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尾州竹林派四巻書

尾州竹林派四巻書:第壱 初勘七道之巻
1679.延寳七未ノ二月
星野勘左衛門茂則−井上七郎兵衛

尾州竹林派四巻書:第二 哥知射之巻
1679.延寳七未ノ二月
星野勘左衛門茂則−井上七郎兵衛

尾州竹林派四巻書:第四 奥儀之巻
1679.延寳七未ノ二月
星野勘左衛門茂則−井上七郎兵衛

星野勘左衛門、名は茂則、後浄林と號す、傳右衛門則等の三子なり。膂力ありて武技を善くし、長屋忠重に學びて尤も射術に長ず、尾張侯光友の時、弓役となりて俸若干を賜ふ。
是に掲載の四巻書(内第三を欠く)は星野勘左衛門茂則自筆の傳書。奥書に曰く「愚身悪筆にて書き進む事も如何に候得共、浮世の書物共は色〃謀を廻し盗出して写し取る事も、又は判抔(など)を似する事候得ば、善悪に寄らず筆情墨色似せ難き物にて候得ば、愚身筆を證據として是に書き進むもの也」と。奥書に敢えて自筆の旨を明示した例は稀であり、高名なる人物ゆえ特に偽文書を警戒したものと思われる。
本伝書が井上七郎兵衛に傳授されたのは、星野勘左衛門が再び天下一となって十年後の延宝7年(1679)2月、勘左衛門38歳のときである。また奥書に拠れば、此の四巻書を以て印可と位置付けられている「此の書物御取り候て後御油断有間敷候、萬藝に免じ印加を取り候ては必〃弓断ち有るもの也」。故に流派の名を汚さぬようにとの訓示が与えられた「弥〃御嗜み候て家傳の名を御汚し有間敷候もの也」。
掲載史料及び参考資料
『星野勘左衛門茂則 四巻書』私蔵文書
『名古屋市史人物編 下巻』国書刊行会
『日本武道体系』同朋舎

尾州竹林派四巻書:第壱 初勘七道之巻



 當願衆生百八煩悩無量の重罪則時
 消滅我は是誰の未生以前本来面
 目一同の内に以大圓学佛師子〃
 我からん則是壽養信心あんこ常
 在於其中教行若座臥【虫喰い】
 内外請浄陰陽和合
  日置流射形師弟子の
   起請秘記の事
 三躰従父母讓雖剛成と不有我
 力に雖弱成と不有我耻に唯剛弱を
 不論如修学水鉄の喩は水水を流し
 鉄刀鎬を削此心を知て剛はかう弱は
 弱とおれゝゝか分〃に骨力をむねと
 して嗜量を重く師の恩教を信し
 て剛を不猜弱を不讒正直を神
 とし法度に任て心底に治する者には
 可相傳深服の弟子成道に愚
 なる異法に驚無心深には不可傳者
 也起請如件

  一 七道

一足踏の事
 目中に用口傳又は蜘蛛の尺と云
 心は蛛の家を作らんとて追風を
 請て向の木にも雲にも目付をして
 吹付らるゝ儀也闇夜のかねと云も
 同し口傳也

二弓搆の事
 目中に用 墨指と云心は矢をつ
 かいて弓と矢と拳と三つの中
 程にしてあてをする心也但遠近に有
 替主の骨法により弓の立所に口傳有
 是也

三胴造の事
 目中に用 日月身と云心は我は大
 日如来と思へし何の處にをそるゝ者
 もな様に心をゆるりと筋骨も延
 やかに如何にも慮外成る躰になし馬に
 乗真の鞍の内のことくして身成をけ
 高くゆくやかにして吉立ても居ても
 同し心そ本より舩中震搖矢藏に
 ても用そ猶口傳万〃也

次引取の事
 目中に用口傳 烏莵の梯と云
 心は烏はからす兔はうさき也弓拳
 を烏と云懸拳を莵と云故に矢
 をかけ橋と名付左右直なるを懸
 合と云儀也矢筈上下に口傳
 打渡す烏莵の梯すくなれと
  引わあすにはそり橋そよき
 弓に二度のそり橋と云に直のそり
 橋は是也口傳在之也

