武術史料拾遺卷二 傳書 (c) 2014-2020 因陽隱士 All rights reserved.


[林崎田宮流]音捨之卷
延寳六戊午八月付 帋本 個人藏 Private collection

譯文 Translation

片手取・兩手柄取之卷
 [中畧]

兵法の根元.古法の說.今同しからさると爲すと雖も.此鍔合脇指の勝負.手遠を改め.手近を引延す事.奇妙の勝負.殊に末の太刀三畧を以て號す.故に三畧の浮足と之れを名つく者也.
延寳六戊午八月.
天眞正林明~−林崎甚助重信−田宮平兵衞業延−長野無樂齋槿露−白井庄兵衞成近−酒井武大夫長之−高橋五カ右衞門武澄(在印・在判)−小曾根源助殿.


筆者註 Annotation

● 卷子裝.圖法師三卷を一卷に製す.前二卷奧書に「失念無からしむる爲圖法師之れを記す」とあり.原裝:紺帋金泥草花文表帋.「音捨之卷」の稱は外題に據る.林崎田宮流の系に屬すも流名不明.高橋五カ右衞門武澄の「澄」字は印文に「濟」とあり.


[林崎田宮流卷]
延寳戊午秋八月十有五日付 帋本 個人藏 Private collection

譯文 Translation

和朝に劍術の行はるゝ事尙(ひさ)し.或は居合といゝ.或は兵法といふ.其名こと[異]なりといへ共.すべてその實は一なり.枚擧するに暇あらず. ゥ子の辨.百家の傳に明らけし.掌に兇器をなれもてあそぶが故に.志しを失て身をほろぼし.あらそひを起こし.人倫をそこなふの媒[なかだち]となる. 豈これ本意ならんや.外けたなれば.內なほく.內の實は外に溢る.內外一にして舞蹈を不覺.足下にかしつき.手裏に風を生じ. 眼光物をゐ[射].胸中雷を轟かし.鳶と[飛]び魚躍るの妙.人ひとたびすれば.己れもゝ度の格物より知定と靜.安慮の等(しな)をへて.適もなく莫もなく.
 [中畧]

なんぢが手鍊の工夫.余が授受の力なり.今より後ち.朋友と共に自(みつか)ら反(さふ)して.敬んで質の病を療し.偏を變じて正だしきに歸らば.誠の形(あら)われん事.ひゞきの應ずるに.何の異なる事かこれあらん.
延寳戊午秋八月十有五日.
高橋五カ右衞門(在印)−小曾根源助殿.

篤實の御こゝろざし.術の出る根の御合點.御尤に存し候.彌御一生御工夫成され.とほく厚き意味を御會得候へかし.われらが感通.言をまつべからす候.以上.
萩牆庵下一閑人 岡田才右衞門敬直.


筆者註 Annotation

● 舞蹈・・・不知手之舞之足之蹈之也.<毛詩大序>の一節.近世の文書に屡見られる慣用句故に「舞蹈」の二字に約めたものと見られる.
● 岡田才右衛門敬直・・・『日本武道大系』に岡田敬直著『居合師弟問答(寛文十一年)』を見るも.經歷不明.


タイ捨流卷
延寳五年丁巳九月吉日付 帋本 個人藏 Private collection

譯文 Translation

タイ捨流
茲に閑味有て.□身臨終に及へは.則ち醫師枕邊に力を得るも亦妙なり. 勇士戰に成て.臨終に及へは.則ち千金を擲つへき者と.唯平生身に隨ふへき者と.奇妙一劍の道理□嗜むへし々々.一國一人の外相傳有るへからさる者也.
 [中畧]

□[延]寳五年丁巳九月吉日.
丸目藏人太夫藤原長惠−木嶋彌介源C−木嶋彌介源淨−千々岩六左衛門藤原政宣(在印)−山口藤右衛門殿.


筆者註 Annotation

● 千々岩六左衛門藤原政宣・・・後通稱久右衞門.松平丹後守光茂公の臣.[宗茂公御代]切米貳拾石.


タイ捨流 風勢劍
元祿四年辛未六月吉日付 帋本 個人藏 Private collection

譯文 Translation

タイ捨流風勢劍
夫れ戰ふことは風の發するか如く.千草萬木.摩せさる無し. 枯木の立つか若くんは.則ち碎け去る.謂ふ所の仕合サ妙の要眼也. 茲に又地水火の間に有て.三千大千世界の喜樂愁衰共に味ひて啻均しきのみ.
 [中畧]

元祿四年辛未六月吉日付.
丸目藏人太夫藤原長惠−木嶋彌介源C−木嶋彌介源淨−千々岩久右衞門藤原政宣(在判)−成冨八左衞門殿.


