ニ配シテ天地萬物之理備ル
   右之通東西南北の理立時ハ四隅の位も備る也四隅とは
   其すミゝゝの事也是を八卦に配して天地万物の理備りとて
   四方と四隅と合て八方なる故ニ八卦に配り合せるなり
   八卦ハ改云に及ざれとも乾兌離震巽坎艮坤是を八
   卦と云方角に配するにハ東震とし東南の間を巽
   南を離南西の間を坤西を兌西北の間を
   乾北を坎北東の間を艮如此配する也此八卦と
   いふハもろこしにて伏羲作り初給ふ云て天地萬物の理
   此八卦の外なしたとへハ耕作或ハ細工等ニ至迄悉此八卦
   にもとづく此故に天地萬物の理備るといゝ傳るへし
  左右前後一ツモ其短ニ違則ハ身ノ位金ナラズ
   左右前後一ツも右の矩に違ふ時ハ巳[己]が受得たる所の
   本躰を背くか故に身の位金ならすと云う此矩ならすと
   いふ矩の字も本かね相のかねなれとも先に出る通の理前
   ゆへに金の字を用かねならすとハ身の格崩れて矩に合
   ずと云事也右のことく出し侍れどもいつも居合ハ南面して
                    コトヂ
   斗抜事と心得てハよろしからす夫ニハ柱ににかわするの
   たとへにして只へんになづむと云物也南面とハ右の四方
   四隅天地陰陽の理に随ひて躰を定る時ハ躰生レの侭
   にして正敷備る理を以也此躰の正敷上にてハいつれの方角
   いかなる敵に向ひても其矩を以業をなす也躰ハ主人の
   ことく手足ハ臣下のことし主人の善悪によりて必臣の
   善悪ある物なれハ其主人たる躰の矩合第一也曾而
   居合の働方角にかゝわる事にあらす
  約シテ言之則ハ天地円満之氣トモ云ヘシ
   約而とハツヽメルト讀て引つゞめていはじと云事也右の四方
   四隅の位を引つゞめていふ時ハ天地圓満の氣と云なり
   天地圓満とハ四方四隅の矩正しく天地四方一ぱいに我気
   の満渡りたるを云也如此なる時ハいかなる敵にても其業
   明らかに我氣に乗り又前後左右いつ方ゟ不意に来る
                 タチマチ
   敵といふとも氣の轉動なくして忽知る事必然たり
  吾躰之金正シカラサレハ物ニ應スルノ變化盡ス事ナラス
  故ニ先身之金ト云叓ヲ立ル也
   右ニ云我躰の金正しからされハ敵に對して無量の變
   に應じ此方ゟ業をなす事ならずたとへハ大工の家を
   作るにも先正しき所の矩を以其材木の直なる木曲り
   たる木に従ひて遣ふ所の變化ありすなをなるかねによら
   ざれハ成かたし故に居合を教るにも其身のかねを正す
   事執行の根本なる間身のかねと云叓を立られしならん
   我身のかね天地のかねに違ハず正く備わる時ハ天地の内
   いかなる者か敵せん
  八寸之體トハ右之方維円満之所八卦ニ配シテ言之
   方とは則四方也維とハ四維也四隅の事也右に云所の四方四
   維に圓満して位したる所を八卦に配して八寸の體と云惣而
   人の躰の乳間八寸と立たる物也正しく座したる形を八寸の
   體と云
  四時之打込トハ右之八方円満ノ位立則ハ四時之行ハレテ万物
  生長収蔵之功アル如ク身ノ直ノ金之金立テ左右前後
  四方ニ變化自由ナルヲ云
   八方円満の位立とハ四方四維の位也此位定りてハ其内に
   春夏秋冬の四時行レ萬物収蔵の功有とてたとへハ草
   木の春生し夏ハ其枝葉茂りて秋に至りてハ又枯れて
   其氣根に収り冬ハ弥其精根に隠れて枯木のことく
   なる類皆生長収蔵の功也人の躰も其ことく天地圓満の
   位定り直の金立ときハ左右前後いかなる變化も自由ニ
   成る也天地八方圓満して其内に四時の運行萬物の移り
   替り有事なすことなくしておのづから自由なる訳を以たとへ
   四時の打込と名付
  一年ニ八節立テ四季アリ一身ニ八寸之金有テ四支之働アリ
  故ニ八寸ノ躰ヲ以四寸之切込ト云也
   八節とハ立春春分立夏夏至立秋秋分立冬冬至是を
   八節と云廿四季とて節と中と一月ニ二節宛一ヶ年に廿四
   切なれとも其内の要の分八節則右之通也四季とハ春
   夏秋冬の四時也一年に八節立て其内に四季備れり其