五打起の事
 目中に用 弦道と云心は時の手の
 内に何れにても相應の懸にて弦道
 を造へし剛の弓懐繋の弦道と云
 そ又猿臂の射と云て大事の重
 有之則日本起に明衡往来と
 云書物に露也是は弓懐に口傳多是
 是に付て弓懐弦道に様〃雖有是
 態口傳に残す子細は弓誠学なれ
 は不被成儀也不被成事を爰に云て
 誠弟三人偽と思ふ故也

六會の事
 一 一文字 恵休善力一大事の
        口傳也
 二 十文字 此十文字は惣躰にも口傳
        有之詰の十文字共云儀也

七離の事
 目中に用 四部の離と云心は四所に
 有そ先條の五部の詰を一所をくさひ
 と心得て四所を石火如出に離るゝ
 を四部のはなれとは云そ是は惣分
 の離そ又爰に
 切 拂 別 券 此四つに口傳有之
 皆了簡の離そ鸚鵡と云は
 懸の離也此鸚鵡に四つの字の心を
 付て用事種〃様〃口傳有是
 此次に未来身と云事在之扨
 こそ父母の収り未来身とて離の
 前とはなれての後との骨法を能〃
 心に知事肝要也口傳に有是七道
 の七重とて大事の重そ大形そ是
 を頂上共可心得也

一骨相筋道の事
 心は七道の五部の詰又は始中終の
 骨法射形に延て不縮を骨相
 筋道と云儀也矢束も爰にて知
 事有是也
 引矢束引ぬ矢束にたゝ矢束
  三つの矢束をよく口傳せよ

一手の裏の事
 心は五けと云 又吾加共口傳
 一 鵜の首浮たる也 定恵善
    の三指に口傳鸚鵡の離に相
    生の口傳莫大也
 二 鸞中軽し 定と神力の三
    指に口傳在之也

一剛弱の事
 心は惣躰に雖用と第一に先拳と
 脉の間を専にす随然と
 推過ては   下へ弱る也
 後へ過ても  弱るなり
 前へ過ても  弱るなり
 上へ過ても  弱なり
 前條の五加を能〃心得て四方へ
 弱みなき様に修学可致至ては
 呼立たりにあたるそ繋へ心を不
 通離るを用そ剛弱そ口傳萬
 萬在之也

一懸合の詰の事
 是も矢束に用義也口傳大事也
 又はと云躰に定是は詰るなり
 口傳離のは過て四方へ砕て如散
 矢束のくさひは能様にしまるそ二つの
 とは是也

一弓脈の事
 遠近を知心は長短の息見越
 のかねと云事目中の大事是も
 疎弟の人は合点難有修学至て
 は覚事也疎学の人は我不修して
 愚かなるをは忌て師教を疑事是
 多し奥儀に神道を修す神道と云
 は日本の初る時神の約束也其支證
 は神道を請て行に地獄のこく涌あ
 かる湯に入ても又はほのうの中へ入ても
 不苦事也祢宜み子の小女其
 外愚成者も受ぬれはをこなふを以しる
 也日神月神云のゆ出し給ふ約束も同し
 天地草木有性非性もやくそくの不
 被違分は末世迄も疑事なけれと
 も人間の能〃は皆相違してすたれた
 る故に心の不被届人次第〃〃に道に遠
 く成て修学を不遂して真中より
 草臥て不被至也若千人の中に一人も
 稽古修学を達したる人あらは遠
 近の目中も矢走も通矢も心の徳に
 成へし漢之漢白は二百歩の真中に川
 をて双芳より矢を離て真川中
 にて矢先と〃〃〃射合て後に漢之か
 射る矢先を漢白喰留て其矢に
 て漢之を射ころして有そ楊由も
 是にもをとらす其外此程の名匠は多
 かりつる日本には高野山の弘法大師
 奥州へ御修行の時下つさの国にて野
 中にて空より聲して弘法〃〃と
 呼たりける折節院在の離覚とて
 弓の上手通り合て射て落す其
 外六十余州に上手の手聞多かり
 し是皆五道を修学仕終ての事
 也不可疑可秘〃と云云

一竪臥の二儀の事
 竪は剛し遊弓に用也臥は真の
 弓に叶此二つ心を能〃心得て稽
 古可有紅葉の口傳

一雪の目付と云事在之口傳萬〃
 也亦をんしやうのやからはらこに目しゆと
 云事有是は蚊の目毛に巣を
 懸て世を過る少き虫あり此むしを
 羅子界の人の身へ放て見れは餘に大
 さに目しいてみす蝸角の民は鳳
 皇に目しゆと云も是も同し心なり
 此心はけしの粒成共其内に目中を
 する心そ口傳の中の是は奧儀そ他
 流に中拳と是を云儀也