筆者註 Annotation

● 夫れ戰ふことは風の發するか如く・・・「軍讖曰.良將之統軍也.恕己而治人.推惠施恩.士力日新.戰如風發.攻如河决.故其衆可望而不可當.可下而不可勝.以身先人.故其兵爲天下雄.」<三略>
● 千々岩久右衞門藤原政宣・・・松平丹後守光茂公の臣.[宗茂公御代]切米貳拾石.
● 成冨八左衞門殿・・・松平丹後守光茂公の臣.[享保十七年]物成六拾五石.


水野流居合彌和羅卷
天和元十一月吉日付 帋本 個人藏 Private collection

譯文 Translation

夫れ一流の兵法なる者は.俱利迦羅大龍不動明王の尊法なり.敵に向ひ一身を惜します.勝利を得る事疑ひ無し. 常に不動明王を祈誓し奉り.鍛鍊の功を經て.一心不亂の縛の繩明王利釼.無上の靈術也. 此卷相傳の時は.潔齊情~して.檀上に拎[さゝ]くこと古法の如く.相傳有るへき者也.

 鑓合太刀の大事
 [中畧]

天和元十一月吉日.
水野柳滴重治−大矢木又左衞門正次(在判).
 [後闕]


筆者註 Annotation

● 鳥取池田家の臣依藤家舊藏文書.嘗て依藤氏は水流居合彌和羅[奧田の系]の指南役を勤めた.
● 當文書の序文は.疋田流向上極意之卷の序文に似る.
● 大矢木又左衞門正次・・・川越の人.水野流師範.池田光仲公に殊遇され捨扶持を受け江戶に住す.


日下開山武藏守流 兵灋卷物
元祿十一戊寅年五月廿四日付 帋本 個人藏 Private collection

譯文 Translation

日下開山武藏守流.兵灋卷物.兵法一通の序.
夫れ文武なるものは天下をして太平の政を爲さしめんと欲す.然るに依て.偏へに文を以て民を制さんとすれは.則ち劣癡して齊しからす.將に武を以て罪を討たんとすれは.則ち恐懼して穩かならす.斯れ便ち曲直賢愚は萬差各別なり.故に文武を含み兩道を兼用すれは.則ち和ならさる無し.服せさる無し.彼の慮を案するに.此の劒法なるものは亦た天の靈妙に依るものか. 予[佐々木高成]幼穉の昔より此の道に志勵して.百家の劒術を看る.其の利を更[あらた]むるも未た詳かならす.故に發憤し此の術を尋求すること年久し. 茲に日下開山宮本武藏守といふ者有り.彼の劒利を察するに.誠に水魚飛鳥の奇妙を得るに似たり.是を以て九州肥後の國に於て幸ひ結交を得.此の一流を懇望す.時に武藏守.予[佐々木高成]に語りて曰く.「劒道なるものは陰陽の習ひ有ると雖も.而して初學の者をして之れを知らしむること能はす.故に長短の兩刀を以て爲す」と.予[佐々木高成]竊かに之れを味ひたり.一刀は兩刀に有り.兩刀は一刀に有り.長は短に有り.短は長に有り.苟くも後の君斯れを信すれは.豈に朝に百手を働かせ.夕に百足を步ませんや.必死の位に至らは.自ら心明くへきものなり.云云.
右は先師[佐々木高成]の言なり.予[佐々木高時]も亦た此の道の後胤たり.旦暮之れを考ふるに.兩刀は一刀にして長短は一致なり.左右の働き其の自在を得.誠に飛鳥の奇妙を得ると謂ふへし.此の心術に入り.此の道を人に傳へ.功を積む者は天の冥加を得るものなり.誠心に請ふ.疑ふへからさるを.而して已む.
元祿十一戊寅年五月廿四日.
日下開山~明武藏守流 政名−佐々木三カ左衞門尉高成−佐々木三左衞門尉高時(在印・在判)−伏屋長左衞門殿.