   ことく人にも又一身の内に八寸の金有て四支の働有八寸の
   金とハ右ニ云八寸の體也此八寸の體を八方の體八方の金など
   といわすして八寸の體と云ハ前にも出すことく乳ゟ乳の間
   八寸と立たる故に正敷座する躰を両方の理を束て八寸
   の體と云右八寸の躰有がゆへに四支の働備れり四支とハ
   手足の事也此手足の働ハ則右八寸の躰に従て巳[己]〃に司ル
   所の職有事八節立て四季あることし又右八寸の躰を以
   左の方へ浮木残心なとのことく切込時ハ躰角違になる故
   八寸の半分にかゝる躰なるを以八寸の躰を以四寸の切込といへり
   是則變化自由なる所のおしへなるへし
  金トハ則矩ナリ又曲尺トモ書之也
   金ハ身の金の金と云字又文面にも是を用たる也此金の字の
   心をいへハ則矩と云意也又曲尺とも書くとハ則矩も曲尺も
   同理也先ニ委し
  矩ハノリト訓スレトモ所以為方トアレハ是工人ノ用ル處ノ曲尺
  タル叓明ケシ
   矩ハのりとよむ也然共字義をいへば所以為方とて四角
   なる物を作る所の物を云也夫故に是大工の用る所の曲尺
   たる事証據明なると云事也曲尺ハまがりかね也矩をハ
         ノリ
   かねとも讀先法と云物道を治るかねなる故のりとかねと
   等し
  倭訓ニ是ヲカ子ト讀然則ハ矩モカ子ト讀ヘシ金モ倭訓ニ
  カ子トヨム故ニ通シ用ユ
   倭訓と云ハ我朝のよミならわしと云事也是をとさしたるハ
   曲尺の事をさす身の矩或ハ身の曲尺と可書も理なれ共
   矩も曲尺も金も同し讀なるを以流儀にハ金を書来る
   事也次に詳なり
  金銀銅鉄皆カ子ナレトモ廣兼テ用ルハ金也
   右何もかねハかねなから廣く兼而用ルと云ハ唐土天竺我
   朝其外の外国に至迄尊ひ用るハ金也外国の内にハ銅
   を以金のことく通用の国も有よしなれ共是ハ其一國斗
   の事にて外〃の国ハ通用しかたし
  其上金ハ寳ノ最頂彼円満之矩ヲ得レハ實ニ身之重宝
  一代用テモ盡サルノ寳タル意味ヲ以金ト云ナルヘシ
   宝の最頂とわ上もなき宝と云儀也たとへハ瑠璃珊瑚樹
   其外の珍玉なとも成程上なき宝とハ申せ共天下國家の
   助とハならす或ハ武器用器を拵或ハ窮民をすくふなとゝ
   云用にハ立かたし故に金を以無上の宝とハ申せし然るに
   當流彼圓満の矩を修練する時ハ実に身の最頂の宝
   にて一代用ても尽さる物と見へたり夫故金の字を専ら
   用ル也尤矩の心も籠れり又金銀銅鉄かねハ同しかねな
   がら久しく泥土に埋るゝ時ハ銀銅鉄ハことゝゝく錆腐る
   然共金の最上たる所ハ泥にも錆す焼ても變する事無し
   當流圓満の金是に違ふ事なく一たひ身に得るときは
   いかなる泥中にも不染火中にも不焼の理にしていかなる
   奥に乗ずるとても是をはらへハ則圓満の氣也爰を以
   金の字の意顕然たり誠に本心を失せざる事第一也
  位トハ夫々ノ矩ノ立ヲ云目ハ見耳ハ聞手ハ取足ハ蹈ム上下
  貴賤ノ列アルカ如ク人ノ躰モ円満シテ分定ル所ヲ云叓其位ヲ
  不知則ハ其術賤シ
   位とハ位階の事にして夫〃の役儀に従ひ段格ある叓を
   いへり此位階正しからさる時ハ人をつかふ事も成がたし矩の立
   叓を位と顕せり人の身にも耳目手足の役儀夫〃の
   司る所有然れ共圓満の氣とゝのわざれハ適天性生レ
   得たる所の役儀も貴賤上下の列に従ひ其役〃〃に應し
   遣ひ得る事あたわずたとへハ主人の臣を遣ふにも夫〃の
   分職貴賤上下に應し司る所を以遣わざれハよき臣も
   悪しき物也手の刀釼に心移れば足の蹈所を失し足
   の進退を専らにすれハ手の業を忘る是を氣の
   圓満せざるか故也故に其位を不知則ハ其術賤しとて
   為所の業あさはかなると云事也
  右之心得ヲ以執行シテ遠近左右應セスト云叓ナシ故ニ
  身ノ金之位ト立ル也
   右の心得を以執行し得る時ハ遠近左右矩のたがふ事
   無く心の侭に敵に應するの變化自由なる故に身ノ金
   之位と立らるゝと云叓なるへし是迄ハ此一巻序文にて
   身の金の業の心得此次に顕さるゝ也
【訳】
 伯耆流身の金意味