一矢束の事
 先條に三つの矢束とて為注斗也
 真実は一つならてはなきそ修学の
 位に知そひかぬ矢束は長きそ骨相
 筋道に付そ引矢束は五部の詰付
 そ短きそ唯矢束そ世間の事そ能
 〃口傳可有如此注ても自師の位
 稽古の上にて能〃究てよし口傳
 莫大也と云云

一皮肉骨の事
 萬事に用事也人の骨と力と弓と
 矢と皮の人には皮の事肉の人には
 肉の事骨の人には骨の事也能〃
 口傳可有弓の位を収る所も同
 前なり就中皮肉の九勘と云
 事在之重の口傳也

一始中終法度の事
 一 中意趣は七道に在之也
 二 矢走心は剛を専にす
 三 射通心は鉄の位也
 四 遠矢曲也くるみそり橋と
    云儀口傳是多也
 五 花形直に美く射る事也
 却て初心の部に帰す能〃口傳可
 有世間に弓稽古の人師を頼み
 教と云とも此法度を立て傳る
 人は稀也先世間に的を射れは手前
 の花形不叶手前の花形を射
 とすれは的に不中と見へたり當流に
 は初手の足踏みより始て目中と
 教て終ての紅葉重て至迄少も
 中を無残す事稽古してこそ
 自師賢覚の位に至る間的を射
 るとも生物を射るとも其外の中
 物に会てこそ中も花形も同しく相
 調物なれ弓の情と云は中なりあた
 さるは鐵壁を十重射通ても用
 に不立遠く射せても不被入物也
 弓の本地と云は中て矢早を本とす
 當世は遊興迄を稽古してもと
 真実の儀は薄しさ有とても相
 搆て〃〃法度を破て不可相傳
 者也

懸合の事
 弓能射人弓を為師と云詞に
 て可知是は彼離覚か詞也萬事に
 用と云共弓道に専一と云云

一五重十文字の事
 一 弓と矢と十文字の事
 二 手の内と弓と十文字の事
 三 懸の大指と弦と十文字の事
 四 胸骨と肩の骨と十文字の事
 五 胸筋と矢と十文字の事
 右五重十文字と云て一大事の
 口傳也と云云
  以上

  第壱
 右初勘七道の巻
 
     星野勘左衛門
 
 延寳七未ノ (印:星野茂則)
     二月 茂則(判)
 
    井上七郎兵衛殿へ与之

 悩の代替 火偏に替る
鸚鵡 鸚鵡の異体字
 繋

尾州竹林派四巻書:第二 哥知射之巻


  歌知射の事

   一段
 能引て引な抱よ手もたすと
  はなれを弓に知らせぬそよき
 矢束程引て味はへこゝろなく
  弦にひかれなひちのちからよ
 身の長にあまる矢束も不足も
  有りやなしやとあらそひなしそ

一能引てひくなとは過て無理に引
 なと云事也抱よとは人の物なとを
 預りたる様に大事に懸て取置た
 れとも乞時は安く返す様にと云事
 也たもつと云は収て返しかぬるをた
 もたすといふ也則離を弓にも身にも
 知らすと云は唯をのつからはなれたる
 か吉是によつて離とは云儀也

二矢束程引と云事初手の大事
 也口傳在之味はへと云は弦にひかるな
 と云にて知也ひちの力を添て引と云儀也
 口傳多之七道の中に大形在之也

三身の長にあまる不足の事奥儀
 に知る事也先能様に射て如何程も
 矢束をひかせて矢をそたてゝ吉
 此三首の理を能〃口傳して輙く
 奥儀を不可免者也

   二段
 如何程も剛を好め推ちから
  引に心の有りとをもへよ
 打起し引に随ひ心せよ
  弓にをさるな思へ剛弱
 弦煙龍田の山の紅葉〃を
  顔にちらすな息のつまるに
 息相はさとりの道の中なれや
  有無のふたつは目中にそよる
 皮肉骨弓に有なり人あり
  矢にも有るなり能口傳せよ