夢想次源流兵法 極意卷
元祿十五壬午歷二月吉月付 帋本 個人藏 Private collection

譯文 Translation

 次源流兵法序
夫れ以[おもんみる]に治國平天下の道は文武兼備せさるへからす.武と雖も能く習はゝ則ち文なり.只萬人の敵を學ふのみ.壹人も敵すへからされは.之れを眞兵と曰ふ.今我術來事尙し. 昔日源廷尉[源義經]僧正谷にて異人傳授の心法を得.竟に功を四海に顯し.名を九州に馳す.命に順ひ高舘[義經終焉の處]に封せらるゝの後世.之れを知る者無し.
粤[こゝ]に嶽本某[嶽本大膳]あり.幼にして釼術を好む.本邦に有る所の法方.習熟せさる者無し.猶を業の奄ネらさること術の朽ちさることを慮る.永享年中.薩霧嶋.心を無何有之ク[むかうのさと]に養ひ.行を練る事百餘日.忽ち奇客の偉人有り.來りて此の~奧を授く.其の玄妙枚擧すへからす.號して次源流と曰ふ.餘適人間に落ちて.今世に行はる. 唯心は綱常を主とし.身は兵道を守ると云ふのみ.然れは則ち武と雖も能く習はゝ則ち文なり.豈に忽ゥ[なほさり]にすへけんや.豈に忽ゥにすへけんや.
 [中畧]

右極意.一間前より三足禮して.順ふこと三足.逆ふこと三足.禮し奉る.其後木刀取り上け.三度頂き遣ひて納む. 三度頂き順廻すること斯くの如し.遣ひ樣多く之れ有ると雖も.三宮の~祇に修め奉る樣.躰廣く有る間敷き者也. 重て稽古して之れを望む方.執心之れ有るに於ては.相傳せしむへき者也.仍て件の如し.
嶽本大膳正次−大谷七カ右衞門重久−中野權右衞門正次−竹村正庵正衡(在印・在判)−池田源左衞門殿.
(在印)元禄十五壬午暦二月吉祥月.


夢想次源流兵法 印可卷
元祿十五壬午歷二月吉月付 帋本 個人藏 Private collection

譯文 Translation

 [前畧]
右極意の書.一切兵理の拔足・討捕・間積・筒切・下空・卷掛.別て廣聞有るへからす.敵大勢寄せ來ると雖も.斯くの如く極意を以て.順逆に討つへし.多流に祕密と爲すへし. 縱ひ夫母兄弟爲り共.兵理の沙汰には意に由ること有るへからす. 數歲粉骨を成し.器用を以て遣はれ.數間を知れは壹手壹足殘さす傳へしむるなり. 口傳之れ有り.給ひ置くものは.誓詞の如く.重て執心の者之れ有れは.能々誓詞を以て相傳せらるへき者也.仍て印可狀件の如し.

(在印)元禄十五壬午暦二月吉祥月.
嶽本大膳正次−大谷七カ右衞門重久−中野權右衞門正次−竹村正庵正衡(在印・在判)−池田源左衞門殿.


圓明流 目錄之卷
寳永二年酉四月吉日付 帋本 個人藏 Private collection

譯文 Translation

 圓明流兵法序目錄
夫れ兵法の水源を尋ぬれは.ゥ流共奇を以てする也.然りと雖も多く頸を股肉の骨に替ふると云云.嗚呼愚なる哉.譬へは釼去り舷に刻むに似たり.予の祕術は懸待表裏を積る.故に兵法に之れ入りて參學し.過・現・未を見開すれば.此妙術を作す.其敵に隨ひ轉變して.其理を得る事.是祕中の祕也.

 表.
金剛の釼     無住の本より.一切の法を立つ.<中觀論疎>
時意に隨ふ    寒さ來らは衣を重ね.熱さ來らは扇を弄す.
淨き滿月     心華發明して.十方利を照らさん.<圓覺經>
當るへきを定む  毒泉に百練して.大渕に躍入す.
三關を破る    臂を掉[ふるつ]て關を度[わた]り.關吏を問はす.<無門關>

 歌.
露刄の釼     水は本と聲無し.石に當らは聲有り.
急流の餌     金は火を以って試み.玉は石を以て試む.<虛堂錄>
獅子の王     危亡を顧みす.單調直入せん.<無門關>
鐘を扣く勢    左邊前せす.右邊後せす.
笑中の刀     人を碍[礙]ける荊棘.後ち根の長すること無し.
 [中畧]

 歌
稽古をは唯ひとりして工夫せよ
相手なしとてわすれはしすな
祕術そと此兵法をおしへても
臆病ものはその甲斐もなし
打むかふ太刀の下こそ地こくなれ
唯ふみかゝれさきは極らく
たゝかひの運をは天にまかすへし
終に誰とていきとまる身か

寳永二酉年四月吉日.
多田源左衞門尉祐久(在印・在判)−脇坂覺兵衞殿.