流義の訳并(なら)びに居合起り等の事は、別に之れ有るに付き爰(こゝ)に略す。
身の金と云う心は左に詳びらかなり。意味とは、先づ意はこゝろばせ又はこゝろとも読む、味はあぢわいと読む、爰に意味と出す事、訳と記しても事と記しても同じ事の様なれども、至て深長なる理を引き起さんために意味と記せるなるべし。味と云う心は物を喰い覚え、たとへば丼き物と云いても蜜と砂糖の味は格別なり、云う処は同じ丼き物なれ共、此くの如くの違い有る。爰を以て其の道に入りて其の理を味わへと云う理を以て記せるなるべし。

一 身の金位、惣じて人の身は天地の躰を受け得たる故に天地の躰に順じて其の矩を極むるなり。
 人の身は天地の躰を受け得たると云うは、天に日月五星あるがごとく、人に両眼両耳鼻口の七穴有り。両眼は則ち日月を表す、左は陽にして日、右は陰にして月なり。天に日月有りて萬物を明らかにし、人に両眼有りて萬物明らかなり。又五星とは木火土金水の五星なり。臓、則ち此の五行を外るゝ叓無し。天の形に随いて、頭は円く地の形に随いて、足は方なり。又、草木は逆に生じ、鳥獣は天地横に請くる。故に天地の躰を受け得たるとは云いがたし。草木の逆に生じるとは上を末と云い本を本と云う訳を以て、逆に生じると云う。之れに依て人を万物の長とも云う、則ち天地の躰を受け得たる故なり。故に天地の矩に随いて身の矩を立てられしなるべし。

人の本躰は南面して明に向い、左に東方の陽気を受け、右に西方の陰気を備え、背に北方の陰中の陽あり、南に陽中の陰あり。
 人の本躰は南面して明に向いとは、右にもこれ有る通り人は天地自然の侭に生れきたる物なれば、陰陽に随う事、又自然の理なり。本躰を南面と定る叓は、南則ち陽なり、北則ち陰なり。人の躰も前は陽、背は陰故南面するときは陰陽に差(たが)う事無し。恐らくは天子南面仕給う叓を以て考えし明に向いと出せる事。此の明の字、要の文字にして右の陰陽の理を含み、人の本躰にもとづき武道に入る所の源(みなもと)にして道の明らかなる根本たる故を以て出せるならん。
 左に東方の陽気を受け、右に西方の陰気を備え、背に北方の陰中の陽有り、南に陽中の陰有りとは、右に顕すごとく南を陽、北を陰と云う叓常にして八卦にも此くの如く出たり。然れ共爰に東方の陽気、西方の陰気などゝ記せるは、其の兆す処の源(みなもと)を以て定めらるゝと見えたり。四季に配する時は東は春にして陰中の陽、南は夏にして陽、西は秋にして陽中の陰、北は冬にして陰と配する事常なれ共、其の陰陽の気、秋兆す所を以て夏に配らるゝ叓武道に取りての理第一の儀なるべし。

四方の位立つ則(とき)は四隅の位も立つ、是れ八卦に配して天地万物の理備わる。
 右の通り東西南北の理立つ時は四隅の位も備わるなり。四隅とは其の隅〃の事なり。是れを八卦に配して天地万物の理備わりとて四方と四隅と合せて八方なる故に八卦に配り合せるなり。八卦は改めて云うに及ざれども、乾兌離震巽坎艮坤是を八卦と云う。方角に配するには東震とし、東南の間を巽、南を離、南西の間を坤、西を兌、西北の間を乾、北を坎、北東の間を艮、此くの如く配するなり。此の八卦と云うは、唐土にて伏羲作り初め給う、云いて天地万物の理、此の八卦の外なし。たとえば耕作、或いは細工等に至る迄悉く此の八卦にもとづく。此の故に天地万物の理備わるといゝ傳るべし。

左右前後一つも其の矩に違う則(とき)は身の位金ならず。
 左右前後一つも右の矩に違う時は、巳[己]が受け得たる所の本躰を背くが故に身の位金ならずと云う。此の矩ならずという矩の字も、本かね相のかねなれども、先に出る通りの理前ゆえに金の字を用い、かねならずとは身の格崩れて矩に合わずと云う事なり。右のごとく出し侍れども、いつも居合は南面して斗(ばか)り抜く事と心得てはよろしからず。夫れには柱(ことぢ)に膠(にかわ)するのたとえにして、只へんになづむと云う物なり。南面とは右の四方四隅天地陰陽の理に随いて躰を定る時は、躰生れの侭にして正敷く備わる理を以てなり。此の躰の正敷き上にては、いづれの方角いかなる敵に向いても其の矩を以て業をなすなり。躰は主人のごとく、手足は臣下のごとし、主人の善悪によりて必ず臣の善悪ある物なれば、其の主人たる躰の矩合第一なり。曾(かつ)て居合の働き方角にかゝわる事にあらず。

約(つゞ)めて之れを言う則(とき)天地円満の気とも云うべし。
 約(つゞ)めてとはつゞめると読みて、引きつゞめていはじと云う事なり。右の四方四隅の位を引きつゞめていう時は、天地円満の気と云うなり。天地円満とは四方四隅の矩正しく天地四方一杯に我気の満ち渡りたるを云うなり。此くの如くなる時はいかなる敵にても其の業明らかに我気に乗り、又前後左右いづ方ゟ不意に来る敵というとも、気の転動なくして忽(たちま)ち知る事必然たり。

吾躰の金正しからざれば物に応ずるの変化尽す事ならず、故に先づ身の金と云う叓を立つるなり。
 右に云う我躰の金正しからざれば、敵に対して無量の変に応じ此方ゟ業をなす事ならず。たとえば大工の家を作るにも、先づ正しき所の矩を以て其の材木の直なる木、曲りたる木に従いて遣う所の変化あり、素直なる金(かね)によらざれば成りがたし。故に居合を教えるにも其の身の金(かね)を正す事執行の根本なる間、身の金(かね)と云う叓を立てられしならん。我身の金(かね)天地の金(かね)に違はず正しく備わる時は、天地の内いかなる者か敵せん。

