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南蛮流小鉄炮の伝書

南蛮流小鉄炮 巻第一

南蛮流小鉄炮 巻第二

南蛮流小鉄炮 巻第三
1613.慶長十八 正月吉日
放士権丞正成−

南蛮流小鉄炮とは、藤井一二斎輔綱に始まる炮術の流派である。流祖の名に因み一二斎流とも称された。
筒の長さは1尺2寸〜1尺5寸の小筒を用い、玉目は3匁〜3匁5分、射程は6間〜60間、「須臾に玉薬を込む手前早きこと電光の如し」と云うように早業の工夫があったことをうかゞわせる。
本傳書を伝授した放士権丞正成とは何者であるか詳らかでない、但し其の花押が示すように藤井一二斎の直弟子と察せられる。
掲載史料及び参考資料
『南蛮流小鉄炮 巻第一』個人蔵
『南蛮流小鉄炮 巻第二』個人蔵
『南蛮流小鉄炮 巻第三』個人蔵

南蛮流小鉄炮 巻第一



夫鉄炮者初於南天竺而至
於南蛮自是渉於日域以来
造次顛沛於之然而定九
夷有國家古今重寳々
何如之自幼此道執心而
雖閲諸流未学玄妙傳還
而藝師罪雖然于朝
于暮所望自他相叶幸哉
致日唐會明師而無
小筒一流秘術輒今帰朝
畢寔与天抃拝令奇哉
仰之弥高鑽之弥堅是
則為天下無雙之小筒
名誉者筒長一尺二寸
号性名藤井一二斎
焉指本来无一物能剛能
弱能強則虚無忽然理
斯為心傳心以是
書鍛練之極意一巻而於
末世為某一流而普廣
之恐豈万代至寳者
数以徳言之至輕由自
由以早放言之則須臾込
玉薬手前早事如電
光厥外奇妙不思議不
可勝計以短言之則尺
縮為延其身牡丹華
下睡猫心有舞蝶於是
運策帷幄中決勝千
里外既武王三千義兵
滅紂王億兆之人以理勝敵
則如以石掴以非勝敵
則如以掴石何不可限
長短大小専以強弱吾
不入力勝敵為上剛吾入
力捨身命為下剛唯不
躰用則可謂上剛而已

南蛮流小鉄炮 巻第二







  南蛮流小鉄炮巻 第二
一ひさ臺の事星に向て五躰□
 くに左のあしをたて右の足にて
 くるふしをおさへ龜の尾をしき
 腰をおりひたりの手にて筒
 を前へ引右の手□[に]てさきへを
 しひちをはらにつけ申候なり
 いつきは常のことくに見くび
 をおりこむ也口傳多し
一さしはたしの事あし中八文字
 にふみ腰をすへいきをこみ一拍子
 に打事よき鍛錬なり見や□
 いつれも右同前也

  間積の事

(略図:六間〜六拾間)

  薬組
一反薬   對 三匁玉三分 一匁二分五りん
 まつ風  同 二匁一分  一匁玉分
 ひめうり 同 二匁玉分  二匁一分
        白    黄    黒
 口薬   十匁 一匁五分 一匁八分

  分物打様
 分物きとくに越物也さるによ
 りいかにも惣身をゆくやかに
 持て打也五分七分の角の中に
 見ゆるか見えぬかほとの星有
 [以下欠]

南蛮流小鉄炮 巻第三






  筒拵様之事  巻第三
一筒の長一尺弐寸同二寸五分三寸
 三寸五分四寸五分五寸にも
一玉目三匁同壱分二分三分四分
 五分にも
一本口ふとさ九分今中先二分を
 とりなり
一前目當 巻金 三寸 目當 長六分
     の間
 同高三分先目當の高同 長
 三分半
一柑子玉縁二寸八分 まはりの事也
一玉ふちより筒くち一寸弐分也
一ねちの長一寸一分半 せんさし三つ
一臺尻 八寸 同七寸五分にも
一地板 長 四寸
一うちからくりなり
一引金てうつかひ[蝶番]

  筒直事
一こす筒は前目當の上をする[磨る]
一さる筒は先目當の上をする
一後きれは先目當の前をする
 前目當のみそも同前也
一前きれは先目當の後をする
一中るにこしてもすはりかたく
 候はゝ其筒の内をよくあらひて
 金むらを見て筒きるゝかた
 をとりてつゝさき四寸斗火
 の中へ入てよくゝゝあかめて面の
 ろくなる盤にのせてまた上と
 おりのかくにも五寸斗なるろ
 くなる木をのせて其上を木
 つちのろくなるにて二つ三つ
 打てなをすや筒先二三寸斗
 おきて打たるかよく候也乍去
 大事の筒なとを直へからす毎
 度仕そこなひ候事有之何と
 してもあたらさる捨物になる
 筒にて候はゝ右のことくしてもな
 をす也此外口傳に有之
一筒の内を見るにはから糸をすの
 うちへ引とをし其糸にて金
 むらを見るによく見ゆるものや
 目かけに向てつら[面]をくるゝゝと
 まはして見るにいとの金にさ
 はる所金むらの勢なり又惣
 のゆかみ其糸のあとさきを見
 るに中のたかく見ゆる心あるは
 其のかたへそうゆかみなりすの内
 を見るにいろゝゝ有之くろ金を
 四方にしていかにもゝゝろくに
 仕り其をすの内に入て見る
 金むら無残見ゆるもの也

  玉拵の事
一連理と云玉の事□□□あな
 をあけて□濃の苧にてよく
 つるきあとさきをよくむすひ
 二つなから一度に□□□二町
 斗にては三尺よこにわかれ候は
 何としても二町にて障子一枚
 にはつれぬもの也
一三友玉の事玉三粒にあなを
 あけ三分をとり玉二つ間に一つ
 三分をとりの二つの玉先へ
 入るやうにつるき□玉は跡に
 込なり□□の間は三分斗
 つゝをきつてつるき申候是は
 上下へわかれ申候也
一盤石玉の事玉こしらへ様くろ
 金にてこの繪圖のすかたに仕
 候事
 
 相玉二つにあなをあけ此のくろ金
 につるききりかたをして玉をさし
 入まわしてきりかた□てぬけ
 さるやうにしてくろ金の玉を筒
 の内へ入なり此玉人を仕る[殺傷する]に
 よき玉なり大刀のものなり共
 一矢に打ふけ[布遣→布世の誤字か]申候それのみに
 あらす万によし誠にはんしやく
 玉ころく玉と云も此事也

 右條〃小筒雖為眼深重以
 御誓帋御執心之条毛頭不残
 令相傳候尤御秘蔵肝要に存□[候]
 仍如件


       放士権丞
慶長十八
  正月吉日  正成(印)(判)
ろくに:陸に、平らなことを云う
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