筆者註 Annotation

● 譬釼去似刻舷・・・呂不韋撰『呂氏春秋:察近』契舟求劒のこと.
● 十方利・・・十方剎.十方國土.
● 多田源左衞門尉祐久・・・脇坂伊勢守安C公の臣.後致仕して安藝淺野家の臣となる.圓水流と稱したとも云う.
● 脇坂覺兵衞殿・・・脇坂伊勢守安C公の臣.祿百貳拾石.


圓明流 免許之卷
寳永二年乙酉四月吉日付 帋本 個人藏 Private collection

譯文 Translation

圓明流貳刀は宮本氏武州先師參學修練の妙術也.然れば予か祖祐甫は武先生直傳の門葉にして.又猶三浦の何某傳受の數.予年尙[ひさ]しく之れを效ひ之れを修む.于に有て自尓以來之れを試用す.勝利を得ること甚し.餘流を超ゆる也.然る處足下歲を累ね.御執心深く.勤修せらるゝに依て.予傳受する所の蘊奧.殘さず相傳せしめ畢ぬ. 向來深志の輩には.~文を以て御相傳有るへきもの也.圓明流免許の旨趣.仍て件の如し.
寳永二乙酉年四月吉日.
宮本武藏守藤原義經−多田氏祐甫−三浦源七カ延貞−多田源左衞門尉祐久(在印・在判)−脇坂覺兵衞殿.


筆者註 Annotation

● 宮本氏武州先師・・・宮本武藏守藤原義經.
● 予祖祐甫・・・多田ョ祐.圓光寺の住持.宮本武藏より圓明流の印可を承く.
● 三浦の何某・・・三浦源七カ延貞.
● 自尓・・・自然.


圓明流 奧儀之卷
寳永二年乙酉四月吉日付 帋本 個人藏 Private collection

譯文 Translation

 心持の事.付けたり座の次第.
一.心の持樣と云は.まつ仕合せんとおもふ時.平生の心よりはなをしつかになつて.敵の心のうちを引見るへし.敵俄に聲高く成.目大に顏あかく.筋ほね立てすさまちけ成は.ぢうちをねらふ下手なるへし.左樣の者にはなを靜に心をなして敵の顏をうむゝゝと見て.敵の氣にさからはさる樣に見せて太刀を取て笑て上段の下に太刀を構て.敵打所を緩々とはづすへし.扨敵の氣色いかな心なるとうたかふ樣成時可打也. 又人により仕合に望時.言靜に目ほそく筋骨も出す太刀取ちからなき樣に見へ.太刀にぎりたる指うきて持ば.上手なりとおもひあたりへよせず.先をかけつるゝゝと懸り.追はらひはやく可打.上手に緩々とすれは.しちやうに懸る物なるへし.見合肝要也. 又座の次第の事.座は廣くてもせはくても同事也.兩へ振廻太刀の後(うしろ)へあたらさる程に出て居太刀およそ構つるゝゝと懸り.太刀間を積へき也.太刀後に當ぬれは.氣違しちやうに懸る物也.若上つまりたる時には.我太刀先にて程をくらへて.心得ていつれの太刀にて成とも.つかへさる太刀にてすへし.赤き所を後になしてすへし.平生稽古の時よりは心安自由にしたき事をして.如何程も緩々としたる心にて大事にかゝる事肝要也.轉變肝要也.

 目付の事.
一.目の付所と云は.顏なり面をのけて.よの所に目を付る事なかれ.心は面にあらわるゝ物なれは.顏にまさりたる目付所なし. 敵の顏見樣の事.縱は壹里斗有遠き嶋に.うす霞の懸りたるうちの岩木を見るかことし.又雷雨なとのしきりにふる間より.壹町斗も先に有屋たひなとの上に.鳥のとまりたるをいつれの鳥と見分る樣成目付なるへし.屋たひの破風・懸魚・瓦なとを見るにもおなし.如何にもしつまりて目を可付也. 打所を見る事惡し.脇へ首をふる事なかれ.うかゝゝと見れは五躰一度に見ゆる心有.顏の持樣眉間にしわをよすへし.ひたひにしわをよする事なかれ.ヘ外別傳也.