八寸の體とは右の方維円満の所八卦に配して之れを言う。
 とは則ち四方なり、とは四維なり、四隅の事なり。右に云う所の四方四維に円満して位したる所を八卦に配して八寸の體と云う。惣じて人の躰の乳間八寸と立てたる物なり。正しく座したる形を八寸の體と云う。

四時の打ち込みとは右の八方円満の位立つ則(とき)は、四時の行われて万物生長収蔵の功ある如く、身の直の金の金立て左右前後四方に変化自由なるを云う。
 八方円満の位立つとは、四方四維の位なり。此の位定りては其の内に春夏秋冬の四時行われ、万物収蔵の功有りとてたとえば草木の春生じ夏は其の枝葉茂りて秋に至りては又枯れて其の気根に収まり冬は弥(いよいよ)其の精根に隠れて枯木のごとくなる類い皆生長収蔵の功なり。人の躰も其のごとく天地円満の位定まり直の金立つときは、左右前後いかなる変化も自由に成るなり。天地八方円満して其の内に四時の運行万物の移り替り有る事なすことなくしておのづから自由なる訳を以てたとえ四時の打ち込みと名付く。

一年に八節立て四季あり、一身に八寸の金有りて四支の働きあり、故に八寸の躰を以て四寸の切り込みと云うなり。
 八節とは立春・春分・立夏・夏至・立秋・秋分・立冬・冬至、是れを八節と云う。廿四季とて節と中と一月に二節宛て、一ヶ年に廿四切なれども其の内の要の分八節、則ち右の通りなり。四季とは春夏秋冬の四時なり。一年に八節立て其の内に四季備われり。其のごとく人にも又一身の内に八寸の金有りて四支の働き有り。八寸の金とは右に云う八寸の體なり。此の八寸の體を八方の體、八方の金などと云わずして八寸の體と云うは、前にも出すごとく乳ゟ乳の間八寸と立てたる故に正敷く座する躰を両方の理を束ねて八寸の體と云う。右八寸の躰有るがゆえに、四支の働き備われり。四支とは手足の事なり。此の手足の働きは則ち右八寸の躰に従いて巳[己]〃に司る所の職有る事、八節立て四季あるごとし。又右八寸の躰を以て左の方へ浮木・残心などのごとく切り込む時は、躰角違いになる故八寸の半分にかゝる躰なるを以て八寸の躰を以て四寸の切り込みと云へり。是れ則ち変化自由なる所のおしえなるべし。

金とは則ち矩なり。又曲尺とも之れを書くなり。
 は身の金の金と云う字、又文面にも是れを用いたるなり。此の金の字の心を云えば、則ち矩と云う意なり。又曲尺とも書くとは則ち矩も曲尺も同じ理なり。先に委(くわ)し。

矩はのりと訓ずれども、方為(た)る所以(ゆえん)とあれば是れ工人の用いる処の曲尺たる叓明けし。
 矩はのりとよむなり。然れ共字義をいえば、方為(た)る所以(ゆえん)とて四角なる物を作る所の物を云うなり。夫れ故に是れ大工の用いる所の曲尺たる事証據明らかなると云う事なり。曲尺はまがりかねなり。矩をばかねとも読む、先づ法(のり)と云う物、道を治めるかねなる故のりとかねと等し。

倭訓に是れをかねと読む、然る則(とき)は矩もかねと読むべし。金も倭訓にかねと読む故に通し用ゆ。
 倭訓と云うは我朝の読みならわしと云う事なり。是れをと指したるは曲尺の事を指す。身の矩、或いは身の曲尺と書くべきも理なれ共、矩も曲尺も金も同じ読みなるを以て流儀には金を書き来る事なり。次に詳らかなり。

金銀銅鉄皆かねなれども、広く兼ねて用いるは金なり。
 右何れもかねはかねながら、広く兼ねて用いると云うは唐土・天竺・我朝其の外の外国に至る迄、尊び用いるは金なり。外国の内には銅を以て金のごとく通用の国も有る由なれ共、是れは其の一国斗(ばか)りの事にて外〃の国は通用しがたし。

其の上金は宝の最頂、彼の円満の矩を得れば実に身の重宝、一代用いても尽きざるの宝たる意味を以て金と云いなるべし。
 宝の最頂とは、上もなき宝と云う儀なり。たとえば瑠璃・珊瑚樹其の外の珍玉なども成程上なき宝とは申せ共、天下国家の助けとはならず。或いは武器・用器を拵え、或いは窮民を救うなどゝ云う用には立ちがたし。故に金を以て無上の宝とは申せし。然るに当流彼の円満の矩を修練する時は、実に身の最頂の宝にて一代用いても尽きざる物と見へたり。夫れ故金の字を専ら用いるなり、尤も矩の心も籠れり。又金銀銅鉄かねは同じかねながら、久しく泥土に埋るゝ時は、銀銅鉄はことごとく錆の腐る。然れ共金の最上たる所は、泥にも錆びず焼きても変ずる事無し。当流円満の金、是れに違う事なく一たび身に得るときは、いかなる泥中にも染らず、火中にも焼けざるの理にして、いかなる奥に乗ずるとても是れを払えば則ち円満の気なり。爰を以て金の字の意顕然たり、誠に本心を失せざる事第一なり。

