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國友一貫斎:御召筒張立御用拜命

天保九年三月十三日,國友一貫斎(通称藤兵衛) 姬路城二ノ丸下岐阜町の三俣家(高三百石,御書院番)屋敷に来る, 一貫斎と義陳とは鉄炮製作を通して面識有り,舊知の間柄なり, 一貫斎姬路滞在の節 謙光君に御召筒張立を命せらる,故に義陳を訪ひ其筒製法を相談す, 是れより御筒御注文に至る迄の記録,義陳日記に書き留む,下記の如し,
[三俣義陳日記:天保九年抄出](図一)

[天保九年三月廿日]
一,藤兵衛(一貫斎)早朝に(義陳屋敷に)罷り越し 御召筒張立金原氏より仰せ付けられ候段申し来る,右に付自分(義陳)より筒製法承り度き旨申し出て候,
一,夜分(義陳は)金原氏へ罷り出て臺木の處等相尋ね置き候事,

[同年三月廿二日]
一,昼後藤兵衛を招き寄せ,御筒製法の事申し聞け候處,先方よりも右鉄并に銘等の伺書持参候事,

[同年三月廿四日]
一,熊谷平之助殿(御手筒懸り)夜分御出てにて此度藤兵衛へ仰せ出され候 御召筒の義,上(謙光君)にて思し召すには是迄の 御召筒軽く候に付,八ツ橋 御筒と二蔵張立の 御筒との間の貫目に遊はされ度く思し召し候の様,
右に付自分へ熊谷氏内談に参られ候事,之れに依て明廿五日(姬路城)西の丸御蔵へ参り,右間の貫目筒吟味致す旨申され,自分にも参り呉れ候様申され,右に付福嶌長助(御鉄炮方)へ明日の義自分より咄し置き候,

[同年三月廿五日]
一,西の丸御蔵へ御鉄炮方福嶌氏・御手筒懸り熊谷氏・自分三人にて参り,昨日の貫目の筒吟味致し候得共,頓と之れ無く候,
一,昼後熊谷氏宅へ御出てにて今朝の趣も 上へ申し上け候処,惣之進(義陳の息,諱は義章)へ得と談合の上,木形荒増拵へさせ候様仰せ出され候旨,右に付御鉄炮方呼ひに遣はし候得共,両人とも留守に之れ有り候に付,自分より御鉄炮方へ通達致し候様,熊谷氏頼みに付通達致し候所,福嶌氏申し聞け候は,折角 上の思召にて木形致させ候ても,六々の事出来申す間敷く甚た以て恐れ入り候段,熊谷氏へ又々通し呉れ候様申し聞け候に付,熊谷氏へ右の次第具さに相咄し候所,先つ何分仰せ出され候義故拵へさせ候方然るへく,出来立の上にて如何様共取り斗ひ申すへき段,熊谷氏申し聞け候間,何分にも含み呉れ候様頼み置き候事,
一,右の趣金原氏へも相咄し,且又木形ほうの木の義も談合致し候方,御鉄炮方にて取らせ候様,代料は跡にて拂ひ申すへき段申し聞けられ,何分にも早く出来立候様,御鉄炮方へ通達致し候様呉々申聞けられ候,

[同年三月廿六日]
一,早朝福嶌氏へ罷り出つ,右の趣通達致し候事,
一,昨日(河合)小太郎殿より仰せ聞けらる義もこれあり候に付,青木氏へ参り頼み置き候事,
一,御鉄炮方役所へ罷り出て木形の義,豊田鉄蔵へ長助より申し付け候に付,先つ荒増鉄蔵へ形の處申し聞け置き候事,

[同年四月四日]
一,昨三日朝熊谷氏へ木形差し出し候事,尤青木氏へも右の段咄し置き候事,

[同年四月五日]
一,熊谷氏より昼後手紙到来,東御屋敷へ罷出て候処,御筒御注文相定り候旨達之れ有り,

[同年四月六日]
一,今五つ頃より熊谷氏自分宅へ罷り越す,藤兵衛呼ひ寄せ 御筒御注文の通り認めさせ候事,但二枚,壱枚熊谷氏所持,壱枚自分所持,
一,小太郎殿へ昼頃罷り出つ,右御請書御覧に入れ候事,其節小太郎殿より拾匁薄筒の義藤兵衛へ談合致し候様仰せ聞けられ候事,

[同年四月七日]
一,藤兵衛罷り越す,御紋本相渡し候,小太郎殿御筒の義も申し聞け置き候事,
一,熊谷氏より藤兵衛の義申し越し差し出し候事,

[同年四月十一日]
一,国友藤兵衛明後日出立候由にて暇乞ひに罷り越し,其節小太郎殿薄筒の注文相渡し候,御召筒木形是亦相渡し候,
謙光君 不易流を森伊野右衛門と義陳とに学ふ,故に同流の掟を以て 御召筒を製作す,當時義陳 不易流の指南役にして 君公の御稽古御相手を勤む,因て 此度の御召筒製作に深く関与せしものなり, 亦義陳の息義章 君公の不易流炮術の御稽古御相手を勤めて信任厚く,御召筒の木形を製作するに,義章をして之れを為さしむへき 仰せあり,
図一 筆者蔵



河合小太郎 御家老,號屏山, 三俣義陳 御書院御番,不易流炮術指南役, 豊田鉄蔵 御目付, 青木氏 御近習又は御用人, 福嶌長助 御鉄炮方, 熊谷平之助 御手筒懸り,

御近習 御側に勤める重き役職なり,御近習に四役あり,御近習御小姓,御小姓供番,御小納戸,御案詞奉行, 御鉄炮方 御蔵の御鉄炮并に玉薬を管理す, 御手筒懸り 現状使用せらるゝ御手筒(君公の御鉄炮・御召筒)を管理するものか,職掌分明ならさるも,御手筒掛なるものは屡御手筒拂を勤めたり,

御召筒 君公の用ゐる御筒, 張立 筒の製作/製造, 御筒製法 君公の用ゐる御筒の製作方法, 臺木 筒の臺は木製なり,臺木の處とはカラクリを含むものなるへし,流儀の掟あり, 鉄并に銘等の伺書 鉄とは単に鉄質を言ふものか,或は形状を言ふものか,銘は表に見ゆる象嵌銘のことならん, 木形 筒製作の為の木製雛形,

不易流炮術 酒井家の御流義なり,咸休君 元祖武内頼重を招聘す,以来家中に行はれ,而して天保八年義陳同流の十代目指南役と為る, 東御屋敷 君公の居舘,

参考史料:『三俣家文書』筆者蔵/『姬陽秘鑑』姬路市立城郭研究室蔵/『家臣録』姬路市立城郭研究室蔵
参考資料:『姬路城史』橋本政次著/『寛政重修諸家譜』續群書類従完成會/『江戸幕臣人名事典』熊井保編

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