 [中畧]

 無貳釼の事.
一.無貳釼は.刀を高切先を敵の方へなして.太刀をは我左のひさの上に置て.敵切懸は太刀にて下より手をはりて.又上の刀を打懸る心すへし.しさる敵上にかまはす.下の太刀の手をうたたんとせは.刀を打て敵氣ちかひしてよはりたる時.下の太刀を兩の手にてかすみて請上てすちかへに切へき也. 又刀をおじて上にこゝろつかは.下にてヘのことく手をはるへき也.敵に近く事惡し.構の足は左足を出し.右足七八寸程脇に置て切籠時.左足を其まゝ置.右足を出して力にまかせて可切也.轉變肝要也.

一.是極一刀の位の事.

一.眞の位の事.

一.直通の位の事.

右拾七箇の條.圓明一流の祕極也.縱ひ親子兄弟爲りと雖も.其覺悟に依て之れを授けす.寔に他事を抛ち.御執心深妙の旨あらは.此一卷相渡すもの也.
寳永二乙酉年四月吉日.
多田源左衞門尉祐久(在印・在判)−脇坂覺兵衞殿.


[多宮流居合巻]
寳永二年酉極月吉日付 帋本 加賀藩生沼家文書 個人藏 Private collection

譯文 Translation

 六釼の事
一.突寄
一.除身
一.引取
一.籠手結
一.迂颴
一.栅之刀

 大寄の太刀
一.花鳥
一.浮雲
一.水魚

 立相組十一用
一.射翔
一.
一.螢火
一.縛刄
一.右極
 [中畧]

寳永二年酉極月吉日.
河合六カ重ェ(在印・在判)−小川^右衞門殿.

[從是後筆]
右の卷物.先師より授けられ畢ぬ.貴殿數年執心淺からさるに依て.直に其方へ相傳せしむる者也.
享保十七年子四月吉日.
小川金左衞門嶢智(在印・在判)−小川助太夫殿.


筆者註 Annotation

● 河合六郎重寛・・・松平兵部大輔宗矩公の臣.
● 小川金左衛門嶢智・・・嘗て越前松岡の領主松平中務大輔昌勝公に仕へ.食禄百五十石.故有って禄を辞し.享保十一年に國を去り.後ち金沢城下に住み三術を指南した.と門弟松井盛庸の記録にあり.小川猪右衛門と同一人と考えられる.


不傳流兵法 大目錄
享保元丙申年十一月吉日付 帋本 個人藏 Private collection

譯文 Translation

(在印)
不傳流兵法目錄

一.無一劒   口傳
一.無二劒
一.無上劒
 [中畧]

右の條々貴殿數秊[年]御執心淺からす.其の上所作鍊磨之れ有るに依て.一流一通毛頭殘さす相傳せしむるものなり. 自今以後執心の方之れ有る者は.先つ實を以て大將と爲し.堪忍を以て城郭と爲し.理を以て心を直くにし.己むを得すして劍を用ふ.之れを劍を理する者と謂ふなり. 是[こゝ]を以て不傳流なる者は.一生の間刀を用ひさるを以て本意と爲す.謂ふ所の戰わさるを以て勝と爲す者也. 右の趣.弟子爲る者は是を以て之れを示さるへし. 主君親子兄弟爲りと雖も.~文を以て指南有るへき者也.彌以て二六時中.怠慢無く工夫有るへし.仍て大目錄件の如し.

享保元丙申年十一月吉日.
浅山一傳一存判−伊藤不傳次春判−安間鏡傳速晴(在印・在判)−吉岡平右衛門殿.


筆者註 Annotation

● 不傳流・・・不傳とは傳へないこと.有は無.無は有.力を拔くことを傳へて.勝つ事をヘへずして.全く疑ひ無くなるを傳へざるゆえ.不傳流と稱す.邪な心を以て問ふ者には.祖師伊藤不傳に依て不傳流と答へよと云う.<『傳外反古』>
又流名について.伊藤不傳の記述に據れば.流名の一傳と不傳とは二つにてはこれなく.一理にて一傳と申すも不傳と申すも一二三と申すも一理[同じ道理]と云う.
そして淺山一代は理をふくみ所作斗りにて.所作より理に至る相傳であった.伊藤不傳はこれを理兵法と申して殊の外嫌った爲.以來.所作と理と.理と所作と合せて相傳した.そのため淺山一代は刄引にて稽古したものを.木刀撓にて稽古させたと云う.<『不傳流先書』延寳八申霜月>