位とは夫々の矩の立つを云う。目は見る、耳は聞く、手は取る、足は蹈む、上下貴賤の列あるが如く人の躰も円満して分定る所を云う叓、其の位を知らざる則(とき)は其の術賤し。
 位とは位階の事にして夫〃の役儀に従い段格ある叓を云へり。此の位階正しからざる時は人をつかう事も成りがたし。矩の立つ叓を位と顕せり。人の身にも耳目手足の役儀夫〃の司る所有り。然れ共円満の気とゝのわざれば適[不適?]、天性生れ得たる所の役儀も貴賤上下の列に従い、其の役〃〃に応じ遣い得る事あたわず。たとえば主人の臣を遣うにも夫〃の分職貴賤上下に応じ、司る所を以て遣わざれはよき臣も悪しきものなり。手の刀釼に心移れば足の蹈む所を失し、足の進退を専らにすれば手の業を忘る、是れを気の円満せざるが故なり。故に其の位を知らざる則(とき)は、其の術賤しとて為す所の業あさはかなると云う事なり。

右の心得を以て執行して遠近左右応ぜずと云う叓なし、故に身の金の位と立てるなり。
 右の心得を以て執行し得る時は遠近左右矩のたがう事無く、心の侭に敵に応ずるの変化自由なる故に身の金の位と立てらるゝと云う叓なるべし。是れ迄は此の一巻序文にて身の金の業の心得此の次に顕さるゝなり。

當流介錯口傳聞書






   當流介錯太刀   有習

一 義錯罪錯といふ差別の事
  義錯とハ武道を立て切腹する□頸□ふ勿論
  追腹も義の第一なれハ云に及す義錯也此時先□
  法之通に用意相調如習介錯終て其討たる頸を
  絞り幕の上ゟ出し検使に見せ候時實倹ニ不及と有ハ
  其侭骸と一ツに手傳人に申付取納さすへし挨拶
  無之時ハ鬚髪等かうかいを以取繕直し置骸斗を
  先取納さすへし扨上輩の人の介錯を仕たる時ハ
  頸を討諸□仕廻たる上にて敷たる所の油単の角を
  折返し切腹人に引懸置へし是手つから骸骨を
  取納ると云心禮也又罪錯と云ハ武士の本文を失し
  盗賊なとのことき罪ある者の頸を討を云討者也
  是ハ刀を不用脇指を以片手討に□□る□也 (後筆:罪錯ニハ声ヲカケル)
一 頸を討に左右秘事の目附之事
  左右の目附とハ右と左にて介錯の心得替あるをいふ
  左より討時ハ髭の矩右より討ときハ膝の矩を以討
一 頸を討間相宜き時分お知る事
  此間相と云ハ初中終の三段のし□を合有先始は
  四方に手を掛る時の塩合中ハ二方をし□□□取
  □く時の塩合終ハ懐をくろけて己か腹を見込時
  の塩合此三段の塩合其時のよろしきに仍て打へし
  若此三段の潮合をはつしぬれハ討へき期ある
  ましき也
一 切腹の武士をそたてるといふ訳の事付たり
  其時の宜に随ひ覚悟之事
  切腹の武士をそたてると云武士の命を助育と
  云事にあらす其武士の勇名を育也たとへハ
  切腹の武士介錯人に心得□き早く死を見□めニ
  右三段之潮合をはつし快く腹切たる上にて
  かけ可申間其時介錯頼入など必望む者有ヶ様の
  時ハ其詞のこゝろなるを誉て承知したる由返答し
  其勇氣を育て其期に至てハ前の三段の潮
  合を過さす討へし是則其武士の勇と名とを
  育る所也不然して萬一腹に突立□力弱りて
  思ハさる不覚もあらん□□□れ也介錯人少早まり
  たる様に見へても此心得切腹の武士を育る所也
  其時の宜に随ひ覚悟といふハ文面の通にて勿論
  切腹の武士心中難斗物なれハ此方に油断有て
  不覚を取らさる心得第一なり自然心得違の
  切腹人の振廻なとあらんも計かたくいろゝゝ
  諸事油断有へからす
一 臨氣應變之事
  介錯□□き法式前條之通極る事にハあれ共
  格になつ□時□と□□□て斗難もあれは
  此ヶ様尤大切に心得へしと□也
     介錯一巻故實式 是ハ介錯人の預る事ニハあらされ共
             不知□□□□□ス
一 介錯人に切腹の武士盃を望し時覚悟之事
  此時ハ切腹ならハ酒を用て盃有へし追腹ならハ
  水を用へし酒を用ゆる時ハ甚敷血飛て余りいさきよく
  見ゆる故追腹の時ハ憚て水を用ゆる事なり
  追腹の時の骨組ハ 真□[鯛] 塩 ゆて牛蒡
  切腹の時の骨組ハ 鰹  塩 へき生姜
  此時土器□ひねり留を向へなして居置なり
  尤一品ニ用る也 畳之事
  □木畳とて如圖敷也尤白縁りか水浅黄縁也