一如何程も剛を好めと云は大三の心也
 弓を引と心得たる斗わろしを
 すを大め引を三分一との事也他流に
 引分と云事を當流には大三とは云儀也

二打起し引に随ひ心せよ弓にをさるなと
 云も大三の心又は剛弱の心うて口の
 口傳多之能〃教傳可有也

三弦煙とは哥の云かけなり息のつ
 まる事を辞故に如此様〃に口傳有之

四息相は覚の道の中とは有無の二つ
 なり目中によりての事なり口傳
 有之

五皮肉骨と云事萬事に用一つゝゝ
 口傳すへし口傳より鍛錬有此五
 首輙く不可免愚成人に傳れは弓
 に射ころふ物なり可惜〃〃雖然と不
 非惜に前学を堅固にして後に
 可傳と云事也

   三段
 口傳せよをしていたつら引無益
  父母の心を思ひやるへし
 剛は父は母なり矢は子なり
  片をもひして矢はそたつまし
 打起しひかぬ矢束を身に知せ
  胸より双へのひてはなれよ

一口傳せよをしていたつら引無益片
 心なくとは骨にて引分よと云事也
 大三を心得て道を能〃合點すへし
 骨を引と云事口傳の中の口傳也

二剛は父は母矢は子と云事右の
 重に同し様なれとも此哥の心は矢に
 聲を懸て聲と筋と肉とにて
 矢を送る事を給せり可秘〃〃云云

三打起し引かぬ矢束を身に知せ胸
 より左右へ延る心離の前と思へし
 のひてゝゝとをもふ心よし此三首重の
 大事そ如何〃〃かろく不可傳我知たる
 態は澤山に思ふ物なれは扨こそ起請
 を師より書て卒尓に不傳との
 事也此流は世に大切の儀也可秘〃云云

   次段
 聲は唯弓によりける物なれは
  切こゑもよしかけ聲もよし

一きり聲も懸こゑも吉と云心は延て
 懸るこゑは切聲にして吉聲は五蔵
 より出る物なれはもしゝゝ聲にかけしろい
 離に當りてつかへは懸聲にすへし懸こゑ
 とも後息とも云て重〃の大事の聲
 也他流に何様の能事を不知是は離を
 そたつる義也弓聲にさまゝゝ口傳有之
 生徳昔弓に聲と云事はなし或時
 百〃露懸をつくるとて時の調子を弓
 にて取事を政次と申人仕してより次第
 〃〃に末世に至て弓聲に取て用事也則
 時の調子にかゝる子細有是は重の重也
 大事と心得て輙〃不可免口傳多之

   五段
 口傳せよ矢束と鞭とちからかわ
  長をはつけみちかきはきれ
 出るとも入とも月を思ひなは
  引つる道にまよふへきなり
 推引と續目な見せそ冨士山
  峯と胸とはひとつ成けり
 青かいて秋の木末そ冷しき
  もみちかさねに嵐ふくなり
 朝嵐身にはしむなり松かせは
  目には見へねと音は冷まし

一口傳せよ矢束と鞭と力皮長をは
 つけ短は切れとの大事也是は引矢
 束の事そ主好と所作に随て切ても
 續ても能物そ此重は至て自師の
 位にて定る義と射覚て究る法
 なり可秘〃〃云云

二出るとも入共月をと云心は手内を取
 てより正路にする也口傳萬〃也此
 哥の口傳は佛説にも過たる事也
 秘して不注口傳の重也

三推引とつけめな見せふしの山と云
 は頂と胸と同し心にと云事そ中
 高と云心そいほるといふもしほると
 云も其皆同し心そ口傳の様萬〃也と云云

四青かいて秋の木末そ冷しきと紅葉
 かさねに嵐吹と云心は先青かいて
 とは春夏也春夏は萬木色〃に
 花咲うつくしけれとも秋の末には
 皆〃散果下にはもみち重なりて
 木すゑを見れは嵐にふけてすさまし
 けれとも下には紅葉重なりてかれす
 美き事を仕懸して枯たる木のこと
 くなる心也萬事の態に此心有書筆
 の道にも大唐の即之王義之日本にて
 は高野山弘法大師佐理行成ク
 道風なとの筆道の秘書にも此紅葉
 かさねの心を弓道を取て書したり爰
 に秘建の文在之態不注也