不傳流兵法 無言書
享保十六亥彌生付 帋本 個人藏 Private collection

譯文 Translation

 (在印)
 不傳流兵法無言書

有にあらす又無にあらす無一劍
 それこそそれともとの我なれ

無二劍は前後左右を遠近に
 其間其身に勝をいふなり

無上劍常に具足を着こみにて
 ひかりをうつす冑なりけり

截左右劍足はしなゐの翫ひ
 一の太刀に至らせんため

間積はあたれは中る物そかし
 敵よりしらす間積の劍

相心こゝろの絲をうちかけて
 きらすほとかすゆるましそすれ

目つけとて敵には更になき物を
 我身のほとに引請てみよ

水月はいつれの道にかきりなし
 峯より谷にすゝむ猿猴

戶入には左右の敵をはからひて
 足のはこひに鎧ものゝく[物の具]

馬上にて槍は上段打てとれ
 左右からみの手綱なりけり

脇差は腰よりうつす忍ひ切
 さては拔打突身也けり

思無邪劍無念夢想に有無の劍
 雲はくもにて月は見えけり

小車の敵の弓手へまはりけり
 これそ多勢を斬はらふ劍

 右十三箇條
 [中畧]

(在印)
右五十二首は.表五十二位なる者也.此心を以て自已に受くれは.則ち萬物一に歸して.而して洩らすこと無し.是一乘の法也.仍て無言書件の如し.
享保十六亥彌生.
一川傳外正章(在印・在判)−高橋又次殿.


筆者註 Annotation

● 一乘の法・・・佛道にては十方佛土唯一乗の法有るのみ.
● 一川傳外正章・・・伊藤不傳に学ぶ.後ち松平不昧公の師となる一川正鄰の祖父.


無邊無極流 手次
享保三戌戌年五月吉日付 帋本 個人藏 Private collection

譯文 Translation

無邊無極流なる者は.兵術を用ゆる所以の者なり. 最も表章・準則有る也. 戰に臨み敵を量る.則ち表章之れ五道を以てす.曰く.强・弱・進・退・急と. 兵に接し虛に乘す.則ち準則之れ三要有り.曰く.眼着・拍子・勾尺の利鋒と. 之れを操る者は.惟一心に之れを主と爲すのみ. 此心明に勇に.此身術に鍊に.混りて適中すれは.則ち勝利を得へき者必せり.
 [中畧]

右此大事は.堅く之れを祕すと雖も.連年稽古して鍊抽んでらるゝに依て.已むを得す傳授せしむ. 拳眼膺て可也.戰に望めは.則ち啻破らすんは非さるのみ.身體兵器に敵して.動靜を見て虛實を察すれは.則ち宜しく中る所を知るへし. 豈勝利を得るへからさらんや.千金といへとも心を用ゐて鍛鍊せされは傳ふる莫れ.仍て件の如し.
享保三戌戌年五月吉日.
山本無邊入道−/−岩田六左衞門(在印・在判)−齋藤作馬殿.

必勝はかつにもあらすまけもなく.有無の二つの中としるへし.


筆者註 Annotation

● 岩田六左衞門・・・名正甫.柳澤甲斐守吉里の臣.甲府御城主の節.禄三百石.御留守居.享保九年.禄三百石.御寄合
● 齋藤作馬殿・・・柳澤甲斐守吉里の臣.享保九年.禄三百石.御弓鉄炮頭.


無邊無極流 鎗合
享保三戌戌年五月吉日付 帋本 個人藏 Private collection

譯文 Translation

無邊無極流なる者は.斯くの如く十二の位に構ふ.勾尺を以て圖して.之れを知らしむる所以の者也.
 [後畧]


無邊無極流 長刀合
享保三戌戌年五月吉日付 帋本 個人藏 Private collection

譯文 Translation

無邊無極流長刀條々
 [後畧]


無邊無極流 十文字合
享保三戌戌年五月吉日付 帋本 個人藏 Private collection

譯文 Translation

無邊無極流十文字條々
 [後畧]


無邊無極流 太刀合
享保三戌戌年五月吉日付 帋本 個人藏 Private collection

譯文 Translation

無邊無極流太刀合鎗口傳
 [後畧]