  人      但倹使ハ切腹人の向に座着たるへし
  腹 介錯人  介錯人刀を抜時ハ倹使を後ろにして
  切      抜へし是禮也

一 幕之事
  四幅にし□乳なし縫様も常の幕とハ逆ニなる
  なり両端に四幅一はいに竹を縫□□置なり
  頸を討と其侭左右より竹を押立骸の倹使
  より見さる様に引立物也是を絞り幕と云
  但物見もあけさるもの也
一 油単之事
  四方の耳にくかりを付て袋□との様に
  こしらへて置へし色ハ白を用介錯済て
  骸を包くかりを引る為也是切腹の時□
  又追腹の時ハ血飛を憚る故に毛氈を用る故
  油単ハ不用事也
【訳】
   当流介錯太刀   習い有り

一 義錯罪錯といふ差別の事
 義錯とは武道を立て切腹する□頸□ふ、勿論追腹も義の第一なれば云うに及ばず義錯なり。此の時先□法の通りに用意相調え習いの如く介錯終えて、其の討ちたる頸を絞り幕の上ゟ出し検使に見せ候時、実倹に及ばずと有らば其の侭(まゝ)骸と一ツに手傳人に申し付け取り納めさすべし。挨拶之れ無き時は鬚髪等こうがい(笄)を以て取り繕い直し置き、骸斗(ばか)りを先づ取り納めさすべし。扨(さ)て上輩の人の介錯を仕りたる時は、頸を討ち諸□仕廻(しまい)たる上にて、敷きたる所の油単の角を折り返し、切腹人に引懸け置くべし。是れ手づから骸骨を取り納めると云う心禮なり。又、罪錯と云うは武士の本文を失し、盗賊などのごとき罪ある者の頸を討つを云う討つものなり。
 是れは刀を用いず脇指を以て片手討ちに□□る□なり。 (後筆:罪錯には声をかける)

一 頸を討つに左右秘事の目附の事
 左右の目附とは、右と左にて介錯の心得替りあるをいう。左より討つ時は髭の矩、右より討つときは膝の矩を以て討つ。

一 頸を討つ間相宜しき時分を知る事
 此の間相と云うは、初中終の三段のし□を合わせ有る。先づ始は四方に手を掛ける時の塩合、中は二方をし□□□取□く時の塩合、終は懐をくろげて己が腹を見込む時の塩合、此の三段の塩合、其時のよろしきに仍(よっ)て打つべし。若し此の三段の潮合をはづしぬれば、討つべき期あるまじきなり。

一 切腹の武士を育てるという訳の事 付けたり、其の時の宜しきに随い覚悟の事
 切腹の武士を育てると云うは、武士の命を助け育てると云う事にあらず。其の武士の勇名を育てるなり。たとえば切腹の武士、介錯人に心得□き早く死を見□めに、右三段の潮合をはづし快く腹切りたる上にてかけ申すべき間、其の時、介錯頼み入るなど必ず望む者有り。ヶ様の時は其の詞のこゝろなるを誉めて承知したる由返答し、其の勇気を育て其の期に至りては、前の三段の潮合を過さず討つべし。是れ則ち、其の武士の勇と名とを育てる所なり。然らずして万一腹に突き立て□力弱りて思わざる不覚もあらん□□□れなり。介錯人少し早まりたる様に見えても、此の心得切腹の武士を育てる所なり。其の時の宜しきに随い、覚悟というは文面の通りにて勿論切腹の武士心中斗(計)り難き物なれば、此方に油断有りて不覚を取らざる心得第一なり。自然心得違いの切腹人の振る廻いなどあらんも計りがたく、いろゝゝ諸事油断有るべからず。

一 臨気応変の事
 介錯□□き法式 前條の通り極まる事にはあれ共、格になつ□時□と□□□て斗(計)り難きもあれば、此のヶ様尤も大切に心得べしと□なり。
   介錯一巻故実式 是れは介錯人の預かる事にはあらざれ共、不知□□□□□す。

一 介錯人に切腹の武士盃を望みし時覚悟の事
 此の時は切腹ならば酒を用いて盃有るべし、追腹ならば水を用うべし。酒を用ゆる時は甚だ敷く血飛びて余りいさぎよく(潔く)見ゆる故、追腹の時は憚りて水を用ゆる事なり。
 追腹の時の骨組は 真□[鯛] 塩 ゆて牛蒡
 切腹の時の骨組は 鰹塩 へき生姜
 此の時、土器□ひねり留を向うへなして居え置くなり。尤も一品に用ゆるなり。
 畳の事 □木畳とて図の如く敷くなり。尤も白縁りか水浅黄縁りなり。

  人      但し倹使は切腹人の向うに座着きたるべし。
  腹 介錯人  介錯人刀を抜く時は倹使を後ろにして切り
  切      抜くべし、是れ禮なり。

一 幕の事
 四幅にし□乳なし、縫い様も常の幕とは逆になるなり。両端に四幅一杯に竹を縫□□置くなり。頸を討つと其の侭(まゝ)左右より竹を押し立て、骸の倹使より見ざる様に引き立つものなり。是れを絞り幕と云う。但し物見もあげさるものなり。

一 油単の事
 四方の耳にくかりを付けて袋□との様に拵えて置くべし。色は白を用い、介錯済みて骸を包みくかりを引る為なり。是れ切腹の時□、又追腹の時は血飛ぶを憚る故に毛氈を用ゆる故、油単は用いざる事なり。