五朝嵐松風能〃不及注風躰の心也
 不云と云とも此説一段深し枕〃と
 したる躰と颯〃としたる躰との有
 無の二つなり口傳の様大事也餘〃秘
 したる故に異名を付て云也何の義にも
 名を替て秘事して云事多之皆
 以方便の異名とて不驚心肝要也

一弓稽古の人起請の端作事
 一 高山に推車を
 二 玉竹の遊
 三 神尓
 此三ヶ條を心底に合點して後に
 師弟の望みあらは一つゝゝ可相傳者也
 相搆〃〃輙〃師弟の契諾不被可有
 者也付た道は道の達者より出る
 稽古は信より起る稽古より鍛錬
 は出る鍛錬より奇は起る奇
 より神變出る神變より不思義は
 起る不思義より妙は起る此妙に色〃
 口傳有能〃口傳してかり初に不可
 有随而名人の始に千里の行道も一足
 始ると云説能〃可聞収て釈伽大
 師も高師も賤きも甲乙共に皆一つ
 也並て二つなし難生世に出て人界
 を請て聖学の道に事不被行は口惜し
 〃〃付たり紅紫の二字と云事ゥ事
 雖用と殊更弓道に用也こうしと
 いゑは人の名に似たれ共此哥にて可知也

一一入はうすくれないに生れ来て
  千入になれはむらさきの雲
一朝夕に柴の庵に立けむり
  いつむらさきの雲と詠めん

 此二首能〃可聞稽古の心に第一用
 儀也又は佛の心にも様〃喩多
 之と見へけり道に為入哥也能〃知り
 たる人に聞は佛道に近きそ口傳莫
 大也云云以上

 右第二哥知射の巻

     星野勘左衛門

 延寳七未ノ (印:星野茂則)
     二月 茂則(判)

    井上七郎兵衛殿へ与之

尾州竹林派四巻書:第四 奥儀之巻



 懸母 父母大三の事
 剛父

 右の心は引に推と引と貮両方の氣味そ
 推を大め目引を三分一との事そ是に種
 〃の様〃の口傳有之又此次に五
 部の詰と云事有之五所の骨相肉
 身に口傳又此次に父母の収りと云も同し
 事なれとも少心か替そ則比人双の
 心そ此比人双に色〃様〃口傳有そ父
 母大三より始て五部の詰父母の収り
 比人双此四つの心を能〃修学してこそ
 矢束は見たれ爰に矢束の口傳有之
 奥儀に露事也

一會の事
 右に一文字十文字と云て二つの懸を験
 たる斗也
 三 弦搦口傳弦道の能也
 四 淺深口傳人に依時〃矢数に用也
 五 弦斗遠矢又は細き矢に吉
 六 腕力の事   萬〃口傳
 七 一騎當千     口傳
 八 大將       口傳
 九 剛無理      口傳
 嫌好の事
 心は惣躰に 雖美と弱けれは嫌なり
 雖賤と剛けれは好なり雖剛不延
 縮を嫌也雖細と不縮延そ好事也
 右醫師評諚牛角の療に露口
 傳萬〃也云云

一手の裏の事
 是も右に鵜の首鸞中と云て二つ
 の手の内を為注斗也
 三 三毒剛し上下開閉に口傳三と
   くと云はとんよくしいくちの事也口
   傳に可知也
 四 骨法陸也ゥ法に渡る口傳也
 五 呼立たりの起請と是を云也老て
   二度乳子に成と云事是より始る也
   矢の諸病此一つにて治する事也
   其外奥儀に露儀也皆是療治
   の部也深重に口傳可有也

一弦の収矢の別の事
 先條に呼立たりと云手の中弦道弓
 の高尺所に鸚鵡の離にて何心もなく初
 心に離たるか弦の収にて有そ是に口傳様〃
 多之一大事と可秘〃矢の別と云事
 弦の収時別に矢に随而遅速有能〃
 口傳に在之此矢の別に柏子と云事有之
 息相の拍子とも云又はしつへいの拍子共
 云儀也弥〃口傳多之

一相剋相生の事
 一 弱き弓に重き矢
 二 少き弓に太き弦
 三 餘力に細矢の事
 右此三ヶ條を難注能〃口傳可有之

一檜垣十文字の事
 目中に用心は立たる物にはひかきに弓を推
 當よ又横成物には十文字に弓を押あて
 たよし以猶口傳多之

一三拳と云事
 是は目中の一大事重の重也寝〃
 小師と云也心は乳子の守する者の子を
 寝さする心をたとふ也口傳の様一大事也
 是は當流の中物の肝要也

一意念の事
 一 防風雁の骨相に口傳
 二 氣延矢に氣を付て見送口傳也
 三 眼情目は五藏より生したる故に
   注口傳
 四 目扇に口傳萬〃也
 五 高越敵相に用口傳萬〃也と云云

