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片山流居合の伝書

當流居合序

免状

歌之書

高上極意

當流居合目録

卯可之状
1672.寛文拾二壬子暦十一月吉日
清水源太夫尉−斎藤五右衛門尉
本伝書は全巻が一巻にまとめられています。しかし、元から一巻であったのではなく、一巻づゝ独立したものだったと考えられます。それは此の伝書を実見すれば一目瞭然のことにて、文の配置・紙の継ぎ方が当初から一巻仕立てゞは無かったことを示しているからです。子細に観察すれば、各巻末の紙の色相と各巻頭の紙の色相は若干違っており、これは個別にあったとき、巻頭は変色しやすく巻末は変色し難いことに由来するものだろうと考えられます。 また、各巻頭は広く余白をとるのに対し、各巻末は異様に狭く、元はこの後に別紙が継がれていたからこその狭さだと見られます。たとえば本伝書を作成するとき、各紙を継ぐ前に伝書を記すとしても、巻頭と巻末の余白の配分は一目で分ることですから、巻末に文字が収まりきらぬかどうかと云う書き方はしない筈なのです。一定しない余白の取り方、統一感がなく雑然とした各巻の配置、これらは元から一巻仕立てゞは無かったことを裏付けているように思います。 さて、此の片山流は何処に伝承したものか、今のところ各人の経歴もあわせて全く明らかではありません。尤も本伝書は若狭小浜藩に於いて鎗術を指南していた家に所蔵されていました。この家は斎藤氏ではないことから、養子入りした者や先祖の兄弟などが所持していたものかと思われます。

掲載史料及び参考資料
『片山流居合伝書』個人蔵

當流居合序


  當流居合序

夫當流居合謂者古今絶唱也
我從幼少有志於武道而雖學
他流之利方数百流目無決座中
勝負慶長元丙申暦正月擇吉日
良辰而清身正心而参籠愛宕
山七日七夜時夢中有一老僧来
推予枕子曰汝爲歯嵩ケ来于
茲嗚呼深哉有其志我不勝感
激尓向上之一流能用之則途中
受用縦雖逢異國之樊噲張良
其勝必況又於吾朝哉此叓可秘云云
言訖不見夢覺而思之誠如幼
夢中到今此儀一点更不違是
以傳之世人加之慶長十五年庚戌
中呂八日参内 禁中遂一巻
帝王云云即感其叓書伯耆二
字以賜予誠是天鑑無私者也
我此夢想之一流順行逆行得
大自在傳授門弟子可秘可保

免状

當流居合(印)御相傳申處抛
他事昼夜染心御執心
不浅其上我等弟子雖
有数多勝余仁感御器
用高上極意毛頭不相残
傳申者也此以後於有懇
望之方者以誓帋血判
之上可有御相傳但極意
之位者心中之深浅見
及可有御相傳万叓以
御心懸従他流無非様御
吟味可為肝要者也仍免
状如件(印)

歌之書


   歌之書

一 居合とハ心をしつめてたすかたな
   ぬくれハやかてかちをとるなり
一 居合とは人にきられす人きらす
   たゝうけとめてたいらかにかつ
一 居合とハ刀ひとつに定まらす
   敵のしかけてとむるやうあり
一 居合をハしりたふりしてつかるゝな
   いあひのみちをふかくとふへし
一 身のかねの位をふかくならふへし
   とめねととまる事そふしきや
一 いかに人はらを立つゝいかるとも
   こふしを見こめ心ゆるすな
一 寒夜に霜を聞へきこゝろこそ
   敵にあひてのかちハとるなり
一 下手こそハ上手の上のかさりなれ
   かへすゝゝゝもそしりはしすな
一 つよミにて行當るをハ下手といふ
   まりに極を上手とそいふ
一 無用なる手詰の論をすへからす
   むりの人にはかちて詮なし
一 もとの身にかつか居合の習なり
   なき事いふハ身のあたとなる
一 あまたにハかたれさりけりたハかりて
   けんにおそれて手ハ出ぬなり
一 ふつと出る刀をおもひさとるへし
   夢想の刀のつはハかまハし
一 ぬけハ起りぬけすハきれよ此刀
   たゝきる叓に大事こそあれ
一 世はひろし我より外の叓なしと
   おもふハ池のかハすなるらむ
一 我道の居合一すしさうたんに
   しらぬ兵法事をかたるな
一 待もするまたてもとまる叓そあり
   懸待表裏二世の根源
一 世の中にひいきへんはん有時ハ
   上手も下手も人のいひなし
一 はやくなくおもくあらしなかるくなく
   おそき叓をやあやしきとそいふ
一 ねてゐてもおきてぬきみよ放れくち
   つかれん事ハちてうなりけり
一 金胎の南部と正にみへにけり
   兵法あれハ居合はしまる
一 道をたてふかく執心する人に
   大叓のこすな大切にせよ
一 大事をハみなうけとると思ふとも
   見かゝつるにハとくたうハなし
一 師子とわすいかに大叓を發へき
   こゝろをすましねんころにとへ
一 物をよくらい納とおもふとも
   こゝろかけすハ皆すたるへし
一 後よりきるにはつるゝ事ハなし
   聲のぬきとハせめてかくなり
一 目のまへのまつけの秘叓をしらすして
   とやかくやせんと一期きつかふ
一 目の前のまつけの秘事を知ぬれハ
   たゝ一すしにすミやかのミち

高上極意

   高上極意

一 向二方

一 脇二方

一 捕切

一 声抜

一 万叓抜

   以上

右雖爲秘傳書依御執心
不残令相傳弥御心持可
爲肝要者也

當流居合目録


   當流居合目録

   表五刀

一 向刀

一 曳捕

一 左身

一 押抜右身

一 逆手抜

   以上

   中段

一 突留

一 頂上

一 四方兼切

一 一座足

一 角刀

一 逆薩

一 追掛抜

一 向詰

一 四方詰

一 長座敷

   以上

右條々誠以雖爲秘術依御
執心此一巻令相傳最吟味
以鍛錬可有奇特

卯可之状



   十二様(印)

第一

第二

第三

第四

第五

第六

第七

第八

第九

第十

第十一

第十二

 以上

此一巻居合陰陽云云父母
主表十二因縁十二ヶ條加
之善悪穿鑿糺勝利唯
是當道意蔵臆末世
傳雖然貴殿感御執心之深
厚拙者存知之通少不相殘
傳申者也若於此儀僞者
日本國中六十余州大小神祇
別而 愛宕山摩利支尊天
八幡大菩薩可罷蒙御罰
者也仍卯可之状如件(印)


 片山伯耆守
      藤原久安

  宮田勘兵衛尉
       藤原宗成

  清水源太夫尉
       藤原
        (判)(印)

寛文拾二壬子

  十一月吉日


  斎藤五右衛門尉殿
 胸の異体字

 諱は鮮明ならず、延遠・延重か
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