居合兵法歌之書/應變之圖説









 (印)
  居合兵法歌之書

いましめよ幾瀬なかるゝ水上の
 師の清濁や死生存亡

請得てハ人にきられす人きらす
 あたらぬ矩の居合兵法

常になすわさは刄のことくにて
 世のおもハくよ身の垣と成る

勇はありと業なき時ハ病む人の
 風をいとふか如くなるへし

恥らへよ身に針の有虫たにも
 殺さるゝまてさす業をして

馴ぬれは海士のしハさも強弱の
 氣も無器用もなき物ときく

そしるなよ下手は上手の餝也
 手上を妬む負しらぬ人

勝負とハ常に勉る業と理の
 せんき工夫の数のまけかち

不意を打太刀に勝手ハ無といへと
 その不意をとる心もとめよ

敵を下手にするから虚あり不意も有
 さそひの不意は至極也けり

客の主と成ぬる先の心つき
 其場をしりて用ゆ座霞

立むかふ心の春の日にたとへ
 進退の氣は風のことくに

向ひなは正しく行て相口に
 筋めをつたひとかを打へし

間に髪と入す進ミて趨なしそ
 うたかひ遠慮名聞ハまけ

両葉をたつ事も有陽節を
 つくさしむるも休と場による

重くなく軽くあらしな早くなく
 遅からてこそ變に應すれ

すくめるは感通したる目付にて
 勝を置ぬる圍碁の中点

行舟の荒波分る道筋は
 目あてと路の楫にこそあれ

進退の氣は積水の如くなれ
 入ては破り出て跡なし

かまれてハ銕もたまらぬ虎の口
 とをるこふしハミつる氣心

極意とハ理に随ひし叓と氣に
 對するものゝなきとしれ

あたらさる矩とハ天地身の法と
 また三段のこゝろわするな

わさを離れ心の法に刻して
 其節によくあふそ極なれ

命かきりありとしれすてかみなりの
 わけてゆるさぬ後ト悟へし

極意とは義に當りたる死を極め
 いつれの太刀の吹毛の剣

當流所見之兵敵者専宗
兵術之理方而言之耳故
詞野而可質碎也今夫和
歌風流之士而見之殆拍
掌而可笑以辞不害意者頗
兵道之妙理可在一喝三
嘆之中云爾


  應變之圖説

夫應變者人之氣質不同
其場其時之變亦無窮而
敵之偏倚處不一定或左
右之或前後之進退錯雜
遅速混乱矣於是終裘其
正故有此法能徹此理則
致人而不致於人自己明
則乗其虚乎如響之應物
影之随形也高者折之卑
者覆之鋭者包之遅者先
之速者残之後人發先人
至者也故善用兵者治勝
於未生之前自備而乗於
敵之破是則可勝之處在
敵故也夫剣術道哉必出
未發已發二門而爲其極
乎一而已未發謂之居合
已發謂之兵法焉盖今皈
天然無二之道而立於二
門一致之極進退陰陽之
道者千變萬化應變之為
本故比天地八卦而傳事
業也有令吾童蒙流通此
道救氣質之偏者講武勵
勇之為一助歟


  應變八卦二門一致之圖

  

 一文字矩

  

 進氣
  

 退氣
  


  

  

 


   水月底

  風止大虚不起雲
  悠〃秋水罔波文
  一輪移影自然妙
  上下清明帰一分

雲晴るゝ夜半には風も浪もなし
 移る間もなき水の月影

やとるとも月も思はす宿すとも
 水もおもハぬ猿沢の池

猿澤の池のこゝろに身をなして
 見る人もなき秋の夜の月

をのつからその理りは有明の
 つきや水やにさえすみはなし


   虚手水月

水の月を形とおもひ握る手に
 たまらて跡に有明の影

   理一分銖水月

さつゝゝと岩にくたけて瀧津浪
 玉ちる毎にたつる月かけ


凡當流之水月者他之非
所言之先為不可勝而事
理相可則得天命自然之
妙處以心傳心而至于此
耳故以理不得盡之欲語
之絶言語欲取之空〃而
虚於乎唯傳来之規術依
之學之庶乎其不差矣夫
水月之修行者其事理相
調則其位自然兼備故従
法而勤之不待求于他其
支體不踰規則如清水無
波而晝夜不舎也於心意
悟其理則如明月皓〃照
於水上也不知其月與水
應於孰先也明虚實動静
而其移乎毎聲無臭至矣
以此見之則月有常水亦
有常而不得為水月也故
欲至此道者先修其事原
其理随師而無欺則内外
一而能獨往孤来感應隋
貶無違之在前忽焉有後
謂之自然妙故水者方圓
之形象不舎月亦郭然無
跡焉其明〃清〃者為是
月歟為是水歟水與月無
二而以有無不可思度體
則用〃則體所以体用一
源顯微無間是為水月者



夫當流剣術者天下之諸
師之矩之非説矩天理自
然而方圓曲直鋭皆法之
與他異故我門弟子悉為
令知之以圖示之畢

従五位下片山伯耆守
     藤原久安
    片山伯耆
     藤原久隆
    片山數馬
     藤原久之
    片山利介
     藤原久義
    片山攀龍斎
     藤原務人
    片山友猪之介

文化二年
 丑二月吉日 久豊(印)(判)


  星野龍助殿(印)

自臨巻目録




(印)
自臨巻目録

  二刀崩

   巴

   

   正雪

   