一聲の位の事
 切聲 懸聲 皮肉 息相 後息とて
 五つ有何れも大事の聲也弓により
 て可懸口傳萬〃也哥知射の部に露
 也付たり時の調子の事

一絹綾錦の三段の事
 修学自師の位に至ては知る事也

一経の段の事
 心は萬事のたてぬきの事也絹布
 に相應のたてぬきにて弓の事に経の
 段と露喩事多之態名注也

一十二字五意の位の事
 一  父 人しけれは 子の成人
    母       急なり

 二  臣 直なれは國 ゆくか
    君       なり

 三  弟 相生すれは ゥ学
    師       長高し

 四  石 相剋して  火の出る
    鐡       事急也

 五  晴嵐は 紅葉 散満て
    老木の    冷しゝゝ

 右五意の位教傳の様一大事也と云云

一離の事
 先條に切 拂 別 券と云て四つの
 字を為注斗也
 一 切と云はきるはなれなり是は射通に能
   離也口傳の様莫大也
 二 拂と云ははらふはなれ也此心は遠矢に能
   離也口傳口傳多之
 三 別と云はわかるはなれ也是は損矢
   に能し手前にも同前也
 四 券と云はかたく離心もち也是は中物に
   能口傳也と云云

一五部の詰の事
 陰  爰にて詰るを剛の詰と云也
  肩 爰にて詰るを左肩の詰と云也
 胸  爰にて詰るを胸の詰又は延共云也
  肩 爰にて詰るを右肩の詰と云也
 陽  爰にて詰るを右肩詰又は腕力と
    も云也
 右五部の詰と云儀也口傳の一大事也と云云

一五緩と云事
 一 剛の緩と云は推手の内又は拳の
   緩み也剛の詰にてなをすへき口傳也
 二 繋の緩と云事委手の緩なり
   腕力の詰にて可直也
 三 左肩の緩と云事ひたりかたのゆるみ
   なり左肩の詰にて可直也
 四 右肩の緩と云事右のかたのゆるみ
   なり右肩の詰にて可直也
 五 胸の緩と云事はむねにて緩を云也
   胸の詰にて可直萬〃也
 右五緩と云て何れも大事の口傳也と云云

一四部の離と云事
 是も右の詰を真中に水の心を持て
 五蔵五躰の情を胸に収て其色を合
 て見れは紫なり此紫の胸の内へ大石
 なとを打込ことく離の心を付て双四
 つの搦たる物か一度にさつと切て離心そ
 是を紫部の離とは至ての心也此心そ覚
 ぬれは弓道心の儘に叶也

一牛角の療と云事
 うしには角に勝たる物はなし然共五躰
 弱けれは見事成角は不入物也弓
 の療に射形も美く見所は能様なれとも
 牛角の療部を不弁射事を嫌也喩
 は牛の戦に角は見事なれとも其牛
 弱けれは負角は弱けれとも其牛剛
 けれは勝也爰を以牛角の療とは云儀也
 牛馬人間皆薬を用て病を癒すは
 醫者骨也牛馬人間の大成五躰
 に薬種壱朱一毛の軽き重を以加減
 して病を治することく七道より始てゥ
 勘を揃て弓の真行草を仕立る事
 皆以如薬種の薬傳の法は天笠より
 弓の療より始る也其後薬師佛
 出生し給ひて薬と云事は出来たれ
 其先は弓療の人の名を奇妙と云
 つる薬師佛出来より薬を以て病を
 癒人の名を醫師と云事も始なり
 弓の師は奇妙也薬師は醫者也
 日本に弓師を奇妙と云事を不扱
 故に奇妙の沙汰を醫師評定とは
 験したれ奇妙と醫師は其位高き
 事難注し是に依奇妙の人は我
 身を大日覚王と崇薬師の人は我身
 を薬師如來と崇と也次村上天皇
 の御代に吉備の大臣帰朝して弓に
 八掛と云事を注したれとも餘〃言多
 けれは當流には是他流には定て可用也
 返〃弓の療は病人の薬種と心得へき
 事肝要也可信〃と云云