   込月

   午圓

   轤

 右表裏離身何茂
 口傳

  小木刀

   少〃波

   戸隠

   一玅劒

   隠剣

 右表裏口傳

  以上

右條〃誠以雖為
秘術依御執心此
一巻令相傳畢

従五位下片山伯耆守
     藤原久安
    片山伯耆
     藤原久隆
    片山數馬
     藤原久之
    片山利介
     藤原久義
    片山攀龍斎
     藤原務人
    片山友猪之介

文化二年
 丑二月吉日 久豊(印)(判)


  星野竜助殿(印)

伯耆流居合目録






 伯耆流居合目録

(印)
一 向之太刀 進退遠近 口傳
一 小手切  同    同
一 裏 勝  同    同
一 押 抜  同    同
一 磯之波  同    同

   切引何も口傳

   右裏五箇條

一 往 合   一 還 抜
一 左 連   一 右 連
一 追懸抜

   何も進退遠近之心得
   有之

  ○表

一 押 抜
一 小手切 左身
一 切 付
一 抜 留 右身
一 突 留
一 四方金切
一 三之柄捕 口傳

  ○應變八極

一 正 眼   一 臥 龍
一 左 竜   一 虎 亂
一 右 發   一 左 拂
一 車     一 甲 山
一 虎 入 虎入以爲
      中心霊

  ○居合八極變

一 圓 波   一 相 合
一 飛 乱   一 乱 波
一 虎 掻   一 浦之浪
一 逆 波   一 逆面鷹
一 浮 舟 浮舟以爲
      中心霊

右條々目附道筋遠近緩急
       各〃口傳

  ○中段

一 膝 詰    一 胸之刀
一 追掛抜    一 返リ抜
一 一作足    一 向 詰
一 長廊下    一 切先返
一 四方詰

  ○外物

一 十文字    一 瀧 波
一 打 落    一 臥龍尾返
一 態妙剣    一 甲陽左發
一 射向返    一 霞
一 鷙鳥返    一 逆 劒
一 聲之抜    一 無手切

右十二箇都而六箇之太刀
筋是以已發未發爲一
致者也

一 躰之先 五本 口傳
一 仕音之太刀  口傳

  ○介錯太刀  有習

一 義錯罪錯といふ差別ある事
一 頸を打に左右の秘事之目附之事
一 頸を打間相宜き時分を知る事
一 切腹の武士をそたてると云訳の事
  附其時の宜きに随ひ覚悟之事

一 臨氣應變之事

右雖為秘傳数年御熟心
依不浅令相傳仍而目録
如件

 従五位下  片山伯耆守
        藤原久安
       片山伯耆
          久隆
       片山数馬
          久光
       片山利介
          久義
       星野角右衛門
          實員
       関 郡馬
          経貴
       星野龍助


天保三年
 閏霜月吉辰  實壽(印)(印)(判)


  小栗又彦殿
      與之

伯耆流居合目録






(印)

 伯耆流居合目録

一 向之太刀  進退遠近口傳
一 小手切
一 裏 勝
一 押 抜
一 磯之波

  切引何茂口傳

  右裏五箇條

一 往 合   一 還 抜
一 左 連   一 右 連
一 追懸抜

  何茂進退遠近之心得有之

   表

一 押 抜
一 小手切
一 切 付
一 抜 留
一 突 留
一 四方金切
一 三之柄捕   口傳

   應變八極

一 正 眼   一 臥 龍
一 左 竜   一 虎 乱
一 右 發   一 左 拂
一 車     一 甲 山
一 虎 入 虎入以爲
      中心霊

   居合八極變

一 圓 波   一 相 合
一 飛 乱   一 乱 波
一 虎 掻   一 浦之波
一 逆 波   一 逆面鷹
一 浮 舟 浮舟以爲
      中心霊

   中段

一 膝 詰    一 胸之刀
一 追掛抜    一 返リ抜
一 一作足    一 向 詰
一 長廊下    一 切先返
一 四方詰

   外物

一 十文字    一 瀧 波
一 打 落    一 臥龍尾返
一 態妙剣    一 甲陽左發
一 射向返    一 霞
一 鷙鳥返    一 逆 剣
一 聲之抜    一 無手切

右十二箇都而六箇之太刀
筋是以已發未發爲一
致者也

   二刀崩

一 巴      一 
一 正 雪    一 
一 込 月    一 午圓
一 轤

右表裏身何茂口傳

   小木刀

一 少々波    一 戸隠
一 一玅剣    一 隠剣

右表裏口傳

一 躰之先    五本
一 仕音之太刀  口傳


    介錯太刀 有習

一 義錯罪錯といふ差別ある事
一 頸を打に左右の秘事之目付之事
一 頸を打間相宜き時分を知る事
一 切腹の武士をそたてると云訳の事
  附其時の宜きに隋の覚悟之事

一 臨氣應變之事

右雖為秘傳数年御熟
心依不浅令相傳仍而
目録如件

 従五位下  片山伯耆守
        藤原久安
       片山伯耆
          久隆
       片山数馬
          久光
       片山利介
          久義
       星野角右衛門
          實員
       関 郡馬
          経貴
       星野龍介
          實壽
       星野如雲
          實直
       星野九門
          實則
       星野龍太


昭和十年   實重(印)
  二月吉日


星野宣敏殿
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