一弓の文の事
 先條に絹 綾 錦又は経の段と注した
 ると同し似て別也心は五躰の筋骨の十
 王むくうに入違たるを我と自師に習て
 弱き所へ引はる事也

一弓に冷 熱 平 三張の弓皮肉骨の
 九勘に合て加減して賢覚にをさむへし
 口傳在之心は風はきそつて長閑になる
 也枕〃としたる心と颯〃としたる心
 と能〃口傳可有裏表を知事
 肝要也と云云

一十八かいと云事七道諸勘を悉皆
 学して後壱尺八寸に詰小間の口傳と萬
 萬在之と云云

 剛〃正直  口傳莫大也と云云
 千万の其ことはりは剛弱に
  すくに射させんためと思へよ
 一分三界と云目付の事
 口傳の様萬〃當流の一大事の目
 付也と云云

           年徳位
           習徳位
一弓縁の五徳の事 見徳位
           身徳位
           意徳位
    以上
 右第四奥儀の巻

 右の書物相傳申儀数年の稽
 古依不浅御執心深所をかんし愚
 身心底を不残相傳申者也然は
 愚身悪筆にて書遣事も如何に候
 得共浮世の書物共は色〃謀を廻し
 盗出して写し取事も又は判抔を
 似する事候得は不寄善悪筆情
 墨色難似物にて候得は愚身筆を
 為證據是書進者也誠に親子は
 一世の縁君臣は三世の縁師弟子は
 七世の縁と申候得は一方ならぬ契
 にて有間行末懸て難勝計憂
 世の有様を倩思見るに朝の花は
 夕部を不待夕部の花は明日の嵐
 に散昨日見し人も今日はなし今日
 見し人は明日見へす自他共に出る息を
 待ぬ有様に候得者為形見自筆に
 て書進候者也此書物御取候て
 後御油断有間敷候萬藝に免し
 印加を取候ては必〃弓断有物也
 扨こそ羪由は百歩に柳の葉を立百
 〃に百〃矢を射に不外といえとも
 三日の弓行を不成して三間の目中
 を射外といえり是等を常に御心に
 被懸弥〃御嗜み候て家傳の
 名を御□[下]し有間敷候者也
  以上

     星野勘左衛門

 延寳七未ノ (印:星野茂則)
     二月 茂則(判)

    井上七郎兵衛殿与之

   日置弥左衛門範次
   安松左近丞吉次
   弓削勘右門
   石堂竹林坊如成
   石堂竹林坊為貞
   長屋六左衛門忠重
   星野勘左衛門茂則


  矢数の時用妙成故爰露す
  作栄散
  霜      同
 一アカサ十匁 一アサ五匁
  霜      生
 一カウサケ七匁一チン香七匁
  鉄イレ少アフル
 一川骨七匁  一ハクツ四匁
 右成程細末して用金瘡 産前 産
 後 打身にも妙也
【訳】
□ 跋
右の書物相傳申す儀、数年の稽古御執心浅からざるに依て深き所を感じ、愚身心底を残さず相傳申すもの也
然らば愚身悪筆にて書き遣わす事も如何に候得共、浮世の書物共は色〃謀を廻し盗出して写し取る事も、又は判抔(など)を似する事候得ば、善悪に寄らず筆情墨色似せ難き物にて候得ば、愚身筆を證據として是に書き遣わすもの也
誠に親子は一世の縁、君臣は三世の縁、師弟子は七世の縁と申し候得ば、一方ならぬ契りにて有間行末懸て勝計難き憂世の有様を倩(つらつら)思い見るに、朝の花は夕部を待たず、夕部の花は明日の嵐に廃る、昨日見し人も今日はなし、今日見し人は明日見へず、自他共に出る息を待たぬ有様に候得ば、形見として自筆にて書き進め候もの也
此の書物御取り候て後、御油断有間敷候、萬藝に免じ印加を取り候ては必〃弓断ち有るもの也
扨こそ羪由(楚の養由基)は百歩に柳の葉を立て、百〃に百〃矢を射るに外れざるといえども、三日の弓行を成さずして三間の目中を射外すといへり、是等を常に御心に懸られ、弥〃御嗜み候て家傳の名を御下し有間敷候もの也
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